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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
113/298

『与えられるモノ』5


 昼食をスパイクナルドバーガーでとって帰宅。


 僕と華黒はルシールと黛の部屋に招かれた。


 そのダイニングでお茶をふるまわれ歓迎される。


 ちなみにこの間にもドラマはあった。


 夕食として決定しているカレーの食材を近場のスーパーで買ったのがソレだ。


「黛さんとしてはキーマカレーを作りたいのですけど……」


「………………無理」


「何事もチャレンジだよ?」


「………………無理」


「具材を細かく切って炒めて煮込むだけだって」


「………………無理」


「どうして?」


「………………黛ちゃんは知ってるでしょ?」


「何を?」


「………………私が包丁をまともに扱えないこと」


「だからって諦めたら何にもならないんじゃないかと黛さんは思うわけで」


「………………とにかく無理」


「じゃあ普通のカレーで」


「………………うん」


 そんなわけでルーと食材を買ってカレーに備えるルシールと黛だった。


 そして時間が経つ。


「そろそろですかね」


 午後五時。


 黛がそう言ってコーヒーカップをカタンとダイニングテーブルに置く。


「………………ふえ……何が?」


「夕食の準備がだよ」


「………………ふえ」


 ルシールは最後の審判を待ち受けるような顔で、


「………………本当に黛ちゃんがフォローしてくれるの?」


 確認した。


「不肖黛さんが包丁の使い方を一から指導してあげますよ」


 請け負う黛。


 それからルシールと黛はキッチンに消えた。


 僕と華黒だけがダイニングに残される。


「どう思う?」


「何がでしょう兄さん?」


「ルシールのカレー」


「大丈夫でしょう」


「その根拠は?」


「黛がついていますもの」


「一緒にケーキ作ったんだっけ?」


「はい」


 華黒は躊躇いなく頷く。


 それから茶を飲み、


「手際の良さは私の認めるところです。センスもあります。いくらルシールがぶきっちょでも黛の指導があるのなら悲惨な結果にはならないでしょう」


 言を紡いでのけるのだった。


 僕も茶を飲む。


 黛の淹れた茶だ。


 とは言ってもティーパックだから誰が準備しようと同じ味になろうけど。


 さて、キッチンに消えたルシールと黛だけど、


「………………あう」


「ピーラーくらい素直に使ってくださいな」


「………………あう」


「包丁を扱うときは猫の手ですよ」


「………………あう」


「ほらほら。焦げないようにかき混ぜる」


「………………あう」


「白米はこっちで準備します故」


 そんなやりとりが聞こえてきた。


「華黒……」


「何でしょう?」


「本当に大丈夫だと思う?」


「ルシールに直接聞いてください」


「…………」


 何だかなぁ。


 僕は嘆息して茶を飲む。


 まぁ漫画でよくある殺人料理は出てこないだろうけど。


 それからも黛はルシールを指導して着々とカレーを完成へと近づけていった。


「よくやる」


 それが僕の本音だった。


 結果として……ふるまわれたカレーは具材の形が整っていないことを除けば普通のカレーだった。


「うん。美味い」


 僕が言う。


「評価に値しますね」


 華黒が言う。


「………………ふえ……ほとんど黛ちゃんに手伝ってもらったから」


 ルシールが謙遜する。


「料理は愛情が隠し味。それはルシールのものだよ」


 黛が言う。


「………………でも」


 反論しようとするルシールを、


「デモもストライキもないよ」


 黛が封殺する。


「まぁ未熟なのは黛さんとて否定はしないけどね。それでも非才は経験でカバーできる。全てがそうだとは言えないけど料理に関しては才能より経験が優先される」


 僕が苦笑した。


「よくそこまでルシールをフォローできるね」


「黛さんはルシールの親友です故。それに等価交換ですよ? ぶきっちょなルシールのフォローをする代わりにルシールは黛さんの勉強に付き合ってもらっていますから」


「勉強をルシールが……家事を黛が……ってこと?」


「忌憚なく言えば」


 黛は頷いてお茶を一口。


「理想的な共生だね」


「それが自慢です」


 黛はニッコリとして言う。


 僕は駄目だなぁ。


 それが率直な感想である。


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