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勝者……

「勝者、武剣!」

「武剣の勝利だ!」

「武剣が勝ったぞ!」

観客の声が闘技場に響き渡っていたが、正直なところ、俺の耳にはほとんど入ってこなかった。

大会は容赦なく進み、俺は次々と勝利を重ねていった。だが、気になったことが一つある。

対戦相手のほとんどが、同じ呉一族の者たちだったのだ。

これが偶然なのかどうか、俺には分からない。

対戦相手や試合の組み合わせは、くじ引きで決められている――建前上は、そういうことになっている。

この段階を不正に操作するのは不可能なはずだ。

それでも、どうしても疑念が頭から離れなかった。

(……やっぱり、これは明漢の企みだろう)

呉一族同士を潰し合わせれば、明慎は余計な強敵と戦わずに済む。

あいつなら、そういうことを平然とやる。

だが、疑いだけでは意味がない。

大会の不正を訴えるということは、周氏一族が大会運営を怠っていると非難するのと同義だ。

確かな証拠がなければ、そんなことを口にすれば逆に立場が危うくなる。

俺はすでに父上にこの件を報告している。

だから、これ以上深く考えないようにしていた……それでも、心のどこかで引っかかっていた。

俺は自分の一族の者たちを次々と脱落させている。

その一方で、明慎は今のところ、弱い相手としか戦っていない。

(……そういえば、この次は侯静姝の試合のはずだ)

彼女は、修行を始めてから見違えるほど強くなった。

以前とは比べものにならない。

――どういう戦いをしたのだろうか。

俺は、そう思いながら視線を闘技場へ向けた。

自分の試合はすでに終わっていて、別の試合が始まっていたため、俺は武美影の試合を観に行くことにした。

すでに侯静姝がそこにいて、険しい表情で闘技場を見つめていた。

「……負けたのか?」

俺が声をかけると、彼女は苦々しい視線を向けてきた。

「そんなに分かりやすい?」

そう言ってから、小さく息を吐く。

「第四回戦で、明慎に負けたわ」

「……それは、きついな」

「負けたこと自体は、ここまで悔しくなることはないんだけど……」

言葉を濁したあと、彼女は唇を噛みしめた。

「……何かされたのか?」

俺がそう尋ねると、侯静姝は一度目を閉じ、歯を食いしばった。

頬に恥ずかしそうな赤みが広がる。

「……胸を、触られたの」

その言葉を聞いた瞬間、俺の視界が暗くなった。

拳を強く握りしめ、前腕に血管が浮き上がるのが分かる。

「……殺す」

「だめよ。それをやったら失格になるでしょう」

冗談めいたやり取りではあったが、正直なところ、俺は本気で腹が立っていた。

明慎が侯静姝に触れたという事実が、どうしても許せなかった。

彼女が婚約者であるという現実には、まだ完全に慣れたわけではない。

だが、それでも――彼女は俺の婚約者だ。

他の男が触れていい存在じゃない。

いつの間にか、侯静姝は俺にとって大切な存在になっていた。

毎日一緒に修行し、食事をし、他愛もない話から真剣な話まで語り合ってきた。

彼女は、俺と美影の関係に自然に溶け込み、

それでいて、二人とは違う形で俺たちを補ってくれる存在だった。

――彼女が俺の人生に加わってくれたことを、俺は嬉しく思っている。

明慎を殺すつもりはない。

それは規則違反だからだ。

――だが、半殺しにしてはいけないとは、どこにも書いていない。

怒りを意志の力で押さえ込み、俺は武美影と巨石美琳の試合へと意識を切り替えた。

二人は闘技台のど真ん中で向かい合い、激しく打ち合っている――ように見えた。

だが、それはあくまで表面上の話だ。

巨石美琳の顔は真っ赤に染まっているのに対し、美影の表情は驚くほど落ち着いている。

どちらが主導権を握っているかは、一目瞭然だった。

「この試合、どれくらい経った?」

俺が尋ねると、

「始まって、まだ数秒よ」

と、侯静姝が答えた。

その直後、巨石美琳が美影の顔面を狙ってハイキックを放った。

動きは流れるようで美しく、脚は弧を描いて空気を切り裂く。

――だが、美しいだけだった。

軌道は素直すぎる。

読みやすく、対処も簡単だ。

美影は身を低く沈め、闘技台に両手をつくと、そのまま脚を薙ぎ払った。

巨石美琳は短く悲鳴を上げ、床に叩きつけられる。

慌てて起き上がろうとした瞬間、美影は体を反転させ、平行倒立の体勢から蹴りを放った。

その一撃が、相手の顔面を正確に捉える。

――ゴッ、という鈍い音が、闘技場中に響き渡った。

観客の多くが顔をしかめる中、美影は一切の無駄なく着地し、くるりと回転。

そのまま後ろ回し蹴りを叩き込む。

踵の裏が、巨石美琳の首筋を正確に打ち抜いた。

侯静姝が思わず顔をしかめる中、

巨石一族の令嬢は、重たい音を立てて闘技台に倒れ伏した。

――勝負は、決した。

「……あれは、相当痛かったでしょうね」

と、静姝が小さく呟いた。

「だろうな。美影の蹴りは、ほんとに洒落にならないからな」

俺は頷いた。

「最初の一撃、あれは完全に鼻に入ってた。たぶん骨も折れてるし、美影がどれだけ脚に力を込めてるかを考えたら……脳まで揺さぶられててもおかしくない」

「勝者、武美影ウー・メイイン!」

闘技台の審判がそう宣言した瞬間、観客席から大歓声が上がった。

あちこちから、美影の名前を呼ぶ声が飛ぶ。

勝利が確定すると、美影は俺たちの方を振り返り、にっと笑って闘技台から跳び降りてきた。

その直後、担架を持ったジョウ氏族の者が二人、闘技台に上がり、巨石美琳ジューシー・メイリンを運び出す。

最後に見えた彼女の姿は、担架の上でぐったりと横たわり、片腕が力なく垂れ下がっていた。

まるで濡れた麺みたいだった。

「勝利、おめでとう」

俺が声をかけると、

「ふんっ! 楽勝だったわ。あの子、最初から相手にならなかったもの」

美影は胸を張って言った。

もっとも、褒められて満更でもなさそうなのは隠しきれていない。

――犬だったら、間違いなく尻尾を振ってただろう。

「気になるのは周麗華ジョウ・リーファくらいね。あの子は……さすがに手強そう」

「でも勝つんだろ? 負けたら、俺が容赦なくからかうぞ」

そう言って、俺は彼女の頬を指でつついた。

「心配しなくていいわ。誰にも負けないもの」

そう言ってから、美影は静姝の方へと視線を向けた。

「さっきの試合の話、聞いたわ。認めたくはないけど……明慎ミン・シェン、かなり強い。最強ってほどじゃないけど、あなたはまだ修行を始めて数か月だもの。どうしても不利だったわね」

「……分かってる」

静姝は小さくため息をついた。

「それでも、勝ちたかったな……」

彼女は俺と同じで、負けず嫌いだ。

だからこそ、その悔しさがどれほどのものか、俺にはよく分かる。

俺はそっと彼女の手を取って、親指で拳を撫でた。

「そうやって悔しがれるってことは、それだけ自分の力に誇りを持ってる証拠だ。

この負けを糧にして、もっと強くなれ。次に戦う時は……思い切りぶちのめしてやればいい」

静姝はくすっと笑い、頬を少し赤らめた。

「それって……前の大会で負けた時、あなたがやったこと?」

「もちろんだ!」

その時、場内に声が響いた。

武剣ウー・ジエン! 第四闘技台へ! 次の試合を始める!」

――俺の番だ。


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