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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
165/298

『あくる日』6


 夕食を食べた後、


「ふい~」


 僕は風呂に入った。


 今日の夕食は冗談でもなんでもなく鉄板焼きナポリタン。


 華黒と黛の懐の深さには脱帽だ。


 僕とルシールは華黒の淹れてくれた煎茶を飲みながら夕食を待ったものだ。


 アルデンテ。


 ちなみにアルデンテは固く湯がけば良いというものではない。


 湯がいたパスタがソースと絡まった時に芯が残らないよう絶妙の手加減を必要とする技術のことを指すのだ。


 パスタを湯がいた時点では芯が残る。


 そのパスタを味付けする時に芯が程よく消えることを前提としたのがアルデンテである。


 まぁそんなことは華黒と黛には百も承知だろうけど。


 そんなわけで極上のナポリタンを食べるに至ったのだった。


「で?」


 これは華黒。


「何が?」


 これは僕。


「兄さんへの懸想文です」


「…………」


 まぁ華黒が見逃すはずもないか。


 ワシャワシャと華黒は風呂場にてシャンプーで髪を洗っているところだった。


 僕は既に髪も体も洗い終わっている。


 そして湯船に肩まで浸かって安堵するのだった。


 もちろん水着着用。


 僕も。


 それから華黒もね。


 その辺の一線は厳しいぞ……僕は。


 華黒がシャワーでシャンプーを洗い流しコンディショナーを髪に塗りたくる。


 ブラックシルクのような髪を保つのも華黒の義務の一つだ。


「薫子さんでしたか」


「然り」


「兄さんはおモテになりますものね」


 すねたような華黒の言葉。


 事実すねているのだろう。


 薫子さんの懸想文は相変わらず謙虚だった。


 僕こと百墨真白のことを愛している。


 しかしてそれを重荷に思わないでほしい。


 今日のサッカーの試合は見事でした。


 格好良い!


 また手紙を届けます。


 そんなことがつらつらと書かれていたのだ。


 華黒が警戒するのも……まぁしょうがない。


 しかして、


「……ふむ」


 校庭は一般棟と隣接している。


 つまり僕のサッカーの活躍を見ることができるのは窓際の生徒だけだろう。


 一人一人聞いて回る……、


「わけにはいかないんだろうなぁ」


 重労働だ。


 人海戦術でも出来なければ不可能に近い。


 そして僕が動員できる人間は華黒と統夜とルシールと黛。


 以上。


 相も変わらず貧相な人間関係だこと。


 泣きたくなるね。


 意味不明な統夜の情報網を頼るのも一つの手だけど……さて、本心からの真実を酒奉寺統夜が語ってくれるかは疑問符が付く。


 結局、


「薫子の正体はわからないままだね」


 そういう他ないのだった。


「兄さんは薫子さんに対してどんな感想を?」


 どうと言われても……。


「気持ちは嬉しいけど僕には華黒がいるしなぁ」


 ポリポリと人差し指で頬を掻く。


 パァッと向日葵のように華黒の表情が輝く。


「やっぱり兄さんは私の兄さんでした!」


 ザパンと浴場にとびこんでくる華黒。


「に・い・さ・ん?」


「あいあい?」


「私を好きにしていいんですよ?」


「責任が取れるようになったらね」


「むう」


 むう、じゃないって。


「私は兄さんの恋人です」


「だね」


「兄さんは私を愛しています」


「だね」


「ならやることは一つだと思うんですけど……」


「例えば?」


「ナニ」


 スパァンと僕のツッコミが入る。


「下品な女の子は嫌いだよ」


「だって兄さんは消極的に過ぎるんですもの」


 すねたように華黒。


「一緒にお風呂に入っている時点で僕にとっては大冒険なんだけどね」


「ではそのもう一歩先を」


「ここで水着を脱いだら関係を見直すよ」


「むう」


 むう、じゃないって。


「兄さんは私に欲情しないんですか?」


「してるよ。だから処理は大変」


「私はいつでもウェルカムですからね」


「もうちょっと大人になったらね」


「むう」


 むう、じゃないって。


「たかがセックスじゃないですか」


「されどセックスじゃないですか」


 こればっかりは意地でも守る。


 少なくとも責任をとれる立場になるまで。


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