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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
197/298

『黒の歪み』2


 ちなみに文化祭は、日曜日に行なわれる。


 そうでもなければ、父兄が参加できないからだ。


 で、それがそうである以上……日曜日は登校と云う形になり、月曜日は振替休日ということになるのだった。


 僕と華黒は昨夜の風呂の中で……もちろんのこと健全な意味で……愛を確かめ合った後であるから一緒のベッドで寝た。


「昼まで起こすな」


 そう華黒には厳命していた。


 したはずなのだけど……、


「…………」


 僕は、朝からコーヒーをすすっていた。


「はい兄さん! ベーグルサンドです!」


 華黒は、絶好調だった。


 昨日のやり取りが、響いているのだろう。


 まぁ華黒がこんなに喜んでくれるのなら、たまには調子のいい言葉を吐くのも悪くはない……のかな?


 なんとな~く致命的な状況に向かっている気がするのは……さてさて。


 愛って何だろね?


 形而上学的なことを考えながら、寝ぼけ頭で、状況を整理する。


 僕は、コーヒーを飲んでいる。


 華黒は、ダイニングテーブルの僕の隣の席に座って、ベーグルサンドを、さも嬉しそうに楽しそうに頬張っている。


 それから、


「…………」


 ジト目の黛が、僕の対面に座り、僕を睨み付けていた。


 何だかな。


 僕、何か悪いことした?


 黛は、僕を睨むか、コーヒーを飲むか、のどちらかでしかありえなかった。


「…………」


 無言で、モシャモシャ、と、ベーグルサンドを齧る。


 さすが華黒の手作り。


 丁寧に作られていた。


「美味しいですか! 兄さん!」


「美味しいよ」


「ありがとうございます!」


 華黒絶好調。


 感嘆符無しで喋れんのかチミは?


「なんだかお姉様ご機嫌じゃないですか?」


 不機嫌そうに言う黛に、


「まぁ色々あって」


 僕は誤魔化す。


 コーヒーを一口。


 まさか、ルシールをダシに、華黒との愛情を強化したことを、わざわざルシールの親友であるところの黛に話すことでもないだろう。


 モシャモシャ。


 ベーグルを食べる。


 チーズが薫り高く、レタスがシャキシャキ、パンはふんわりとして火の味がする。


 全てを呑みこんで、


「で?」


 と僕は、本質を切り出す。


「何か用?」


「…………」


 ジト目で、にらむ黛。


 黙られると、恐いんですけど。


「はぁ……」


 と嘆息する黛だった。


「お姉さん?」


「何々?」


「黛さんとデートしてください」


「いつ?」


「今日」


「フシャーッ!」


 最後の威嚇は、華黒ね。


 まぁ黛まで僕に手を出そうとしていることに、納得がいかないのだろう。


 少なくとも華黒は、黛に、心を許してはいない。


 猫を被って対応しているだけだ。


 化けの皮は、すぐに剥がれるのだった。


 道理である。


「ふむ」


 僕はコーヒーを一口。


 カフェインによって、目を覚ましはじめる。


「で?」


 問う。


「なんでデート?」


「男女が互いに理解し合うならそれはデートでしょう?」


「…………」


 まぁね。


 そりゃね。


「でもこれは僕の偏見だけど、黛と理解しあえて、その先に何があるのさ?」


 遠回しな拒絶。


 それをわからない黛では……あるまい。


 しかして、


「少なくとも黛さんにとっては利益があります」


「どういった?」


「まだ秘密です」


 つっけんどんに言って、黛はコーヒーを飲む。


「で? デートしてくれるんですか? それとも断りますか?」


「僕はいいけど華黒がね」


「フシャーッ! グルルル!」


「というわけだから」


「黛さんはお姉さんの答えを聞いているんです。他者は不要でしょう?」


「何か僕に言いたいことがあるの?」


「然りです」


「それならば付き合ってあげるよ。ただしデートは人情的に出来ない。あくまで付き添いという形でどうかな?」


「それでお姉様が納得するならば」


「…………」


 警戒しながらも、威嚇をやめる華黒だった。


 つまり、


「認証した」


 ということだろう。


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