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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
199/298

『黒の歪み』4


 目を覚ました。


 辺りを見渡す。


 狭い空間だった。


 石を積んで出来た個室。


 そう呼ぶのが妥当だろう。


 湿気が充満して、残暑の厳しい季節だというのに、冷ややかな水分の支配する空間だった。


 まるで、


「地下牢か何かだね」


 決して的外れでもない、僕の言葉だ。


 で、僕自身は、その地下牢でどうなっているかというと、


「趣味の悪いことで……」


 手錠で両手両足を拘束されて、身動き一つできない状況だった。


 芋虫みたいにクネクネと動いて移動する可能性は……首についている首輪と鎖に固定されて、出来そうもない。


 真っ先に出てきたイメージは、


「拉致監禁か……」


 妥当なソレだった。


 ちなみに記憶がとんでいる。


 たしか僕は黛と一緒に、ファミレスにいたはずだ。


 そしてルシールについて、アレコレと議論し合い……、


「……えーと」


 それからどうしたんだっけ?


 思い出せない。


 気づけば、この状況だ。


「起きましたかお姉さん」


 そんな声がかかった。


 存分に聞き覚えのある声だ。


 まゆずみ


 他にいない。


「ああ、知り合いがいて良かった。ちょっとこの手錠と首輪外してくれない?」


「断ります」


「何で?」


「捕まえた獲物をなんで解放しなきゃならないって話ですから」


「…………」


 ということは、


「この状況は君がつくったの?」


「忌憚なく言えば」


 コクリ、と、頷く黛だった。


「で?」


 僕は拉致監禁の首謀者たる黛に問うた。


「ここは何処?」


「酒奉寺姉さんの屋敷の地下牢です」


「昴先輩の……」


 ついつい納得してしまう。


 ん?


「ということは酒奉寺家が、これには関わっているってこと?」


「まぁ手伝いくらいはしてもらいました」


「何で僕はこんな状況になってるの?」


「簡単ですよ。ドリンクバーに催眠薬を溶かしてお姉さんの意識を奪い、酒奉寺姉さんの使用人にお姉さんを運んでもらい、拘束して地下牢に監禁。ただそれだけのことです」


「なるほどね」


 あのメロンソーダか……。


 納得がいった。


 前提については。


「で?」


「とは?」


「こんなところに僕を拉致監禁して何をしようっていうの?」


「まぁ率直に言えば懇願を」


「脅迫じゃなくて?」


「別にそう捉えてもらっても間違いじゃありませんが……」


「何だかなぁ……」


 苦笑する僕だった。


「ちなみに僕はどれくらい気を失っていたの?」


「三時間ってところですね」


 十分範囲内……か。


「ちなみにここは通信も効きませんから」


 助けを求めるだけ無駄ってか。


「昴先輩の意見は?」


「面白そうでしたよ?」


「…………」


 あの人らしい。


「風呂やトイレはどうすればいいのさ?」


「大丈夫です。自己申告していただければ使用人が処理しますから」


 それの何が、


「大丈夫」


 になるのかわかんないけど……、


「さいですか」


 他に答えようもなかった。


「二人きりですね」


 黛は淡々と言った。


「二人きりだね」


 僕も淡々と言った。


「さて……」


 といって、鉄格子の扉を開けて、僕の監禁されている地下牢に、入ってくる黛。


「で?」


「とは?」


「僕を凌辱でもするの?」


「まさか」


 黛は苦笑した。


「黛さん自身はお姉さんに興味はありませんよ」


「にしては手枷足枷首輪の拉致監禁状態だけど」


「まぁ色々ありまして」


 色々……ね……。


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