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超妹理論  作者: 揚羽常時
カルネアデスロマンス編
253/302

決別の前日2


 で、放課後。


「に・い・さ・ん?」


 歌を唄うように華黒は僕を呼んだ。


「なぁに? 可愛い華黒」


「褒めても何も出ませんよ?」


「そうなんだ」


「褒章として私の体を捧げます」


 何も出ないんじゃなかったの?


 まぁこの程度で辟易していては華黒とは付き合えない。


 辟易自体はしているけども。


 とまれ、


「白井さんの面倒事に付き合うのはわかってるよね?」


「別にどうでもいいではありませんか」


 これを本気で言ってるんだからなぁ。


 いいんだけどさ。


 らしいっちゃらしい。


 平常運転と言えば平常運転。


 で、


「おねーさーん。おねーさまー」


 相も変わらず上級生の教室ということに気負いを微塵も感じてはいない……というより面の皮の厚い黛がひょこひょこと廊下側から手を振っていた。


「………………」


 扉の陰から片目を出してこちらを窺うルシールもいる。


 相も変わらず庇護欲を誘う。


 華黒が隣にいるから言わないんだけどさ。


「…………」


「此度は申し訳ありません」


 纏子と白井さんも合流した。


「役者は揃い申した」


 ってところかな?


「手紙は読んだの?」


「はい。やはり懸想文でした」


「まぁ白井さんは綺麗だしね」


 あっさりと言った僕に、


「ふふ」


 と白井さんは笑った。


「なれば好きにしてくださって構わないんですよ?」


「僕には華黒がいるからなぁ」


 こういう時の華黒は便利だ。


「ですか」


 意外とあっさり白井さんは納得した。


「ことほど斯様にお綺麗な妹御がいらっしゃれば他にはいりませんね」


 苦笑が漏らされる。


 無論白井さんの物だ。


 同時に僕の物でもある。


「場所は?」


「屋内プールの裏手です」


「ベタだ」


 他に言い様も無い。


 ところで屋内の温水プールに浸かれるって水泳部は贅沢じゃなかろうか?


 なんとなくそんなことを思った。


 どうでもいいですね。


 はい。


「………………真白お兄ちゃんが……嫌われないか……心配」


 杞憂だ。


 というか今更だ。


 もはや後戻り不可能なところまで僕は来ている。


 それについての負い目は……まぁないけどさ。


「とりあえず行くよ」


 そしてぞろぞろと団体さんご案内。


 僕と華黒、ルシールと黛、纏子と白井さんで屋内プールの裏手へと顔を出す。


 懸想文の主は既に待っていた。


 そして僕を見るなりギョッとしていた。


 失礼な奴め。


 じゃあ他人の恋愛事情に首を突っ込むのは失礼じゃないかと言えば……まぁそれは後世の研究家に任せよう。


 白井さんは何度も言ったけど美少女だ。


 鮮やかな赤。


 ルビーの如き赤。


 それらが一つの、


「白井亨」


 という存在を美少女として構築為さしめている。


 胸も華黒とどっこいだしね。


 プロポーションも整っており、今すぐモデルをやっても通用しそうだ。


 一人の少年が慕情を抱いても不思議ではない。


 さて、


「何の様でしょう?」


 白井さんは残酷な言葉を吐いた。


 こんなところに呼び出して、


「何の様でしょう?」


 も無いものだけど白井さんらしい言葉でもある。


「あ、あの……」


 少年は勇気を振り絞って告白した。


 愛の。


 そして不憫な結果に終わった。


 わかっていたけども。


「では申し訳ありませんがこれで終わりですね」


 そう締めくくって白井さんは僕に視線をやる。


「何?」


「今日の夕食はわたくしに用意させていただけませんか?」


「馳走してくれるってこと?」


「そうとってもらえて構わないかと」


「料理による」


「もつ鍋などどうでしょう?」


「行く」


 冬に温まる鍋は筆舌に尽くし難い。


「無論、華黒様、ルシール様、楓様もご一緒に」


「それなら……」


 妥協案がとられた。


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