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超妹理論  作者: 揚羽常時
カルネアデスロマンス編
232/298

新たな隣人5


 昼食を終えて百貨繚乱をブラブラしていると、


「兄さん兄さん」


 と華黒が呼ぶ。


「嫌な予感しかしないなぁ」


 本音だ。


「むぅ」


 口ごもる華黒。


 やっぱりか。


「で? 何よ?」


「ランジェリーショップに行きませんか?」


「またそういうことを……」


「兄さんに選んでほしいんです」


「見せる機会が無いのに?」


「機会は作るものです」


 さいですか。


「ついでに言えば女の子にとってランジェリーとは勝負服も同然です」


 さいですか。


「いっそのこと兄さんも……」


「怒るよ」


「冗談ですよぅ」


「本当に?」


「少なくとも私にとって兄さんは格好いい男の子ですから」


 うーん。


 そう言われると照れちゃいます。


「えへへ」


 華黒は僕の腕をギュッと抱きしめる。


「ですから格好いい兄さんに並ぶために勝負下着を見繕う必要があるわけです」


 あ。


 そこに話が戻るわけね。


「兄さんの好きな色は何でしょう?」


 前後の会話では危ない言葉になるんだけど……どうせ自覚はあるんでしょうね。


 はいはい。


「虹色」


「むぅ」


 僕の答えに華黒は黙り込む。


 仮に虹色のランジェリーがあってもお披露目に際して色々と台無しになるんだろうけど。


「黒と赤と紫で云えば?」


「なんでそんな蠱惑的な色の三択?」


「嫌ですねぇ。兄さんの好きな色をリサーチしているだけですよ?」


「じゃあ白」


「それだと無難すぎます」


 好きな色をリサーチしているだけじゃなかったの?


「下着を買いたいなら好きにすればいいけど僕をそこに関わらせないで」


「ではパジャマなどどうでしょう?」


「新しいのが欲しいの?」


「クマさんパジャマ以外のバリエーションがあってもいいと思います」


「猫の着ぐるみパジャマとか華黒に似合いそうだね」


「それを着たら兄さんは手を出してくれますか?」


「それはない」


「兄さ~ん……」


 あうう、と華黒が唸る。


 コトンと僕の肩に頭部を乗せる仕草は可愛らしいけど騙されないぞ。


 そんなことをしていると、


「おや、真白様に華黒様。奇遇ですね」


 最近耳にした声が聞こえてきた。


 そちらを見やれば、


「白井さん……」


 が纏子と一緒に居た。


「…………」


 纏子は紅潮しながら白井さんの背中に隠れる。


 それからスマホを取り出して打鍵。


 僕のスマホにラインでメッセージが来る。


「みゃ~。奇遇だにゃ」


 相も変わらず沈黙と文章のギャップがありえない。


 もっともこの文章を素で言葉に出来る女の子がいたらドン引きするだろうけど。


「奇遇だね」


 僕は言葉で返す。


「そっちは何かにゃ? デートかにゃ?」


「まぁ恋人同士だし」


 事実だ。


 僕と華黒は愛し合っている。


 ラブラブコメコメだ。


「華黒はズルいにゃ」


 そう?


「みゃ~。私だって真白様の傍に居たいにゃ」


 間に合ってます。


「みゃ~」


 次の瞬間、


「っ」


 僕と纏子が動いた。


 視界が赤く染まる。


 鼓膜が音を遮る。


 浮遊を覚えるほどの無痛感。


 発症だ。


 僕は剃刀を取り出してリスカしようとした纏子を止めた。


 その剃刀を握り潰すことで。


「…………!」


 三者三様に美少女が驚く。


 唇を読むのも億劫だったため何を言ったかは判別がつかないんだけど。


 怪我自体はそう大したものではないけど出血量は無視できない。


 そんな怪我を僕は負う。


 左手が剃刀を握って血で床を塗らす。


「真白様。失礼します」


 そう言って(正確には唇を読んだんだけど)纏子の使用人である白井さんが迅速に動いた。


 元より纏子のリスカに対する覚悟を持っているのだろう。


 手早く消毒液とガーゼと包帯をカバンから取り出すと怪我した僕の左手の処置をする。


 手慣れたものだ。


 纏子の専属使用人ともなれば当然かもしれないけどね。


 華黒を見やる。


「兄さん。大丈夫ですか?」


 そう唇が動いた。


「大丈夫」


 自身の声すら聞こえないけど多分僕はそう言った。


「これは……問題ですね」


 華黒の瞳は物騒な光を宿していた。


 どうでもいいけどパジャマは?


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