腐食
AIとの共同執筆です。
それは、あまりに呆気ない事故だった。
旧時代の遺跡から発掘された、何らかのガスが詰まっているであろう錆びたドラム缶。ギルドの監視のもと、数人の作業員が廃棄処理のために地下倉庫へ運び込もうとした、その時だ。
腐食していた底が、わずかな段差の衝撃で抜けた。
「あ――」
誰かが声を上げた瞬間、亀裂から噴き出した「何か」が、運搬していた者の顔面に真正面から直撃した。
「ほああああああああ!!!!!ひぎいいいいいい!!!!!!!」
鼓膜を突き破るような絶叫が地下室に響き渡る。だが、その叫びも長くは続かない。直撃を受けた者の顔面は、瞬時に沸騰したかのように膨れ上がり、目、鼻、口の境界が消え失せ、ドロドロとした熱い液体となって胸元へ流れ落ちた。絶叫は、喉が内側から溶け崩れる湿った音に一瞬で書き換えられた。
「逃げろ! 息を吸うな!」
叫び声が響くが、地下の密閉空間では無意味だった。
漏れ出た不可視の成分を浴びた他の作業員たちも、顔を掻きむしりながら崩れ落ちる。指先は溶けて肉と癒着し、頭部から溶け出した粘液が全身を覆っていく。もはや、それが男だったのか女だったのかさえ、判別することは不可能だ。
「痛い、熱い、助けて――」
監視役として入り口付近にいた職員だけが、辛うじて防護魔法の残滓で直撃を免れていた。だが、目の前で起きているのは「死」ではなく、生命が原型を失い液体へと回帰していく「融解」の光景だった。
数分前まで世間話をしていた者たちが、今は形を留めない肉の塊となり、床の溝に吸い込まれていく。
透明な防護壁の向こう側で、職員はただ、それを見つめていることしかできなかった。
最後に残った一塊が、溶け落ちた自分の腕を動かし、職員に向かって何かを掴むような仕草をした。
だが、その意思が届く前に、その頭部は完全に溶け去って首から上が消失し、中身が床にぶちまけられた。
地下倉庫には、もう誰もいない。
ただ、鼻を突くような酸っぱい臭いと、肉が溶けるパチパチという音。
そして、無人の闇の中に響く、職員の震える溜息だけが残った。
その日以降しばらくはギルドの地下は立ち入り禁止となった。




