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第6話 誰もが欲しがる少女と、俺の覚悟

「ふん、その子はいつもメイインと一緒にいるのね」


第二夫人――武桃花ウー・タオファが冷ややかに言葉を挟んだ。


「だからあの子、言葉遣いも仕草も女の子みたいになるのよ」


彼女の肌は雪のように白い。だがそれは、厚く塗られた白粉のせいだ。


母上のような自然な美しさとは違い、彼女の美は作られたものだった。


唇には鮮やかな紅。髪は高く結われ、龍の爪を模した金細工の髪飾りが揺れている。


その豪華さは、第二夫人としての地位を誇示しているかのようだった。


「まあまあ、そんなに厳しく言わないであげて」


母上が柔らかな声で笑う。


「この二人は、メイちゃんを養女に迎えた時からずっと一緒なのよ。

離そうとするたびに泣いて大変だったでしょう?

仲がいいのは自然なことだわ。

それに、まだ子どもなんだから――子どもらしくしていていいと思うの」


タオファは、腐ったものでも嗅いだかのように鼻をしかめた。


父上は小さくため息をつき、どこか諦めたような、それでいて優しい笑みを母上に向ける。


「……まあ、世界の終わりというほどでもないか。

だが、ジエンには自覚を持ってもらわねばならん。


お前はウー一族の後継ぎだ。

強く、誇り高くあれ。


そして――父母と皇帝以外の者に、決して頭を下げるな。


我らの一族は小さいが、決して弱くはない」


「はい、父上」


何度も聞かされてきた言葉だ。


“もっと男らしく”“もっと堂々としろ”


父上はいつもそう言う。


反論したいと思うこともあったが、口には出さない。


言い返すより、従っていた方が楽だからだ。


「ふん……いい。もう行け。食事を取ってこい」


「はい、叔父上」

「はい、父上」


「今日のご飯、すっごくいい匂い!」


メイインが明るく言うと、父上は苦笑し、母上は嬉しそうに微笑んだ。


一方で、タオファと三人の長老たちは明らかに不満そうに顔をしかめていた。


メイインは、一族の中で複雑な立場にある。


血の繋がりがない養女――それだけで「外の人」と見られてしまう。


だが、その美しさゆえに、完全に無視されることもない。


同年代の男子は皆、彼女に夢中だった。


それは恋というより、憧れに近い。


中には、大人の男でさえ「将来は美しい女になる」と期待の目を向けている者もいる。


一族にとって、血を繋ぐことは何よりも重要だ。


だが、ただ子をなせばいいわけではない。


婚姻相手に求められるのは――容姿、家柄、そして才能。


次の世代をより強くするため、この三つが重んじられる。


美しければ、それだけで価値がある。


家柄があれば、身分も富も手に入る。


だが何より重要なのは“才能”――修練の才だ。


強い気を扱える資質を持つ者は、どの家でも欲しがる。


そしてその三つを兼ね備えた者――それが理想の結婚相手とされた。


メイインは、そのすべてを持っている。


美しく、族長の娘という立場を持ち、そして強い。


まだ気を扱えない年齢でも、肉体の強さは才能の指標になる。


彼女は年上の男子よりも強い。


それだけで、非凡であることは明らかだった。


年長者たちは密かに彼女の将来を見ている。


自分の息子と結ばれれば、家の地位は一気に上がる。


それほどまでに、彼女は価値のある存在だった。


その日の夕食は、炒飯と北京ダック、そして臭豆腐だった。


……俺は正直、この豆腐が苦手だ。


鼻を突くような強烈な臭いに、どうしても慣れない。


俺が食べたのはダックと炒飯。


特に北京ダックは絶品だった。


薄い皮に包まれた肉と野菜に、甜麺醤の甘辛いタレ。


コクと旨味が広がり、野菜の歯ごたえが後味をさっぱりさせる。


まさに至福の味だ。


一方、メイインは――


「ん~っ! この豆腐、最高! 香りがたまらないわ!」


幸せそうに目を細め、頬張っている。


……本気か?


「よくそんなの食べられるね」


「あなたこそ、どうして食べないの?」


「だって……匂うだろ」


「そうよ。おいしそうな匂いがね」


自信満々に言い返され、言葉を失った。


どうやら、臭豆腐を好きになるには修行が足りないらしい。


そんな話をしていると、不意に背中に視線を感じた。


顔を上げると――案の定、兄さんの武勇ウー・ヨンがこちらを睨んでいた。


今までなら、すぐに目を逸らしていただろう。


恐怖で、まともに見返すことなんてできなかった。


だが――あの時の言葉を思い出す。


「強くなりたいなら、まず自分から変わらなきゃ」


強くならなければならない。


あの未来を、変えるために。


……兄さんより、メイインを失う方が怖い。


震える体を抑えながら、俺はその視線を真正面から受け止めた。


心臓が激しく脈打つ。


それでも、逸らさない。


すると兄さんの顔が赤くなり、隣の武飛ウー・フェイに何かを囁いた。


フェイは俺を一瞥し、鼻で笑う。


……どうでもいい。


今は、それどころじゃない。


「ねえ、ジエン」


メイインが箸を差し出す。


「私の豆腐、食べてみない?」


「いや、いいよ」


「お願い、ちょっとだけ」


「いや、本当にいいから」


「でも……ジエンが食べてくれたら、私、嬉しいの」


潤んだ青い瞳で見つめられ、逃げ場はなかった。


「……わかったよ」


観念して口を開ける。


豆腐が運ばれ――


臭いが突き抜ける。


……やっぱり不味い。


顔をしかめた俺を見て、メイインはくすくすと笑った。

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