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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
198/298

『黒の歪み』3


 で、どうなったかというと、


「…………」


 僕と黛は、ファミレスにいた。


 ドリンクバーでコーラを注ぎ、僕は飲んでいた。


「なんでファミレス?」


「ゆっくり出来て、いつまでも駄弁れるからですかね」


「なら図書館の方がよかった」


「図書館にはドリンクバーがありませんから」


 納得。


 コーラを飲む。


「で?」


「とは?」


「何の用?」


「わからないんですか?」


「君の口から聞きたい」


「当然ルシールについてです」


 だろうね~。


「あれからルシールの調子どう?」


「どん底です。落ち込み具合が半端じゃありません。正直見ていられなくて外出したと言っても過言じゃありません」


「慰めなかったの?」


「昨夜はやれる限りやったんですが……正直お手上げです」


「そ」


 僕は、飄々とコーラを飲む。


「で?」


「とは?」


「なんでルシールの申し出を断ったんですか?」


「僕には華黒しかいないから」


「別にルシールはそれでいいと言ってるじゃないですか」


「うん。だから断った。なんの矛盾も生じてないでしょ?」


「それがルシールを傷つけるとわかっていて……ですか?」


「知ったこっちゃないね」


「鬼ですね」


「そう? 少なくとも不本意な妥協をするより誠実だと思うけど……」


「二号さんじゃ駄目なんですか?」


「僕が愛情を注ぐに足る人間は華黒だけだよ」


「何を以て?」


「言ってしまえばしがらみなんだけど、だからこそ余計に絆と呼びたい今日この頃」


「妹だからですか?」


「はずれ」


「本当にルシールに目は無いんですか?」


「何度言わせるの」


「ルシールは可愛くありませんか?」


「まさか」


 僕は、コーラを飲む。


「僕の記憶の中では華黒に次いで可愛い女の子だよ。ハーフってのもいいよね。金髪碧眼でお人形さんみたいだし」


「そこまで認識しておいて告白を断るってのが有り得ないんですけど」


「まぁ人間として色々壊れているからね、僕は」


「ん?」


「まぁそれはいいとして……」


 コーラを飲む。


「つまり何か? 黛……君は僕に撤回を求めているのかな?」


「当然です。当たり前です。お姉さんも……ルシールの気持ちは懸想文を通して十二分に理解しているでしょう?」


 まぁね。


「ああ、なるほど」


 僕は納得した。


「薫子さんの懸想文は君の入れ知恵か……」


「否定はしません」


「まぁそうだよね」


 少なくとも、誰の後押しも無しに、ルシールが、あんな積極的な策を用いるはずがないのだ。


「結果論になるけどある意味で黛がルシールを追い詰めたんじゃない?」


「否定はしません」


「そうまでしてなんで僕とルシールをくっつけたがるのさ?」


「友達の恋を応援するのは悪いことですか?」


「そうは言わないけどさ……」


 コーラを飲む。


「まぁ遅かれ早かれ僕がルシールに決定的な一言を放つのは当然の帰結だった。それは間違いない。そういう意味では、僕とのしがらみが早期に断ち切れたのは、ルシールにとって良いことだし、黛の功績でもあるよね」


「ルシールに次の恋を模索させると?」


「忌憚なく言えば」


「殺しますよ?」


「別にいいけどその場合華黒が復讐に走るよ? 黛を殺すだけならいいけど……黛にとって大切な人にまで被害が及ぶと思うな」


「……ですか」


 はぁ、と嘆息する黛だった。


 コーラを飲み干す僕。


 空になった僕のグラスを、目敏く見つけて、


「お代わりを注いできましょうか?」


 そんな心温まる提案をする黛。


「じゃあお願い」


 そして黛が、メロンソーダを注いで、僕に渡した。


「で、話を戻しますが……」


 黛もメロンソーダを飲みながら、言葉を紡ぐ。


「どうにか妥協案は無いものですか?」


「あるよ」


「どんな?」


「ルシールが妥協して僕を諦める」


「つまりどうあってもルシールと関係を持たないと……そうお姉さんは言うのですか?」


「ん」


 首肯してメロンソーダを飲む。


「ならやり方を変えますか……」


「どんな風に?」


「実力行使」


「形而上学的な話じゃないんだ……」


 呆れてメロンソーダを飲む僕。


 そして意識を失った。


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