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超妹理論  作者: 揚羽常時
カルネアデスロマンス編
242/298

鮮血デビュー3


 そんなわけで始業式。


 中略。


 今年最初のロングホームルーム。


 あけましておめでとう。


 今年もよろしく。


 担任の教師はそう口火を切った後、諸々の伝達事項を言い、最後に、


「転校生を紹介する」


 と言った。


 どよめくクラスメイト。


 僕と華黒にしてみれば憂鬱の種だ。


 隣の統夜に目をやると、


「…………」


 難しい顔をしていた。


 何かしら緊張しているらしい。


 統夜にしては珍しいね。


 なにせ問題児である僕と気楽に付き合えるほど懐が深い。


 転校生が来たからと言って重く捉えるわけもないはずなんだけど……。


「…………」


「失礼します」


 茶髪おさげの美少女と赤髪赤眼の美少女とがクラスに入ってきた。


 纏子と白井さんだ。


 既に聞いているとはいえ、こうして目の前に見せつけられたらアタマのズツウがイタくなるのはしょうがない。


「的夷伝纏子」


「白井亨」


 そう黒板に白いチョークで書かれた。


「というわけでだ。これからお前らと勉学を共にする的夷伝纏子さんと白井亨さんだ。仲良くするように」


 それから担任は、


「自己紹介をするように」


 と白井さんに促した。


 どうやら纏子の事情は知っているらしい。


「わたくしは白井亨と申します。こちらにおります的夷伝纏子お嬢様の専属使用人でございます。趣味は家事全般。特技は自慢できるほどの物を持ち合わせておりません。お嬢様は理由有って言葉を綴れませんのでわたくしはその窓口……と思ってくだされば幸いです。お嬢様の趣味はツイッター。特技はSEO。よろしくお願いします」


 練習したのだろうか?


 すらすらと言い切って白井さんは優雅に一礼。


 続いて纏子も一礼した。


 ざわめくクラスメイト。


 気持ちはわかる。


 華黒には及ばないものの纏子も白井さんも十分美少女の範疇だ。


 特に白井さん。


 鮮やかな赤の髪は鮮烈ささえ覚える。


「そういうわけだ。的夷伝は話すことが出来ない。その辺はクラスメイトのよしみでフォローしてやってほしい。的夷伝。白井。とりあえず席替えまでは後ろの追加した席についてくれ」


「了解しました。ではお嬢様、参りましょう」


 気負いない白井さんに、


「…………」


 纏子はおどおどしながら手を引かれて着席する。


「じゃ伝達事項は終えたし今日はお開きだな。後は好きにしろ」


 そう言って担任の教師は教室を出ていった。


 次の瞬間、


「的夷伝さん!」


「白井さん!」


 クラスの女子たちがわっと転校生に食いついた。


 それを羨ましげに男子が遠巻きに見ている状況だ。


 シャイボーイ……というかいきなり会ってその日に女子に馴れ馴れしく出来る男子の方が少ないのだろうけど。


 それも時間の問題だろう。


 統夜を見る。


「…………」


 珍しく不機嫌らしい。


 遠巻きに白井さんを睨み付けていた。


 その白井さんはと云うと、


「友達になって」


 という建前の女子グループの勧誘をするすると後腐れなく辞退している有様だ。


「的夷伝さんも白井さんも可愛いね」


「…………」


 纏子は狼狽え、


「いえいえ。そんなお褒め頂くことでもありません」


 白井さんは社交的に謙遜。


「うちらのグループ入らない? 楽しいよ?」


「的夷伝さんツイッターやってるんでしょ? フォローしてあげるよ。代わりにフォロワーにならない?」


「的夷伝さんの使用人ってことは白井さんはメイドさん?」


「お嬢様って言ってたよね?」


「もしかしてお金持ち?」


 やはり話はそこに行きつくか。


 やれやれ。


 女子のマシンガントークに纏子は狼狽することしきり。


「…………」


 ネットならともあれ現実世界ではシャイガールだ。


 纏子と白井さんは女子に囲まれて解放されることなかった。


 心配というにはハラハラ成分過多でそれを眺めていると、


「に・い・さ・ん?」


 華黒が機嫌よく僕に声をかけてきた。


「帰る?」


「帰りましょう」


 そうしましょう。


 ふいと纏子と白井さんから意識を離した瞬間、悲鳴が聞こえた。


 女子複数の悲鳴だ。


 意識をそっちへやる。


 纏子が剃刀で手首を切っていた。


 悲鳴が悲鳴を呼びクラス中大わらわ。


 白井さんが効率よく手際よく纏子の手首に消毒してガーゼと包帯を巻いていた。


「というわけで」


 白井さんは言う。


「わたくしたちのことは放っておいてください。お嬢様がプレッシャーを感じてしまいますので」


 そんなわけで鮮烈デビューならぬ鮮血デビューを果たす纏子と白井さんだった。


 クラスの男子女子関係なく纏子と白井さんにドン引きしたのは当然の帰結と言えるだろう。


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