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超妹理論  作者: 揚羽常時
カルネアデスロマンス編
228/298

新たな隣人1


 暖房全開。


 どてらを羽織る。


 ホットコーヒーを飲む。


 大気と皮膚と内臓を同時に温める僕だった。


 冬対策だ。


 地球が太陽に対して傾いていなければこんな苦労はせずに済むのに。


 言って意味のある思考でもないけどさ。


「なんだかなぁ……」


 僕と華黒のアパートにはコタツが無い。


 ダイニングは高いテーブルと椅子の連合軍が占拠しているし、私室で暖まりたいならベッドに潜ればいい。


 そんなわけでエアーをコンディショニングすることによって寒さをしのいでいるというだけだね。


 いまだ冬休み中。


 宿題は終わらせているためやることもなくだらだらと。


 例外を除いて外に出るのも億劫なためアパートで時間を潰す僕だった。


 ちなみにコタツが恋しいのなら実家にいればいいんだけどそこはそれ。


 華黒とのことをからかわれるのが鬱陶しいの一言に尽きる。


 神社にお参りには行ったし、昨日はデートもした。


 その辺の機微を感じ取ったのかは定かじゃないけどルシールも黛もまだ今年に入ってからは見ていない。


 元より中学生での友達同士だ。


 二人仲良く参拝に行ってたりしてね。


「に・い・さ・ん?」


 歌い上げるように華黒が僕を呼ぶ。


「なぁに?」


「コーヒーのお替りはいりませんか?」


「それじゃもらおうかな」


「はいな」


 そしてキッチンへと消える華黒だった。


 その間、僕は実家から持ってきた昆布を齧っていた。


 新しくコーヒーを注いで僕に渡してくる。


 受け取る。


 嚥下。


「美味しいですか?」


「ん。香り高い」


 本音だ。


「えへへぇ」


 華黒は嬉しそうだ。


 こういった簡単な喜びに関しては素直で美麗な微笑みを見せる華黒だ。


 いきすぎると、


「えへへぇ」


 が、


「うへへぇ」


 になって僕視点で見てだらしない笑顔になるんだよね。


 ちなみに第三者から見たらソレさえも完成された笑顔と映るわけだけども。


 コーヒーを飲む。


 昆布を齧る。


「兄さんがそんなに昆布が好きだなんて思いませんでした」


「別に好きじゃないけどね」


「では何故?」


「口寂しいから」


 コーヒーを飲みながら昆布をガジガジ。


「口寂しいなら私にキスの一つでも……」


「…………」


 それで何を噛めというのか。


「あるいは私の乳房の先を……」


「下品」


 チョップ一撃。


「あうう……」


 と頭を押さえて涙目になる華黒だった。


 が、今回に限って言えば華黒が悪い。


 というか僕の方が悪かったことなんて数えられる程度なんだけど。


 コーヒーを飲む。


 立ち直って華黒。


「そう言えば隣が騒がしいですね」


「だね」


 ちなみにルシールと黛の部屋とは(僕と華黒の部屋を挟んで)反対側に位置する部屋のことを言っている。


 ガタゴトと大荷物を運ぶ音からして引っ越し作業かな?


 別に誰が住もうと迷惑さえかけなければ問題はないんだけどさ。


 昆布をガジガジ。


 中略。


「さて、そろそろ時間ですね」


 華黒がそんなことを言った。


「今日の夕食は肉じゃがのつもりなんですが」


 おお。


 家庭的。


「他にリクエストはありますか?」


「ないかな」


 だって、


「華黒の肉じゃがは美味しいしね」


 それに尽きる。


「いつでもお嫁にいける準備は万端です!」


 ふーん。


「華黒を娶る男性は幸せだね」


「兄さんのことを言ってるんです!」


「知ってる」


「そ、そうですか……」


 口ごもる華黒だった。


 可愛い可愛い。


 そんなコントをしているとピンポーンと玄関ベルが鳴った。


「はいはいはーい」


 と華黒が玄関対応。


 そして、


「げ」


 と華黒の声がヒキガエルになった。


 あんまり楽しくない想像だ。


 昴先輩あたりが訪問したのだろうか?


 僕もヒョコッと玄関を覗き見る。


 そこには華黒とは別に……茶髪おさげに茶色い瞳の少女がいた。


 鼻筋の通った美少女だ。


 その子を僕は知っていた。


 忘れようはずもない。


 僕と華黒と白花ちゃんの前でリスカをしたのは記憶に新しい。


 的夷伝纏子が……そこにいた。


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