表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
119/298

『巡る業』5


「また邪魔したらしいぜ」


「うわ。百墨さんだけじゃなく?」


「最低」


「去年と変わらねえな」


「ルシールちゃんまで毒牙にかける気か?」


「節操ないな」


 総合するならこんなところか。


 僕に対する評価というモノは。


 登校中。


 昨日のことは燎原の火のごとく噂として広まった。


 発信源は……誰だろね?


 有力なのは昨日ルシールにふられた男子生徒だけど。


 まぁ僕もある意味有名人だ。


 一人の情報が二人……四人……八人……十六人……三十二人……六十四人と広がっていくのは止めようもないだろう。


 何しろ僕は、


「去年、華黒への告白を悉く邪魔して華黒を寝取った張本人」


 というレッテルが張られている。


 僕としては不本意だけど同じことをルシールに対して行なっていると思われても仕方のない状況ではある。


 やれやれ。


 ちなみにその成果である華黒は僕と腕を組んで幸せそうにしている。


 それがまたいっそう僕への憎しみを衆人環視に発火させる。


 望むと望まざるとに関わらず。


 まぁルシールは可愛い。


 華黒を好きな僕でもクラッとくるくらいだ。


 その告白劇を邪魔したとなれば僕がルシールに独占欲を発揮していると捉えられても仕方ないことではあるだろう。


 昇降口を通ってルシールと黛と別れる。


 各々の教室に向かうためだ。


「お姉さん、お姉様、また放課後」


 向日葵の笑顔で黛がそう言う。


 華黒、ルシール、黛のかしまし娘を僕が独占しているのだ。


 軽蔑の視線が刺さる刺さる。


 ま、関係ないけどさ。


 そして僕と華黒は教室に向かう。


 華黒は猫かぶりモードで……華黒にとっては心底心外だろうけど……友達もどきとの会話に参加するのだった。


 僕は自身の席に座る。


 と、


「よう」


 と声がかけられた。


 ツンツン跳ねた癖っ毛。


 僕の数少ない友達。


 酒奉寺統夜だった。


「おはよ、統夜」


 挨拶する僕に、


「おう」


 フランクに返す統夜。


 その表情には笑みが浮かんでいる。


 ただし爽やかなものではない。


 ニヤニヤとしたソレだ。


 事情は……通じているらしい。


「悪夢の再来だ」


「悪夢?」


「華黒ちゃんを独占して慕う男子生徒を滅多切りした去年の悪夢」


「統夜はわかってるでしょ?」


「去年のことについてはな」


「引っ掛かるね」


「実際のところルシールについてはどうなんだ?」


 皮肉気な統夜の言葉に、


「…………」


 僕は思案して机に頬杖をついた。


「まぁ……」


「まぁ?」


「ルシールが望んでいることだしね」


「お前は優しすぎるな」


 どういう意味さ?


 視線でそう語ると、


「別に大したことじゃない」


 統夜はハンズアップ。


「自分に不利益だとわかっても他者を優先する」


「…………」


 それは……まぁ。


 僕は自分を認識できないからね。


「道化に甘んじるのも致し方ないよ」


「それで瀬野二の男子生徒を敵にまわしても……か?」


「別に大した問題じゃないでしょ?」


「強いな」


「厚顔なことをそう言うのなら……ね」


「で?」


「何?」


「実際のところルシールちゃんについてはどう思ってるんだ?」


「仲の良い従姉妹」


「だろうが……な」


 あっさりと言うね。


 たまに統夜は情報を先取りしているんじゃないかという感覚がある。


 それが何に由来するのかはわからないけど。


「従姉妹……ねぇ」


 くつくつと統夜が笑う。


「業が巡るな」


 と言いたげだ。


 否定は出来ないけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ