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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
204/298

『エピローグ。そして、』3


 さて……どうしよう?


 そればかりを、最近は、考える。


 正確には白花ちゃん……というか白坂つづらざか家に裏付けを頼んで、その資料に目を通してから今まで……である。


「関係ない」


 と言えば、ひたすらその通りなのだけど、喉に引っかかった小骨のように、その情報は僕を苦悩させうるのだった。


「なんだかなぁ」


 思わず呟いてしまう。


「何か憂うことでも?」


 即座に華黒が拾う。


 ぬあ、ぬかった。


「まぁ色々あってね」


「その色々について問うているのですが」


「華黒が心配することじゃない」


「私が悩んでいるときに、兄さんは同じ言葉を吐かれたらどうします?」


「むぅ」


 分が悪い。


 愛の勝利では、あるが。


 さて、どうしたものか。


 白花ちゃん同様に、華黒についても、真実を語るわけにはいかない。


 何度も言うが、血を見ることになる。


「あー……」


 カモ蕎麦をすすり、咀嚼、嚥下。


 ちなみに今は平日……学校の昼休み。


 場所は学食。


 衆人環視の視線は痛いけど、それについては今更だ。


「例えば華黒は……」


「ふむふむ」


「人生を賭けるに足る想いは、あると思う?」


「愚問です」


 ですよねー。


 聞いたことさえ馬鹿らしいし、華黒にしてみれば、問われることこそ馬鹿らしいだろう。


「その想いの対象が、手の届かぬところへ行ったら?」


「死にます」


 これまた即答。


「華黒? わかっていると思うけど……」


「はい。兄さんが死んだら私も死にます」


「…………」


 何もわかっちゃいなかった。


 と、ふいに、


「相席よろしいですか?」


 そんな声がかかる。


「どうぞ」


 と即答。


 それから、声の主を、見やる。


「ルシール……黛……」


 後輩二人が、料理を御盆に載せて、際に立っていた。


「………………あう」


「それでは失礼」


 ルシールを拒絶して、黛を下して、――それから僕を避けるようになった二人が、寄ってきたのだ。


 驚くな、という方が無茶だろう。


「僕を避けるのは止めてくれたの?」


 皮肉気に問うと、


「………………あう」


 ルシールは言葉に詰まり、


「お隣さん同士、気を使うのも、いい加減馬鹿らしくなりまして」


 黛は、飄々と語る。


 どうやら乗り越えたらしい。


 ルシールもそうだし、黛もそうだ。


 衆人環視の視線も、いっそう険しくなったけど、それについては以下略。


「先日は失礼しました」


 黛が言う。


「別に気にしてないよ」


 僕は何気なく。


「何の話です?」


 華黒が、疑問を持つ。


「実は――」


 僕は一部嘘をついた。


 ――黛が僕とルシールを取り持とうと拷問した――


 ――ではなく「口論した」と云う風に。


「ふうん?」


 と華黒。


 焼き鯖を、ほぐしながら。


「………………黛ちゃん……そんなことを」


 ルシールも、初耳だったらしい。


 いっそう、事実を告げるのが、心苦しくなった。


「お姉さんは、それでいいんですか?」


「無論」


 むしろ、何がいけないのか?


 それこそ疑問だ。


「ルシールは気持ちに決着つけたの?」


 水を向けると、ルシールは狼狽えて、それから言った。


「………………諦めましたよ」


「どう諦めた?」


「………………諦めきれぬと諦めた」


 でっか。


 勝手に思い煩う分には、好きにしていい、と僕は思う。


 だから返答は、何気なかった。


「黛はそれでいいの?」


「いけませんが黛さんが詰め寄っても無益でしょう」


 状況は、十二分に、把握しているらしい。


 なら頃合いか。


「黛……今度の日曜日に連れて行きたいところがあるんだけど」


「デートですか?」


「華黒、瞳孔が開いてるよ。ルシール、落ち着いて。心配なら同伴しても構わないからさ」


 やはし、こうなるか。


 僕は早速釘を刺す。


 華黒の警戒と、ルシールの安堵に、なんとなく許可を覚える。


 なんだかなぁ。


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