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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
126/298

『真金拘束』6


 それから修道服姿の美少女……もちろん皮肉である……とゴスロリの美少女とカジュアルな美少女とが都会の道を練り歩いた。


 衆人環視は三人の美少女……重ね重ね皮肉である……に羨望と憧憬の眼差しを向けるのだった。


 男性の皆様方には鼻の下を伸ばしている人も。


 うーあー……。


 皆様方を騙している気分になってくる。


 申し訳ない。


 でも僕は男です。


 説得力は無いけども。


「はぁ~これだよこれ」


 僕と手を繋いでいる昴先輩……ちなみに反対側では華黒が腕を組んでいる……がそう戯言を述べる。


「美少女と一緒に歩いて羨望と憧憬と嫉妬の視線を受ける。これこそデートの醍醐味だ」


「…………」


 何をかいわんや。


「ましてかの難攻不落……百墨兄妹を独占しているとなれば値千金、いや値万両といったところか」


 ニコニコとどこまでも嬉しそうに先輩。


「…………」


 ソウデスカー。


 他にどんな感想を持てと?


 そんなわけで多数の人を吸い込み吐き出す都会の駅にて僕たちは散歩をするのだった。


「酒奉寺昴」


「何だい華黒くん?」


「喉が渇きました。喫茶店にでも入りません?」


「ああ、それなら」


 嫌な予感。


「いいところがあるよ」


 そう言って先輩はニコリと笑った。


 そして駅から離れることしばし。


 一つの店に辿り着く僕たち。


「バー……」


 正解。


 華黒さんに三千ポイント。


「飲酒でもするつもりですか!」


 激昂する華黒に、


「まさか」


 と苦笑する先輩。


 それから鍵を使ってバーの錠を開け放つ。


 昼間ゆえに使われていないバーにズカズカと入っていく先輩。


 バーの名は天竺。


 以前先輩と入ったことのあるソレだ。


 酒奉寺家の知り合いが経営していて昴先輩に限って出入り自由となっているバーの一つである。


 パチパチとボタンを押して暗い照明をつけるとカウンターに立つ先輩。


 修道服姿の僕とゴスロリ華黒がカウンターの席に座る。


「何か飲みたいものはあるかな?」


「何でも」


 華黒はぶっきらぼうに言う。


「そもそも何があるのかも知りませんし」


「そうだね。では因縁のシンデレラでも作ろうか」


 それは前回バー天竺で先輩が僕に作ってくれたカクテルの名前だ。


 パインジュースにオレンジジュースにレモンジュースを混ぜてシェイク。


 名をシンデレラ。


 ノンアルコールカクテルだ。


「どうぞ」


 微笑んでシンデレラの注がれたカクテルを僕と華黒に差し出してくる。


「どうも」


 と僕が受け取る。


「…………」


 華黒も無言ではあるけど受け取る。


 溜飲すると爽やかな酸味と甘味が口に広がった。


「うん。美味しい」


「否定はしませんが……」


 僕と華黒がそう言う。


「なら良かったよ」


 ニコニコと先輩が笑う。


 先輩は水出し紅茶だ。


 しばし他愛無い話をしている内にカクテルを飲み干す。


「じゃあ次のカクテルを作ろうか」


 そう言って先輩はオレンジジュースに牛乳に木苺シロップをシェイクしてノンアルコールカクテルを作った。


「カクテル……コンクラーベだ」


 本当に器用だこと。


 甘い風味が口いっぱいに広がる。


「何でこんな知識を持っているんです?」


 華黒の疑問も当然だ。


「全ては女の子にモテるためさ」


 昴先輩の答えも明朗快活だった。


「聞いた私が馬鹿でした」


「少しは見直してくれたかな?」


「ナノ単位でなら」


 華黒の言うこともどうして厳しい。


 まぁマシロニズムに染まっているだけあって百墨真白以外の人間に称賛を送るということをしない華黒ではあるんだけど……。


「厳しいね……華黒くんは……」


 カウンターの頬杖をついて微笑する先輩。


 何も痛痒を覚えないといった様子だ。


 そもそも華黒に邪険に扱われるということについて悟っているフシがあるのだろう。


 当然と言えば当然の理屈。


 僕は無言でコンクラーベを飲む。


 ともあれ喉の渇きは癒せたのだ。


 これからどうしようかと疑問を呈すと、


「カラオケでも行かないかい?」


 先輩が主導権を握って提案してきた。


 いいんだけどさ別に……。


 そんなこんなで今日一日、華黒と昴先輩とのデートに終始するのだった。


 華黒も昴先輩も器用だから楽しい時間を過ごすことができるというモノだ。


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