第一話
俺がこの会社に入ってもう五年になる。
単純作業の繰り返しで退屈な毎日である。
「ほら、手とまってるぞ!」
上司からのお決まりのことを言われる。「すいません」
心からの返事のはずはなくその場をやりすごす。
思えば入社した当時はやる気に満ちあふれていた。
それが年を重ねるにつれ次第に薄れていった。
今の俺には守るべき家族もいない。
生きる目標がみつからない。俺はなんのために生きているのだろうか?
友達はいる。
親友と呼べるか分からないがそれなりの付き合いはしているつもりだ。
仕事帰りに飲みに行っても愛想笑いを浮かべているだけ。
そんな態度を見抜いてか友人の一人がきいてくる。
「お前、たのしんでる?」
「楽しいよ、なんで?」
なるべくその場の雰囲気を壊さないよう慎重に答える。
「ならいいけど」
そっけない返事をし友人はまた盛り上がる。
俺は蚊帳の外だ。この場にいるのを苦痛に感じ俺は店を出た。
帰り道人混みを避けるように裏道を使った。
こういうときはなんとなく一人で飲みたい気分だ。
俺は途中のコンビニでビールを二本買い近くの公園のベンチで一杯やることにした。俺はビールを飲みながら色々と考えた。
昔はよかった。
学生生活は楽しかった。
夢もあった。
しかし、その先がでてこない。
自分の夢がなんだったのか、まったく思い出せない。
あの頃はバカなこともやった。
今の会社に入ったのも夢の実現のためのはずだった。
でも現実は違った。
いつしか夢を忘れてしまっていた自分に気が付いた。
俺の夢ってそんなものだったのか?そんなことを考えていると自分が矮小な人間に思えてきた。
とりあえず帰ろう、そう思いベンチから立つと反対側のベンチに一人の少年が座っていた。