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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
146/298

『雨に唄えば』5


 次の日。


 梅雨ではあるけど今日は雨は降らないらしい。


 僕と華黒は腕を組んでラブラブ。


 その三歩後ろにルシールと黛が続く。


「それにしても……」


 これは黛。


「そこまでして敵を作ってどうしようというんですお姉さん?」


「平穏無事が一番だけど華黒の愛情には多少なりとも応えないとね」


「妬み嫉みに晒されても?」


「まぁ色々と都合があって問題ないんだよ」


「ふぅん?」


 黛は違和感を覚えたのか問うように表情を作った。


 自分が無い僕には当然のことだけどソレをここで言う必要はないだろう。


 華黒は腕を組んでいることだけに至福を覚えているらしく、


「うへへぇ」


 と相好を崩していた。


 気楽でいいね華黒は。


「………………あう」


 ルシールはそうとだけ。


 気づかないふり気づかないふり。


 華黒と腕を組んでルシールと黛を引き連れる姿は衆人環視にしてみれば嫉妬の材料だろうけど今更だ。


 正直鈍感かつもう慣れた。


 そんな運命だと思えば傷つくこともない。


 もとより傷つくはずもないのだけど。


 理解者がいなければ壊れることも想定せねばならないけど、生憎と僕には理解者という名の親友が存在する。


 恵まれているのだろう。


 少なくとも蔑にしていい存在ではない。


 感謝感謝。


 心の中で納得して僕……正確には僕たち……は校門を潜る。


 と、


「黛さん!」


 黛が校門にて突っ立っていた女子に呼び止められた。


 声の主を見れば美少女だった。


 華黒やルシールを百点とするなら声の主は七十五点……それくらいの評価を下せるほどの美少女である。


 チラと黛を見る。


 黛はキョトンとしていた。


「黛さんに何か用?」


 そう問う黛。


 黛自身が美少女に声をかけられたことに納得していないようだ。


 まぁさもあらん。


 見覚えのない美少女に声をかけられたら誰だって困惑する。


「覚えてらっしゃらないのですか?」


 美少女は言う。


「何を覚えて何を覚えてないかを確認せなばその質問には答えられないよ」


「昨日自身がずぶ濡れになることを承知で私に傘を譲渡してくださったじゃないですか」


「ああ、昨日の……」


 そこでようやく話がつながる。


 つまりずぶ濡れになって帰ってきた黛……その傘を渡した相手なのだろう。


「気にしなくていいですよ。ぶっちゃけ黛さんは気にしてません」


 黛の言葉も中々だ。


 見習わなければ。


「昨日はありがとうございました」


 ペコリと頭を下げる美少女。


「だから黛さんとしても好意でそうしただけだから」


 飄々と黛。


「お借りした傘をお返しします」


 美少女はビニール傘を黛に差し出した。


「ん。確かに受け取ったよ」


 黛が受け取る。


 それで終わると思ったけどそうはならなかった。


「あの……黛さん……」


「なに?」


「黛さんは格好いいですね」


「事実とはいえ照れるね」


 苦笑。


 やはり大物だ……この子……。


「黛さん……」


「何?」


「私と付き合ってください!」


 なに?


 ポカンとしたのは僕だけでなく華黒とルシールも同様だった。


 それほど唐突だったのだ。


 美少女が黛に惚れきったことだけはなんとなくわかったけど。


 対して黛は、


「無理」


 揺らぐこともなく即答した。


「ではお友達から……」


「それも無理」


 けんもほろろな黛だった。


「ではお手紙交換から……」


「それも無理」


 取りつく島もないらしい。


「私じゃ駄目ですか?」


「駄目」


 言うねぇ……。


「黛さんには既にルシールっていう親友がいるから」


「お友達からでいいんです……!」


「黛さんとしては人間関係をこれ以上広げたくないんですよ。関わる人数が増えれば増えるほど一人あたりの友情パワーは薄くなるってのが黛さんの持論です故」


 それは何か……僕と華黒も含まれるのかな?


 この場で聞く勇気はなかったけど。


「そんなわけで黛さんの友達は生涯ルシールだけです。十把一絡げを興味の対象とする暇はござんせん。まぁまた雨に困って足を踏みとどめる事態になったら傘を貸してあげますから……その点の心配はいりませんよ」


 容赦のない黛だった。


 清々しいとも言う。


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