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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
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『あくる日』2


「しっかし……」


 これは黛。


「お姉さんとお姉様の絆には感慨深いものがありますね」


 そんな黛の皮肉に、


「…………」


 沈黙する他ない僕だった。


 一分一厘反論の余地がない。


 華黒は僕の右腕に抱きついているのだ。


「うへへぇ」


 気味の悪い笑顔とともに華黒は至福の時を過ごす。


 僕の腕に抱きついて登校する……つまり僕とラブラブを出来るのを心底から喜んでいる節がある。


 まぁマシロニズムの華黒にならそれだけで幸せなんだろうけどさ。


 ちなみにルシールが僕の左腕に抱きついている。


 ちょっと罪悪感。


 だけどもルシールも僕が唾をつけているという認識が瀬野二での常識だ。


 百墨華黒。


 百墨ルシール。


 不世出の美少女たちが僕に惚れているという事実。


 その事実は嫉妬を呼んだ。


 ジェラシー。


 ジェラシ~。


 衆人環視の僕を見る目には嫉妬と嫌悪と憎悪に満ち満ちていた。


 気にするほどでもないけどさ。


 飄々と僕は事実を事実と受け入れた。


 もとより愛情を一身に受ける身だ。


 これくらいは乗り越えてみせないと百墨真白ではない。


 何より悪意に鈍感だしね。


 真白と云う人間は。


「華黒先輩ばかりかルシールさんまで……!」


「華黒ちゃんばかりかルシールちゃんまで……!」


「百墨二大をあんな奴が……!」


 そんな声が聞こえてくるけど無視の方向で。


 ちなみに黛は腕を後頭部にまわして僕の三歩後ろを歩いている。


 黛も美少女だ。


 すなわち僕と一緒にいれば公平さが無くなると思うのだけどどうだろう?


 僕がそう問うと、


「野暮ですねお姉さん」


 くつくつと皮肉げに黛は笑う。


「ルシールの幸せが黛さんの幸せです。黛さんに関しては空気とでも思って何も感じ入ることの無いようお願いします」


 それでいいのかい?


 僕は疑問に思ったけど、


「ま、黛さんとしても中々楽しめる状況ですしね」


 黛はやはり皮肉げに笑うのだった。


 そんなこんなで僕とかしまし娘は瀬野二の正門を潜る。


 昇降口で百墨兄妹と後輩コンビは分かれる。


「これで邪魔者はいなくなりました」


 華黒は僕の腕に抱きついてそう言う。


「あんまり懐かないでよ」


 うんざりと。


「衆人環視の目が痛い」


「まさか」


 華黒は、


「ありえない」


 と言う。


「何がありえないの?」


「兄さんは自身に向けられる悪意に鈍感じゃないですか」


「…………」


 まぁそうなんだけど。


 何かしら反論しようとして、


「…………」


 結局何も言えない僕だった。


 そして僕と華黒は自身の教室に入る。


 華黒は猫をかぶってクラスメイトの女子の輪に加わるのだった。


 そういうところは尊敬する。


「よう真白」


 僕に声をかけてくる男子生徒が一人。


 ツンツンと尖った茶髪の癖っ毛を持つ人間だ。


 酒奉寺統夜。


 そういう名前の僕の親友だ。


 相手がどう思っているかは知らないけどね。


「おはよう統夜」


 僕は挨拶を返す。


「相も変わらず恵まれているね……お前は」


「憎しみや妬みを引き受けてくれるなら統夜に譲ってもいいけど?」


「無理だな」


 だろーねー。


 簡潔に納得する統夜だった。


「百墨隠密親衛隊がちょっと面倒なことになってるぞ」


 秘匿するように声を抑えて統夜が言った。


「具体的には?」


「華黒派閥とルシール派閥がお前を敵視している。真白派閥はそれはそれで現状を不快に思ってどうにかしようとしている」


 思うんだけどさ……。


「そういう情報をどこで手に入れてるの?」


「まぁ第三の目によるものだ」


 意味がわからなかったけど追及してもはぐらかされるだけだろう。


「そ」


 僕は一言で納得する。


「焦らないんだな……お前……」


「そんな必要もないしね」


「華黒ちゃんとルシールちゃんを寝取っておいて云う言葉か」


「別に僕の勝手でしょう?」


「そりゃそうだがな」


 ふんす、と鼻息荒く統夜が納得する。


「華黒ちゃん一筋なんだろう? ルシールちゃんはどんな立ち位置なんだ?」


「三時のおやつ」


 キッパリと僕は言った。


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