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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
141/298

『偽恋真恋』6


「よう。派手にやったな」


 ニヤニヤと笑いながら、それが統夜の第一声だった。


 つんつんした癖っ毛を持つ僕の親友。


 あるいは心友。


 あるいは辛友。


 お顔の作りはいい方だが浮いた話を聞いたことがない。


 姉の方とは大違いである。


 日はルシールとデートした日曜日の次の日……月曜日。


 時は朝の八時ともう少し。


 登校して席に着いた僕に近寄ってきた統夜であった。


 華黒はさっそくクラスの女子と四方山話をしている。


 どうせ話題は『アレ』だろう。


 そして統夜がこれから言うことも『アレ』だろう。


「百墨を二人も囲うなんてやるじゃないか」


 やっぱりね。


 当然の帰結。


 華黒もルシールも目立つ女子だ。


 華黒は元から僕の物だけどルシールにはつばをつけていない。


 そういう事実があったからこそルシールは狙い目だったのだ。


 しかして僕とルシールがラブラブだと一夜にして百墨隠密親衛隊の隊員たちに知れ渡ってしまった。


 統夜はそう言った。


 相も変わらず耳の早い。


 ルシール派閥はもとより華黒派閥にもショッキングな出来事だろう。


 自身の憧れが遊ばれていると思うのなら気が気じゃないはずだ。


「百墨真白が百墨華黒と百墨ルシールに二股をかけている」


 これが瀬野二で今一番ホットなニュースである。


 まぁある意味で計算通り。


 そう思えるからこそ僕は現状を受け入れられた。


 僕へと悪意と嫉妬が向けられるのも、こういうことなら興味深い。


 少なくともルシールの重荷を背負えるのだ。


 それが嬉しかった。


 紳士である。


 外道でもあるけど。


「お前さ」


「何さ」


「姉貴にどうこう言える立場じゃなくなったよな」


「だね」


 弁解するのも馬鹿らしい。


 なおそれは事実なのだ。


 頷くより他にない。


「どういう状況でこうなったんだ?」


「元から地盤はあったよ?」


「そうなのか……ふぅむ……」


 何やら考えるように顎に手を添えると、統夜は虚空に視線をやった。


 遠い目だ。


「そんな深く考えるこっちゃないよ」


 苦笑してしまう。


「ただの牽制だから」


「ルシールちゃん派に対する……か?」


「ま~ね~」


 頬杖をつく。


「じゃあ付き合っているわけじゃないと?」


「根本的にはね」


「表面的には?」


「ラブラブ」


「そうすることでルシールちゃんに寄る虫を追い払う、と?」


「そういうことになるのかな」


 ほけっと僕。


「そもそも本気でラブラブなら今頃僕は華黒に刺されて死んでるよ」


 より正確に言うのならば僕じゃなくてルシールが刺されるだろうけど……そこまで問い詰めることもないだろう。


「華黒ちゃん可愛いよなぁ」


「まったくまったく」


「お前、幸せ噛みしめているか?」


「少なくとも僕の認識できる範囲ではね」


 肩をすくめてみせる。


「華黒ちゃんにルシールちゃんかぁ……」


 統夜の瞳が少し歪んだ。


 何かあったのだろうか?


「百墨ってのは美形の家系なのか?」


「僕と華黒は遺伝子繋がってないけどね」


「あ、すまん」


「いいさ辛友」


 気負いなく笑ってあげる。


「お前がモテる理由がちょっとわかった気がした」


「へ? 何で?」


「言ってもわからんだろうから言わん」


「ふぅん?」


 首を傾げざるをえない。


 華黒もルシールも、


「悪趣味だな」


 とは思うんだけど……。


 特にルシール。


 華黒にとって僕は運命の王子様だけどルシールについてはまったく理解の外だ。


 こう言っちゃ自分自慢なんだけど面食いなのだろうか?


 いやいいんだけどさ。


「月の無い夜道は気をつけろよ」


「統夜が襲うの?」


「俺じゃねえよ。主に隠密親衛隊のルシール派と……華黒派から……だな」


「華黒派も?」


「自分たちの想いを寄せる相手が想いを寄せる相手に主観的に遊ばれていると思って不快を感じなかったらそりゃ嘘だ」


「…………」


 納得。


 頬杖に頭部の重みをさらにかける。


 なんだかなぁ。


 僕はそんな星の下に生まれてきたのだろうか?


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