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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生編
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『生まれ出でた日に祝福を』5


 それから僕とルシールは手を繋いで仲良くモールをまわった。


 持ち合わせが厳しいため……無論気負わせてしまうためルシールには内緒だ……ウィンドウショッピングに終始する。


 あの服が綺麗だとか、このアクセサリーが素敵だとか。


 手を繋いだまま。


 ルシールは外見が実年齢にあまり追いついているとは言えない。


 これから高校生になるのだけど見た目で語るなら中学生平均相応だろう。


 可愛らしいからそれはそれでいいんだけど。


 というわけで衆人環視には仲の良い兄妹と思われているんじゃなかろうか。


 うん。


 見栄張りました。


 実質的には仲の良い姉妹かな?


 不本意ではあるけれど。


 とまれ、次の店を覗こうと歩き出そうとして、


「………………真白お兄ちゃん」


 とルシールが言葉で僕の歩みを止めた。


「なに?」


「………………誕生日プレゼント……消耗品なら……いいんだよね?」


「ルシールとデートしてるだけで十分プレゼントだよ?」


「………………ふえ」


 ルシールは可愛らしく狼狽えたけど本人なりにたてなおしたのだろう言を紡ぐ。


「………………あの店で……プレゼントを……買ったら……受け取って……くれますか?」


 そう言ってルシールが指差した先にはアロマ専門店が。


 アロマテラピー。


 芳香によって人体の害を大きかれ小さかれ実質的であれ精神的であれ取り除く薬効術だ。


「それくらいなら」


 僕は安易に頷いた。


 パッとルシールの表情が華やぐ。


 僕にプレゼントできるのが嬉しいらしい。


 喜べばいいのやら悩めばいいのやら。


 そこでズルいとわかっていながら思考を停止し、僕とルシールはアロマ専門店に入った。


 同時に異界に迷い込んだかのような芳香が僕たちを出迎えてくれた。


 ルシールが言う。


「………………じゃあ……お兄ちゃんへの……プレゼント……選んでくるね」


「無理のない範囲でいいからね?」


「………………うん」


 一つ頷いてトテトテとルシールは店内の奥へと消えていった。


「さて、僕はどうしようかな?」


 なんて思って店の中を歩き回っていると一人の知り合いを見つけた。


 女の子だ。


「碓氷さん。アロマテラピーに詳しいの?」


「~~~~~っ!」


 美少女と言って差し支えない美少女にして美少女好きな酒奉寺昴に見初められたハーレムの一人……碓氷さんがいた。


 まぁハーレムに入ったのは僕が原因ではあるのだけど。


「百墨くん……」


「どうも」


「何故ここに……?」


「大した理由じゃないよ。碓氷さんは?」


「こっちも大した理由じゃない……」


「そっか」


「そう……」


「そう言えば話してなかったね」


「何を……?」


「昴先輩が卒業しちゃったでしょ? あれからまたイジメとか起きてない?」


「大丈夫……。お姉様のハーレムが生徒会長になったから……。ハーレムの発言力はいまだ堅牢……」


「ああ、あの生徒会長ハーレムだったんだ。まぁたしかに美人だったよね」


 僕は生徒会選挙で会長の座を射止めた美少女を思い出す。


 相も変わらず先輩の手は長いらしい。


「ま、イジメに関しては起きてないならいいんだ」


「少なくとも高校生の内は大丈夫だと思う……。その先は知らないけど……」


「卒業した後まで虐めるほど陰湿な性格には見えなかったけどね」


 苦笑する他ない。


「うん……。だから大丈夫……」


 さいですか。


「でも何故それを……?」


「?」


 クネリと首を傾げる僕。


 会話の転換点が見いだせなかったが故だ。


 それを悟った碓氷さんが言葉を補足する。


「何で百墨くんが私の顛末を気にするの……?」


「あ、もしかして気にしちゃ拙い?」


「そんなことはないけど……」


「そもそも僕と碓氷さんの関係が定義できないから何を言うでもないけど……あんまり負の感情や状況を容認するのが難しいと言えば納得してくれる?」


「優しいんだね……」


「それ、別の子にも言われたけど自覚は無いよ?」


「だからすごいんだよ……」


「それも言われた」


「だったらその子を大切にすべき……」


「うん。進言ありがと」


「じゃあ私はこれで……」


 そう言って香油の入った瓶を持って逃げるようにレジへと向かう碓氷さんだった。


 あれ?


 もしかして苦手意識持たれてる?


「ううん」


 と唸っていると、


「………………お兄ちゃん」


 と今度はルシールが入れ替わりで現れた。


「………………はい……プレゼント」


 おずおずと紙袋を差し出すルシール。


「中を見ても?」


「………………うん」


 中身はアロマキャンドルでした。


「ありがとねルシール」


「………………うん……誕生日……おめでとう……ございます……お兄ちゃん」


 はにかむように微笑するルシールだった。


 可愛い可愛い。


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