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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
133/298

『隠密親衛隊の変遷』4


 次の日。


 僕はある種の有名人になっていた。


 まぁ今更だけどね。


 スクールカースト最底辺というレッテルは、それだけで噂たるに十分だ。


 昨年度と同じく……華黒とルシールを取り換えて……、


「告白の邪魔をした男」


 という不名誉を賜ることになった。


 あっはっは。


 顔で笑って心で泣く。


 元々、


「百墨華黒の告白の邪魔をしつづけて自分の恋人に貶めた」


 というレッテルの持ち主だ。


 同じことがルシールに対しても行なわれているんじゃないかと思う衆人環視の思想……というか予想は必然だったろう。


 まぁ気にしないんだけどね。


 華黒が暴発するんじゃないかという一抹の不安はあるけれど、それとて別モノとしての感想だ。


 自身に対する悪意について鈍感と云うのはこの際便利だけど、これでいいのかと思わないでもない。


「よう、派手にやってるな」


 クラスメイトの一人が気さくに声をかけてくる。


「おはよう統夜」


 僕は憮然として言葉を返す。


 統夜はニヤニヤ笑いながら僕の隣のまだ空いている席に座った。


「お前も懲りないな」


「しょうがないよ。そんなモノなんだから」


「然りだ」


 やはりニヤニヤ。


 面白くて仕方ないらしい。


「既にメールを通じて後輩から先輩へ、先輩から別の先輩へ……なんて連鎖反応が起こってお前の悪行は全校生徒に知れ渡ってるぞ」


「統夜もその一人ってわけ?」


「まぁな」


 爽やかに言ってくれる。


 パロスペシャルの一つもかけたい気分だけどグッと自分を押さえ込む。


「やっぱりまずいと思う?」


「それはどうだろうな?」


 へ?


 僕はポカンとした。


「まずいだろう」


 と断言されると思っていたからだ。


「まぁ他者はともかく俺はある程度お前を知っている。だから理由も無くお前が無粋を働かないことだってわかっちゃいるんだ。理屈の上ではな」


「…………」


 辛友っていいなぁ。


 僕は感動していた。


 そんな僕の明後日な感動を無視して統夜は言葉を続ける。


「ただ注意しろよ」


「何にさ?」


「百墨隠密親衛隊が良い感情を持っていない」


「ああ、華黒のファンクラブ。そんな集団もあったね。どうせ心情的に相容れないんだからどうしようもないと放置してたんだけど……」


「違う。百墨華黒隠密親衛隊じゃない。ソレは合併を繰り返して別の形になった。結果として生まれたのが百墨隠密親衛隊だ」


「どういう意味? 華黒の字が抜けただけじゃん」


「だからさ。百墨華黒だけじゃなく百墨姓の人間に対するファンクラブなんだよ。そしてお前は百墨隠密親衛隊ルシール派閥に敵視されている」


「ルシール派閥……ね」


 たしかに愉快な話じゃないだろう。


 今更悪意の出所を知ったところでどうなるものでもないけどさ。


「イジメとか起きるの?」


「どうだろうな」


 含みを持った言い方だね。


「ともあれだ」


 コホンと統夜。


「ルシールのファンに悪意を持たれていることは自覚しとけ」


「百墨隠密親衛隊……ねぇ?」


「ちなみに華黒派閥やルシール派閥の他にも真白派閥……なんてものもあるぞ」


「…………」


 …………。


 言葉と思考で沈黙する僕だった。


「ぼ、僕も入っているのん?」


「まぁお前も美人の部類に入るからなぁ」


 遠い目をして統夜は言った。


「僕の……親衛隊……」


「八割くらいは新入生……一年の女子なんだがな」


 憎いね、と統夜は笑う。


「残り二割は?」


「あえて口にしてほしいのなら俺は止めやしないが……」


「遠慮しておきます」


 どうあっても楽しい結果にはならないだろう。


「ま、そんなわけだ。百墨親衛隊の入隊数は結構な数になっている。ある種、学園の裏の一勢力として認知されている部分があるんだな。華黒派閥とルシール派閥がお前を敵視していて真白派閥が好意的……というか憧憬的な感情を持っている」


「嬉しくないなぁ……」


「だろうな」


 真サッパリと言ってくれる。


「ていうかそんな情報どこから仕入れてくるのさ?」


「こっちにも色々と能力はあるんだよ」


 なんだか誤魔化されたような気分になる。


「とにかく」


 と統夜が閑話休題。


「一応のところ気を付けておけ。悪意が害意と仲良しなのはお前も知ってるだろう?」


「それはまぁ……」


 ポリポリと人差し指で頬を掻く。


 存分に知るところだ。


「しっかし……」


 親衛隊……ねぇ?


 どうしたものやら……。


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