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それでも尚侮られる(後編)

AIと共同執筆です。


「ひぎゃあああああああ!!!!」


静寂だった洞窟が、一瞬でカイルの絶叫に塗りつぶされた。

カイルの頭上から落ちてきたもの。

それは一匹のスライムだった。

どこにでもいる普通のスライムだった。

透明な粘液の中に閉じ込められた彼の顔が、見る間に赤黒く変色し、水ぶくれが沸き立つように膨れ上がっていく。

「カイル! くそっ!!」

痛みにのたうち回る彼からスライムを剥がそうと反射的に手を伸ばした。

しかし。

指先にわずかに触れた瞬間。

「ぎゃああああ!!!!!!あ、熱いッ!!」

声が裏返るほどの激痛。たった一滴、指の腹に付いただけで、骨を直接焼きゴテで抉られているような衝撃が脳を突き抜けた。見れば、分厚い皮の手袋をスライムの飛沫は突き抜け、私の指の皮膚をドロドロに溶かし、下にある赤い肉が剥き出しにした。


(これだけで……たったこれだけの飛沫でこんないてぇのかよ!)


であるならば、その中心に頭部全体を浸されているこいつは、今、何を感じているんだ!?


スライムの中で、カイルの瞳がこちらを向いた。

眼球の表面が白濁し、熱を通した魚の目のように変わっていく。

「ぐぎゃあああ!!……だずげ…で…ごぷっ…………」

必死に動く口から、気泡と共に溶けた粘膜が溢れる。

助けを求めて伸ばされたカイルの手。その腕からはすでに皮が一枚も残っておらず、ピンク色の筋肉の繊維が、スライムの消化液の中で茹で上がった糸のように解けていくのが見えた。

指先が私に触れる直前、その指骨が重力に耐えかねて、ズルリと肉から滑り落ちた。

私は、動けなかった。

もう、助けられる段階じゃなかった。

今手を貸せば、私の腕も、顔も、こいつと同じ「肉の泥」に変わる。

現役の冒険者として、私は、こいつを見捨てる決断を、この指の激痛の中で下さなければならなかった。

ズルリ、とカイルの体が地面に崩れ落ちる。

スライムが全身を飲み込み、カイルを白骨といくばかの装備品の残骸へと変えたあと、ゆっくりと離れていった。


そこにあったのは「カイル」だったモノだ。

溶け残った髪の毛が数本。そして異常なまでに白く、丁寧に磨き上げられたような骨だけが、暗闇の中で浮き彫りになっていた。


「はは……なんだよこれ……」


自分の指の火傷を、震える手で包帯を巻く。

痛みが引かない。ジンジンと、カイルの断末魔がこの指を通して全身に響いているようだ。


……さっき、私はこれを「調査」だと言ったな。

ああ、そうだ。これは調査だ。

スライム一匹に、これほどの強力な殺傷能力があるという事実を、私は今日、身をもって思い出した。


私はゆっくりと、まるで私など眼中にないかの如く悠々と去っていくそれを見送ることしかできなかった…。


その夜。


独り、ギルドへ戻り、私はペンを握る。


頬の火傷も、指の激痛も、まだ私の意識を鋭く削っている。

私は今日、この「カイルだった骨の山」について、報告書をまとめた。

彼は死んだ。

ただの、ありふれた、どこにでもいるスライムに、極上の痛みと共に。


これを明日報告するのが、私の仕事だ。

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