異世界に行きたい男の苦悩
気分転換に書いてみました
ああ、どうすれば行けるんだ。
もう生きづらい現代は懲り懲りだ。
どんどん夏が暑くなって辛いし、物価が上がり続けて生活がキツい。
生きる為に働くのはいいが、少しも楽にならないこの蟻地獄のような生活を抜け出せるとは思えない。
安易に宝くじでも買えばいいんじゃね?って友人に言われたが当たる訳がない。確率が低すぎる。アイドルと付き合う方がまだ確率が上だと思う。
人生は一回限りだ。だからこのままは嫌だ。なんとかしたい。
そんな訳で異世界に行きたい。
異世界の生活だって楽ではないのは承知してるが、今の状況から脱却したい。何よりワクワク感が半端ない。
俺は異世界はあると思っている。
根拠は三つある。
一つ目は神隠しだ。
世界には沢山の人が行方不明になっている。確かに事件や事故も在るだろう。だけど説明がつかない状況で突然いなくなる人もいる。
あいつら絶対に異世界に行ってるぜ。いいなあ。マジで羨ましい。
二つ目は物語を書いてるやつだ。エルフとか魔法の事を知識無しから思い付くか?
俺的には異世界から戻ってきた時に記憶を無くしてるが、潜在的に若干残っていて、さも自分が考え付いたと思ってるんじゃねぇの?
ホンマに羨ましい。俺も誰も思い付かない物語書いてみてぇよ。周りから称賛が凄まじいだろうな。
三つ目はマジシャンだ。
マジックに仕掛けがあるのは分かるが、一人か二人くらいは異世界から転移してきたやつらがいてもおかしくない。
あちらの世界では誰も驚かないが、魔法がない世界なら簡単なやつでも驚かれる。異世界ってホンマに凄い。マジでリスペクトだわ。
俺は異世界に旅立つ決意を固めた。
本当は「みんな、異世界に行きたいか?」って呼び掛けて賛同した同士達と一緒にやりたいが、ハズイから出来るわけもなく、結局一人寂しく試すしかない。
そんな訳で、よくある定番のトラックにひかれて異世界に行くパターンのやつだ。
一週間くらい悩んだが実際に試してみた。
無理!
マジで無理だから!
走ってるトラック超怖ぇぇぇ!
昔ドラマで「僕は死にましぇ~ん!」ってほざいてたオジサンがいたけど、リアルは無理やろ。頭のネジが抜けてないと飛び出せねぇよ。
うん、この案は辞めよう。失敗したら普通に死ぬしな。
パターン2だ。
学校でクラス毎転移するやつ。
夜中に学校に忍び込んだけど、何も起きなかった。
警備員にしこたま叱られ、警察からもめっちゃ叱られた。
マジで凹んだが、一番ショックなのは俺の思いを1ミリも賛同してくれなかった。
おかしい。みんな異世界行きたくないのか。
パターン3だ。
森を歩いてたら、いつの間にか異世界にいるやつ。
森といっても沢山ある。何処がいいのか分からないから一番近い森に行ってみた。
無理だった。
半日歩いたが効果なし。しかも夏だったから汗だくで大変やった。身体もガタガタで、翌朝は筋肉痛が酷くて起き上がれなかった。
夏は駄目だ。
秋にそなえて体力作りをする。
朝晩にランニング。
最初は1キロで限界だったが、秋が来る頃には10キロくらい走れるようになった。
体力はついた。
準備万端だ。
やっぱり駄目だった。
冬も試したが駄目だった。
しかも寒かった。
春も試したが駄目だった。
やっぱり近所は駄目なのか。
色々思案した結果、富士の樹海に決めた。
行方不明者も出るらしいから、可能性は高い。
迷った。めっちゃ迷った。
異世界に行く前に野垂れ死ぬかと思ったわ!
駄目もとで東北の山に行ってみた。
熊出没の看板が立っていたので、引き返した。
熊はあかんやろ。
パターン4としては死んで転生するやつ。
失敗したら普通に死ぬんやから無理やろ。
トラックと大差ないわ。
期待は低いがパターン5だ。不思議な本を開いたら異世界に行くやつ。
図書館で手当たり次第に本を開いていたら、係の人に声をかけられた。不審者だと思われたのだろう。
自分でも怪しいのは自覚してたから、みんな不審者と思ってたんだろうな。俺だってそんな奴見たらヤバいって思うもん。
チキンな俺はそれ以上本を開く事が出来ずに断念した。そして二度とその図書館には行かないと誓った。
あれも駄目、これも駄目。
俺は異世界に行ったら駄目なのか?
おじさんだからか?
おじさんはあかんのか?
おばさんなら行けるなら男のシンボルを切る覚悟はあるで。
それとも三十五歳が年齢制限に引っかかるのか?
流石に若返れない。
もしそうならチャンスを逃している。
異世界行きのマニュアルが無いからマジ分からん。
ラノベ好きの友人に相談したら、「頭、大丈夫?」って言われた。
酷くないか?
自宅で酒を飲みながら、散々愚痴を言って、お気に入りのラノベを読んで寝た。
異世界に行けた。
夢だが。
チクショウ。
せめて続きを見せて欲しい。
めっちゃいい場面で起きてもた。
出来たら長編の夢希望。
俺は諦めん。
新たに勉強するために新作のラノベを買いに行く。
いつか、
いつかきっと行って見せる。
おじさんだって、
チャンスはあるはずだから。
(完)
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次回作の意欲に繋がるので




