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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
205/298

『エピローグ。そして、』4


 で、文化祭より数えて、約三週間後の日曜日。


 日が落ちるのも、加速していく時期だけど、暑さは相変わらずだ。


 そろそろ衣替えの季節だろうけど、こうなると、違和感を覚えないでもない。


 で、文化祭より数えて、三週間後の日曜日に、僕がどうなっているかというと、車上の人となっているのだった。


 ただし車ではなく電車。


 それも新幹線。


 御供は、華黒とルシールと黛。


 本来なら僕と黛だけでいいのだけど、そんなことを許す華黒やルシールではない。


 結果、いつものメンバーで、日帰り旅行と相成った。


 某県某市の駅につき、僕は、


「うーん」


 と、背伸びをする。


 座りっぱなしと云うのも、これで中々堪える。


 ちなみに、親同伴ではなく遠出するのは、ブルジョアジーな体験を除けば、これが初めてだ。


 都会と田舎の……折衷みたいな都市だった。


「ええと……」


 僕は、地図を見ながら、歩き出す。


「結局……」


 と、これは黛。


「何がしたいんですか?」


 当然の疑問だろう。


 だけど、種明かしには、まだ早い。


「ひ・み・つ♪」


 僕は、軽快に言った。


「なんでもいいですけどね」


 諦めたような声質だった。


 ネタバレは、本質に出会ってからが、望ましい。


 そんなわけで、僕が先行して、かしまし娘が、ぞろぞろとついていく、と云う構図になった。


 衆人環視が、ジロジロと見るのは、規定事項。


 そんなこんなで、僕たちは、目的の場所についた。


 ドミノ式住宅街の一角。


 その一軒家。


 表札を見れば、


まゆずみ


 と表されていた。


「……まさか……!」


 と、これは黛。


 僕の意図を、察したらしい。


「?」


「?」


 華黒とルシールには、わからないことだろう。


 二人して、首を捻っていた。


 だから、ついてこなくていいって言ったのに……。


「お姉さんは黛さんに復讐の機会を与えたのですか……っ」


「そうしたいならそうすればいいさ」


 むしろ、ぶっきらぼうに、僕は言った。


 そして、黛じゃない黛さん家の、インターフォンを押す。


 ピンポーンと一つ。


「あーい」


 と幼い声が、聞こえてきた。


 黛さん家の玄関が、開けられる。


 出て来たのは、幼女だった。


 幼い。


 だがしかし黛薫子の遺伝子が、見て取れた。


 この子が成長すれば、第二の黛薫子になる。


 そんな風に思える幼女だ。


 そして、それを黛も把握したのだろう。


「……っ」


 絶句していた。


「お客……さん……?」


 出迎えてくれた幼女は、怯えたように、そう言った。


 この時点で、事情に精通しているのは、僕と幼女だけだ。


「可愛いね」


 僕は、クシャクシャと、幼女の髪を撫ぜた。


「お父さんかお母さんを呼んでくれる?」


 幼女に、そんな提案。


 唯々諾々と、幼女は玄関を閉めて、パタパタと……おそらく親を呼びにいったのだろう……来た道を引き返していった。


 玄関口に取り残された……僕とかしまし娘の中で、


「薫子じゃなく両親なんですか?」


 黛が、真っ先に、疑問を呈した。


 もっともである。


 だが、同時に、愚問でもある。


 そして、


「はいはいはーい」


 と、明朗な声が、聞こえてきた。


 女性の声だ。


 お客さんを迎えるための言である。


「どちら様でしょうか?」


 そう言って、一度閉じられた玄関が、開けられる。


「どうも」


 僕は言う。


「ぶしつけに申し訳ありません。ちょいと事情がありまして……」


 僕が、間をもたそうと言うのを遮って、


「……おばさん?」


 黛が、ポツリと、零した。


 その声に、女性は過敏に反応した。


かえで……ちゃん……?」


 カエデ。


 黛楓まゆずみかえで


 それが黛のフルネームだ。


 そして、それを黛薫子の肉親は、十二分に知っているのだった。


「何故ここに!」


「ああ、すいません」


 衝撃の出会いはスルーして、僕が頭を下げる。


「ここまで黛楓を連れてきたのは、偏に僕によるものです」


「なんでそんなことしたの!」


 薫子さんのお母さんの意見は、ごもっとも。


 しかし、こちらも引くに引けない。


「事実を事実として受け入れさせるために」


 他に言い様は無かった。


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