02話 せいぜい楽しませて下さい
今回は酒場の常連さん視点です。
※評価・お気に入りありがとう御座います!
※01話、若干加筆しています。(10/29 21時頃)
《世界を救った巫女様争奪戦線についにあの冷徹非道な宰相・ジークフリートが参戦!更に泥沼化した王宮恋愛事情、果たして今後の展開は如何に―――》
なんて言うふざけた噂が流れ出だした数日後、噂のジークフリート様ご本人が婚約者のはずのシャロンの店―――《酒場・オータムボーン》に現れた。
まあ酒場と言っても、実際は何だかんだで真面目でお上品な店主様のお人柄と、酒場に不似合いな家庭料理のお陰でかなりアットホームな店なんだがな。
――と、話が逸れちまったが。そう、そのジークがシャロンの前に現れた。
で、いつものカウンター席に座り、いつも通りオムレツを注文し(因みに今は昼時だ。そして俺達が酒を呑んでいるのは夜勤上がりだからだ。断じてサボっている訳じゃない。)、出来上がったオムレツを二、三口に入れた後に白紙云々のアレだ。
お前、せめて口にあるモン片してから喋ろよ――なんて呑気に二人を眺めていたら、段々雲行きが怪しくなってきた。
「…なあ、あの二人何か様子が変じゃねぇか?」
ポツリと呟いた一言に、隣のテーブルで賭がどうたらと喚いていた常連仲間どもが反応した。
「………ん?」
「……おお?」
「………なあ、キース。ジークの奴もしかして…」
一斉にカウンターの様子を確認した三人。
此方からはシャロンの表情とジークの後ろ姿しか見えなかったが、伊達に長年此処に通っていただけにその違和感に直ぐに気付いた様だ。
「…何か理由アリみてぇだな」
ニヤリと、まるで新しい玩具でも見つかった様に真後ろのロッジが呟く。
《酒場・オータムボーン》でシャロンが働く様になってそろそろ十年。
その間、明らかに慣れない仕事に戸惑うシャロンに罵詈雑言を浴びせながらもサポートしたり、場所が場所なだけに無遠慮にシャロンに言い寄ってくる野郎どもを陰ながら排除したり、させたりしていたのがあのジーク坊ちゃんだ。
件の巫女様は噂を聞く限り、民間人の俺達がドン引きたくなる程に魅力的だそうだが―――それでもあのジークが堕ちる事がまず考えられないのだ。
…まあ、だからと言って俺達が“あの二人の為に”動く事はないんだが。
「せいぜい100ガネットの恨みを思い知るがいい…ククッ」
隣で凶悪な笑みを浮かべるアーノルドを見やり、同じく俺も口角が上がった。
――俺達はただの客だ。
だが、あの二人の抱腹絶倒な茶番劇の観客かつエキストラでもある。
「よっしゃ、今回も盛り上げてこうぜ!」
こうして今日も、年若い男女二人は中年オッサン共の格好の酒の肴にされるのであった――。
オッサン達、完全に状況を楽しんでます。
毎回この調子でジークに絞められたりもしていますが、全然全く懲りる気はありません(笑)