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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
132/298

『隠密親衛隊の変遷』3


「まったくもって不敬です」


 夕食中。


 華黒の第一声がそれだった。


「まぁしょうがないんじゃない?」


 などと気休めを僕は口にする。


 今日の夕食は華黒渾身の雑炊。


 香り高く美味な一品だ。


 溶き卵の味もいい。


 はふはふと熱がりながら僕は雑炊を食べる。


「そもそも学校中から嫌われれば良いって言ったのは華黒でしょ? なら状況に則してるんじゃないの?」


「それは……そうですけど……」


 むぅと唸る。


「ですけど兄さんが責められるのには納得いきません」


「アンビバレンツだね」


 苦笑する僕。


 華黒は真白の理解者は自分だけでいいと言う。


 華黒は真白を害する者は死ねばいいと言う。


 自身の世界に真白を取り込んで、誰の目にも触れさせない。


 それが究極的に華黒の目指す世界だ。


 そこには優しさと云う甘やかしがあって、そしてそれだけだ。


 それだけで完結する代物。


 そんな世界を否定するのが僕の役目なんだけど。


「きっと今日のかの人は兄さんを貶めますよ……」


「知ってる」


 僕ははふはふと雑炊を食べながら了承する。


「でも中々のイケメンだったね」


「そうですか?」


 即答。


 ……華黒に同意を求めた僕が馬鹿だった。


「僕的に七十五点くらいの顔立ちだったけど」


「私としては二十点にも及びませんが……」


 そりゃ大層な劣等生なもので。


 赤点を振り切ってるね。


「ちなみに僕は?」


「百二十点です」


 こっちは満点を振り切っちゃったよ。


「そんなに僕は魅力的?」


「他に考えられないほど」


「いや、冷静になって」


「冷静です」


 ムッとなる華黒。


「僕は僕がそんな大層なモノには思えないんだけど」


「そんな謙虚なところも大好きです」


 ありがと。


「女顔なんだよ? 女性的なんだよ?」


「だからこそ兄さんの御顔が整っている証です」


 まぁ中性的な顔は美人の証とは言うけどさ……。


「さらに言えば兄さんは体つきもスレンダーで抱き心地抜群です。ちょっと嫉妬してしまうくらいです」


 さいですかー。


「何だか照れるね」


 珍しいこともあるものだ。


 華黒が心理要素だけを以て僕を振り回すなんて。


 しかして、


「スレンダーって……」


 それはちょっと……。


「男の子に使う言葉じゃないなぁ」


 はふはふと雑炊を食べる。


「兄さんはあまりに格好良すぎます。ですから私はいつも憂いています」


「僕が別の誰かに惹かれるって?」


「はい」


 シュンとする華黒。


 可愛いなぁ。


 その言葉が真実であればこそ愛らしく感じてしまうのは男の性だろう。


 苦笑してしまう。


 僕はすっかり華黒にまいってしまっている。


 無論、素直に言葉にすれば華黒は調子に乗って有頂天ということも十分にあり得るから言語化はしないんだけど。


 さて、


「明日が恐いね」


 僕ははふはふしながら言う。


「周りの意見なぞに耳を貸す必要はありませんよ」


 とは言ってもね。


「華黒にこそ必要な能力だよ?」


「私は兄さんだけがいれば他に要りません故」


「だーかーらー」


 雑炊をはふはふ。


「それを治さなくちゃいけないでしょう?」


「薬は飲んでます」


「自己改革が必要だって言ってるの」


「兄さんだってそれは同じでしょう?」


「…………」


 痛いところを突かれた。


 まぁそうなんだけどさ。


「深刻度でいえば私より兄さんの方が重症ですよ?」


 まぁそうなんだけどさ。


「ですからそんな兄さんを支えたいんです。それ以外に私の望むモノはありません」


 あれ?


 敗色濃厚?


 雑炊をはふはふ。


「でも華黒には世界を見てほしい」


「兄さんには自身を大切にしてほしい」


「それが僕の贖罪だ」


「それが私の贖罪です」


「むぅ」


「むむ……!」


 どこまでも重なりきって、どこまでも平行線な僕らだった。


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