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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
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『いざ避暑』5

「お医者様でも草津の湯でも惚れた病は治りゃせぬってね」


 そう言って僕の隣に座る昴先輩。


「私を恋という名の不治の病に陥れたのだから真白くん、君には責任を取ってもらわないとね?」


 僕の耳元でそう囁く昴先輩だった。


「お兄様……」


「なに白花ちゃん」


「この人何か何処かを患ってるんじゃありませんか? 例えば脳とか」


「大丈夫」


 僕は否定の意味を込めて縦に首を振る。


「これで平常運転だから」


「ふうん?」


 昴先輩の逆側の位置……つまり僕のもう一つの隣に座る白花ちゃんだった。


「両手に花だね」


 苦笑する他ない。


 ちなみに僕たちは水着を着ている。


 各々が水着を着て、そして浴室にいた。


 お風呂である。


 最初に言ったのは当然華黒である。


「兄さん。今日も一緒にお風呂に入りましょうね?」


 優越感たっぷりに。


「…………」


 僕は聞こえなかったフリでもしようかと考えたけど状況がソレを許さなかった。


「………………あう」


 何を想像したか真っ赤になるルシール。


「ほう。それは強力な……」


 黛はいっそ感心したように。


「ふむ。らしいね」


 昴先輩はくつくつと苦笑。


「お兄様……」


 責めるような白花ちゃんの言。


「かーぐーろー……」


 うんざりとして僕は言った。


「それをここで宣言することで君に何のメリットがあるのさ?」


「兄さんが私のモノだと主張できます」


 さいですか。


 怒る気力さえごっそりと持っていかれた。


 当然黙ったままの乙女たちではない。


「私も」


 そんな主張があがった。


 うんざりだ。


 誰か助けて。


 そんな祈りも虚しく僕は五人の美少女とお風呂に入ることになった。


 ただし全員水着着用。


 これだけは譲れない。


 そもそもにして華黒にしてみれば、


「私以外の人間が兄さんと風呂に入るなぞ有り得がたいことです!」


 とのことだったけど、


「なら言わなきゃよかったじゃないか」


 としか返しようがない。


 そんな経緯で酒池肉林の如き状況を再現するに至ったのだった。


 滅ぼされても文句は言えない。


「あーっ!」


 と叫んだのは華黒。


 僕は背中を向けていたけど……無論のこと乙女の肌を見ないためである……華黒が僕を指さして狼狽しているのは手に取れるようだった。


「酒奉寺昴! 白坂さん! 私の兄さんに何をするんです!」


 そんな華黒の抗議に、


「「愛情表現」」


 あっさりと二人は返すのだった。


 うーん。


 何だかなぁ。


 虚無的な何かを感じる今日この頃。


「離れなさい!」


「「やだ」」


 会話になってるようでなってないよね、君たち?


 介入する気にはならなかったけど。


「ならばこちらにも考えがあります……!」


 ザブンと水音がする。


 華黒が湯船に入ってきたのだ。


 そして華黒は湯船に浸かっている僕の前方に位置取って、背中を僕の胸板に預けてくる。


 シャンプーの香りがした。


 右と左には先輩と白花ちゃん……それから前方には華黒。


 身動きが取れなくなる僕だった。


「ルシール……出遅れましたね……」


 これは黛。


「………………あう……だって」


 控えめなルシール。


「真白くん? 私の肢体を好きにしていいと言ったら君はどうする?」


「軽蔑しますね」


「お兄様? やはり時が経てば若い私が一番だと思えるのではないでしょうか?」


「でもそれは今じゃないよね」


「兄さんは私のモノですよね?」


「今のところはね」


「………………あう」


「無理して介入する必要は無いよルシール」


「黛さん的にはなんだかなぁ……って感じです」


「無理もないね」


 苦笑する。


「ていうか暑苦しいんだけど……」


「愛の熱だよ」


「お兄様への愛ゆえです」


「兄さんが私を感じてくれている証拠じゃないですか」


 三者三様に言ってくれる。


「僕……貞操観念の薄い女性は嫌いだよ?」


 そんな僕の問いに、


「でも愛してます」


 答えになってないような答えを三人は返す。


 ですかぁ。


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