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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
184/298

『夏は過ぎ風あざみ』1


 始業式は退屈のさなかに終わった。


 何だかなぁ。


 今日から二学期。


 とは言っても九月の頭。


 残暑というにも暑すぎる気温だ。


 よくもまぁ恒温動物たる人間を体育館に大量に収納しようと思うものだ。


 体温が室内の温度を上げて蒸し風呂状態だった。


 そして当たり前だが体育館にはクーラーなんて気の利いたものは設置されていない。


 灼熱地獄がそこにはあった。


 ぞろぞろと流れに流れる人の波に流されながら外に出ると、風が吹いて涼しやかに思ったほどだ……。


 で、教室。


 案の定なロングホームルーム。


「あー」


 と担任が呻いた。


 無論教卓に肘をついて。


 要するに教師が言いたいことは二週間後の文化祭に向けての連絡事項だった。


 ちなみに何をするかは八月の登校日に決まっている。


 そうでもしなければ僕たちのクラスはともかく喫茶店および飲食関係のイベントは間に合わないからだ。


 検便。


 材料の調達。


 水源の確保。


 衣装の縫い物。


 やることがいっぱい有りすぎて二学期初日から二週間後の文化祭までの期間で準備しても間に合わないのである。


 実際去年は苦労した。


 で、今年がどうなったかというと、


「展示会」


 に収まった。


 無難なところだ。


 やりたいことの見つからない無気力な青春学生諸子にはうってつけの内容だと言っても過言ではない。


 実際僕も、


「助かった」


 と思った。


 派手さは無いけど知ったこっちゃないね。


 展示会。


 要するに資料を集めてボードに張り付けるだけだ。


「誰が見るんだ」


 という意見はあるが、


「誰も見なくていい」


 というのが僕の意見だ。


 ベッタベタ。


 でもまぁ他に最適解は無いだろう。


 そんなわけで何を展示するかを八月の登校日にアレコレ議論して、


「地域の歴史」


 に決まった。


 要するに、


「妥協案だね」


 ということになる。


 決まった後はスムースだった。


 クラスメイトは僕を含めて三十人。


 そして八月の登校日に、


「地域の歴史の展示会」


 に決まった後、担任の教師がチョイスしたのが十五か所の歴史的スポット。


 つまるところ、


「そこに行って取材してこい」


 という命令だった。


 ちなみに文化祭まで二週間。


 取材するなら休日を利用するしかない。


 クラスメイトは三十人。


 歴史的スポットは十五か所。


 ならば二人で取材するのは当然と言えた。


「好きな人と組め」


 というと混乱必至なので担任の教師は、


「くじを引いてもらう」


 と実に健全な提案をした。


 暑中見舞のクッキーの缶に折りたたまれた紙を三十だけ入れて、生徒に引かせる……という案である。


 僕は某町の古墳の取材に決まった。


 正直なところ古墳なんて鍵穴みたいな前方後円墳くらいしか資料では見たことがなかったのだけど……まぁ無理を言っても始まるまい。


「ああ、藤原は江戸時代の建築物か……」


 カリカリと引かれたクジの結果を黒板に書きだす教師。


「百墨は……」


 ちなみにこの場合に百墨は僕こと百墨真白のことである。


「古墳ね」


 カリカリとチョークを鳴らす教師。


 それから十五か所に三十人を納めるのだった。


「おや……まぁ……」


 僕は感嘆とした。


 僕とコンビを組んで某町の古墳について調べる相方に見覚えがあったからだ。


 それは僕の目がどうかしていない限り、


「碓氷幸」


 と読めた。


 碓氷さんとか。


 そういえば去年の学園祭の準備にも碓氷さんと関わったっけ。


 チラリと碓氷さんの方を見る。


 視線が交錯した。


 照れたのだろうか?


 碓氷さんは紅潮して目を逸らした。


 どこからか殺気を感じるのは気づかない方向で。


 ちなみに、


「…………」


 その殺気の原因だけど、


「ですか」


 幸か不幸か、とある女子のクラスメイトと某町の江戸時代の逸話について調べることに相成ったのであった。


 まぁ男子と組まずに済んだだけでも僕には朗報だ。


 上手くいくかは……本人次第だけど。


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