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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
157/298

『船頭一人にして以下略』4


 シャッとカーテンを開ける。


 今の僕はマネキンだ。


 そうとでも捉えないとこの嘔吐感をどうにもできやしない。


 六根清浄。


 六根清浄。


 ちなみに今僕が来ているのは手芸屋。


 コスプレの衣装から特徴的な衣装まで色々そろっている店だ。


 そして僕が着ている衣装はゴスロリだった。


 黒いカチューシャ。


 黒いフリフリドレス。


 手には純白の手袋。


 姿見に映っているのはゴスロリ美少女だ。


 皮肉だけどね。


 トラウマと四つに組んでいるんだけど……まぁこの際しょうがない。


「とても愛らしいよ真白くん!」


 そう言って僕を抱きしめ猫かわいがりする先輩だった。


「去年を思い出しますね」


「ああ」


 無論のこと、


「忘れもしない」


 当然ではある。


「あの時のことは忘れようはずもない」


「ですよねー」


「あんなに愛らしい真白くんを忘れるものか」


 そっちかよ!


 言っても無駄だから言わないけど。


 おかげで僕は不幸に見舞われたんだけど……それは先輩にはかかずらう必要のない過去らしい。


 いいんだけどさ……別に。


 ちょっとムッとしながらそう言うと、


「何だい?」


 先輩がわからないと首を傾げる。


 疑問に思うところかなぁ?


「さて、次はウェディングドレスを着てみようか……」


「男が?」


 拒否というか拒絶反応を表す僕に、


「大丈夫」


 信念というか自信を持って先輩は頷く。


「男がウェディングドレスを着ちゃいけないなんて法則はない」


 いや、


「それは男が着ないという前提での法則でしょう?」


 そういうことなのだった。


「似合うから」


 そう言ってウェディングドレスを押し付ける先輩。


「着替えを手伝わせてもらいます」


 これは手芸屋の店員さん。


「一人で出来ます……」


「無理です」


 キッパリと言われた。


「男の方とはいえ……むしろ男の方であるからこそウェディングドレスを着たことなぞないでしょう?」


「それはそうですけど……」


「大丈夫です。当店には女装が趣味の男性も度々訪れます」


 それは最低の言葉ではないですか?


「ですから男の方に複雑な衣装を着させるフォローも当店では行なっております」


 さいですか。


 中略。


 僕と昴先輩は腕を組んで都会を練り歩いた。


「あー……」


 ボウッと僕は言葉を垂れ流す。


「なんだかなぁ……」


「何がだい?」


「衆人環視の視線が痛いです」


「それだけ君が魅力的な証拠だ」


 ですかぁ……。


 他に言い様もない。


 結局手芸屋で色んな服に着替えさせられた後、最終的に僕はピンク主体のフリフリドレスによって構成されているロリータファッションを着ることになった。


 カチューシャ付き。


 やはり女装は慣れないなぁ。


 嘔吐感を押し殺し……とはいっても鏡や姿見で確認していないだけ抵抗感は薄いのだけど……僕は先輩と都会を歩く。


 美少女二人……無論皮肉である……が仲睦まじく歩いている光景はすれ違う他者の……特に男の鼻の下を伸ばすのだった。


「僕は男だ」


 と言いたいけどそれも叶わない。


 去年もこんな感じだったなぁ。


 都会を練り歩いて、


「やはり美少女を連れて羨望の的になるのは感慨深いねぇ……。うん。真白くんを捕まえて正解だったよ」


 先輩はそんな戯言を言うのだった。


 それでいいのか先輩。


 いいんだろうけどね。


 それについては諦めの境地だ。


「先輩は心臓ですね」


「そうかい?」


「男に想いを寄せるのはハーレムに対する裏切りじゃないですか?」


「ふむ……」


 考え込むように先輩。


「しかして私は真白くんの不世出の美貌に惚れた人間だ。そこには美しいか否かの判断しかあるまいよ」


「結局……僕が先輩の嗜好に合致してるから男か女かは関係ないと?」


「そういうことだね」


 何だかぁ……。


「…………」


 沈黙する僕だった。


 ロリータファッションを身に纏って昴先輩と腕を組んでいるんだから言い訳の余地もないんだけど……。


 それでも無常になるのは避けられなかった。


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