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超妹理論  作者: 揚羽常時
カルネアデスロマンス編
239/298

天敵論3


「そういえば白の一族が転校してくるんだって?」


 ミックスベリーを食べながら昴先輩。


 都会の喧騒を少し離れた場所で公園を見つけ、ついでにそこでクレープ屋も見つけ、クレープを食べながらブランコに座ってブラブラと。


 ちなみに先の発言は聞き流せるものではない。


「あの……マジで僕らのプライバシーはどうなってるんです……?」


 驚愕諤々。


 非難轟々。


 僕の脳内ミニ真白くんたちが縦隊を組んでシナプスと云う道をデモ行進中。


「別に監視カメラも盗聴器も発信機も利用しちゃいないよ。トイレと寝室になら是非とも設置したいところだけど」


 ありえない言葉が絶賛炸裂中。


「…………」


「ああ」


 と昴先輩が苦笑。


「あくまで願望の一端だ。本気にしないでくれたまえ」


「転校してくる人物まで把握してるんですか?」


「白坂の分家……的夷伝の問題児、的夷伝纏子。それからその付き人……白井亨。どちらも愛でるに値する可愛さだったねぇ……」


「どうやって知ったんです?」


「統夜の奴から忠告を受けて、お世話になっている興信所に頼んでちょっと、ね」


「わざわざ諜報活動してまで調べることですか?」


「真白くんの周りには美少女が集まる。一種の誘蛾灯だ。ならマークするのは必然さ」


「…………」


 反論の余地は……無いなぁ。


 皆こんな僕のどこがいいんだろうね?


 クレープを食べる。


「先に結論を言っておこうか」


「?」


「纏子くんには近づくな」


「…………」


 なして?


 瞳で問いかける。


 それは十二分に掬い取ってもらえた。


「ある意味で纏子くんは真白くんと華黒くんの天敵だ」


「華黒の天敵は先輩だと思うんですが……」


「私と華黒くんの軋轢は意見と思想の相違だ。ま、いわゆる一つのツンデレって奴さ」


「…………」


 いえ……十二分に嫌われていると思うんですが……。


「ただし纏子くんは違う」


 というと?


「話は変わるが私は真白くんと華黒くんの過去に精通している」


「でなきゃ後ろ指さされて生きなきゃいけませんでしたしね」


「同様に纏子くんの事情にも精通している」


「カルテでも見たんですか?」


「まさに」


 プライバシーって何だろう?


 そんなことを思う。


 まるで第三の眼を持っているかのような洞察力の統夜。


 その言葉に沿って事実を掘り当てる昴先輩。


 正直なところ警戒が先に立つけど意味が無いこともわかっている。


 何だかなぁ。


「仮に、だ」


「仮に、ですね?」


「華黒くんと纏子くんを選べと言われたら君はどっちを選ぶ?」


「華黒です」


 言われるまでもない。


「華黒くんを選べば纏子くんの自傷癖がさらに深刻になる、といった場合は?」


「…………」


 ……それは。


「ありえないでしょう?」


「だから仮に、だ」


「詰みの状態じゃないですか? それって……」


「まぁ空論では選べないというのが最適解ではあろうけどね」


 クレープをパクリ。


 僕にとって一番大切な人は華黒だ。


 それは確信を持って言える。


 それを華黒も理解しているし信頼している。


 だから敵対存在に対して嫉妬するだけで排斥しようとはしない。


 ルシールは例外としても、昴先輩や黛はここに分類される。


「あくまで兄さんは私を一番に想ってくれる」


「それ故に過剰な反応は兄さんに嫌われる」


 そんなところだろう。


 法律がなければ華黒は血の海にゆったりと浸かっているはずだ。


 さて、では僕はどうか?


「華黒が一番大切」


「だけど助けてと言われたら拒めない」


 そんなところだ。


 例えばここに、


「後の百人を助けたければ目の前の十人を殺せ」


 という命題があるとする。


 華黒は僕さえ関わっていなければまず間違いなく前者をとる。


 僕は例え華黒が関わっていたとしても後者をとるだろう。


 別にこれは僕が前者と後者の差である九十人分の価値を切り捨てたからでも、必要悪を理解したからでもない。


 目の前の人を助けなければならない。


 それが僕の歪みだからだ。


 ある意味「後のことなんか知ったこっちゃない」とも言える。


「真白くん。君は纏子くんと関わる限りにおいてカルネアデスの板の問題を突きつけられる。そしてそれは決して良い事ではない」


「…………」


「何故なら君の華黒くんへの愛情は絶対としても、目の前の人間を助けるためなら平然と裏切れる人間だからだ」


 知ってる。


 そもそも華黒が僕に好き好きアピールをするのはそこに原因がある。


 僕の心を握っていないと不安で不安でしょうがないのだ。


 その心理はわかる。


 気持ちはわからないけどね。


「だから出来ることなら君には纏子くんに関わって欲しくない」


「留意しておきますよ」


 クレープをパクリ。


 と、昴先輩が僕の口の端をペロリと舐めた。


「くぁwせdrftgyふじこlp!」


「ご馳走様。そんなに隙だらけだから華黒くんが不安がるのさ」


 そう言って昴先輩は百パーセントのウィンクをした。


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