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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
168/298

『七夕祭り』3


「どうぞ」


 と法被を来た大学生に短冊を渡される。


「ああ」


 そういえば、


「七夕祭りだったね」


 今更思い出す僕。


 七夕に願いを。


 星に願いを。


 一年に一度しか会えないバカップルに願いを。


 織姫と彦星に願いを。


 ベガとアルタイルに願いを。


 そういう趣向だったことを再認識する。


 日はまだ暮れていない。


 僕たちは七夕祭りの本質を体験する。


 即ち短冊に願い事を書いて笹に吊るす。


 そんな行事だ。


 僕が書いたのは、


「世界平和」


 だった。


 無理だってことは百も承知だけど、こんな時くらいロマンに浸るのも責められることではないだろう……と思う。


「兄さんはまたつまらないことを……」


 うんざりと言った様子で華黒。


「そういう華黒はどうなのさ?」


「これです」


 遠慮もへったくれもなく華黒は短冊を示す。


 そこには、


「兄さんと肉体関係が出来ますように」


 と書かれていた。


「…………」


 何をかいわんや。


 脱力する僕。


「お姉様は大胆ですね」


 くつくつと黛が笑う。


 いや、笑うところじゃないだろう。


 そんな僕の抗議も無視して、


「ルシールは何を願ったのかな?」


 黛はルシールに話を振る。


「………………あう」


 ルシールは短冊を見せる。


「真白お兄ちゃんともっと仲良くなれますように」


 そう書いてあった。


 ……ああ。


 ルシールはルシールだなぁ。


 そんなことを思った。


 罪悪感は無いでは無いけど、


「ルシールらしいね」


 ほっこりとしたルシールへの感情で僕は満たされた。


 これでこそルシールだ。


 他の誰にも真似できない。


 純粋というか純情というか。


「それで?」


 僕は黛に視線をやる。


「黛はどんな願い事を?」


 問う僕に、


「はい」


 と黛は示してみせた。


 その短冊には、


「お姉さんとルシールが仲良くなりますように」


 と書かれていた。


「本気?」


「冗談でも構いませんが……」


 飄々と黛。


「…………」


 沈黙してしまう。


 チラと華黒を見れば、


「……っ!」


 黛を睨んでいた。


 気持ちはわかる。


 黛は何かと僕とルシールをくっつけたがる。


 それをベガとアルタイルに願うのだ。


 華黒の警戒も至極当然。


 そして各々願いをかけた短冊を笹に吊るすのだった。


「で」


 僕が言う。


「これからどうする?」


「酒奉寺昴との待合の時間には足りませんし出店で夕食といきませんか?」


「妥当だね」


 そして僕と華黒とルシールと黛は出店をまわるのだった。


 たこ焼き。


 焼きトウモロコシ。


 かき氷。


 焼き鳥。


 今川焼き。


 ジュース。


 それぞれがそれぞれに腹をくちくするのだった。


 さてさて、


「そろそろ時間だね」


 僕には関係ない案件だけど。


 とまれ僕とかしまし娘は大学のキャンパス……その文化部の部室棟に向かうのだった。


「しかして……」


 これは黛。


「結局のところ黛さんにしてもルシールにしてもお姉様にしても採寸なんかとっていませんよね? それで大丈夫なんでしょうか?」


「まぁ昴先輩は規格外だしね」


 それで纏めるのもどうかと思うけど、


「他に言い様がない」


 というのが本音だ。


 いや、まぁいいんだけどさ。


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