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ずっと…私を愛してくれる?

正門側を守っていた二人の護衛が、いち早く火に気づいた。

彼らは顔を見合わせると、すぐに煙の方へと駆け出した。

四人のうち二人が完全に視界から消えるのを待ってから――

美瑩は息を飲み、地面を蹴った。

足裏に鋭い痛みが走る。だが構っていられない。

彼女は入口に飛び込み、素早く中へ滑り込み、扉を閉めた。

薄暗い廊下を進むと、すぐに建仁ウージエンの部屋の前へと辿り着く。

トン。

一度、控えめに扉を叩いた。

……返事はない。

もう一度、軽く叩いた。

……それでも返事はない。

美瑩は下唇を噛んだ。

もしかしたら、寝ているのかもしれない。

こんなことで起こしてもいいのだろうか?

昔は何度も夜中に叩き起こしていたけれど……

でも、もし迷惑だったら? 嫌われたら?

(だ、だいじょうぶ。これは建仁だよ。建仁は私のこと、鬱陶しいなんて思わない……はず……)

夢の残滓がまだ胸の奥でざわついていて、思考がうまくまとまらない。

小さく息を吸って、声を潜めて呼びかけた。

「……建仁? 起きてる……?」

今度は、さっきより少しだけ大きな音で扉を叩いた。

けれど、窓の方の護衛に気づかれないように、ぎりぎりの小ささに抑えて。

ひと呼吸ほどの沈黙――

まだ眠っているのかもしれない、と美瑩が思いかけたその時。

とん……とん……

ゆっくりとした足音が近づいてくる。

胸が大きく脈打つ。

やがて扉がきい、と開き、寝ぼけ顔の建仁ウージエンが姿を見せた。

「……メイ? どうし――」

その言葉を聞く前に、美瑩は堪えきれず飛びついた。

ぎゅっと腕を回し、顔を彼の胸に埋める。

建仁の匂いが鼻腔いっぱいに広がる。

その匂いだけで、さっきまで荒れていた心が、少しずつ落ち着いていく。

やがて、彼の腕がそっと美瑩を包んだ。

頭に優しく添えられた手に引き寄せられるまま、さらに胸へとすり寄る。

建仁のそばは、世界でいちばん安心できる場所だった。

どんな悪夢を見ても、彼に会えばすべてが軽くなる。

問い詰めたり、理由を求めたりしない。

ただ、抱きしめてくれる。

その弱々しい腕のどこに、こんなにも安らぎがあるのだろう。

「……中、入る?」

建仁が小さく尋ねる。

「ん……」

美瑩は胸に頬を押しつけたまま、こくりと頷いた。

建仁は彼女を抱いたまま後ろに下がり、そっと腕を回して軽々と抱き上げた。

昔はできなかったこと。

だから美瑩は、抱えられる感覚にひそかな喜びを覚えた。

彼は足で器用に扉を閉めた――

バンッ!

大きめの音が部屋に響き、建仁がぎくりと肩を跳ねさせた。

その時。

建仁ジエン・公子? 今の音は何ですか?」

窓の外から聞こえたのは、護衛の声。

同時に、ギギ…… と窓の雨戸が開いていく音。

二人は同時に目を見開いた。

建仁は急いで美瑩をベッドに降ろし、自分も座って布団を引き寄せ、二人まとめてすっぽりと隠した。

ベッドの上には――

ちょうどひとり分、しかしどう見ても美瑩の形をしたふくらみができている。

「なんでもありません!」

建仁ウージエンはそう答えながら、少し乱暴に雨戸が開く音がした。

年配の護衛がひょいと顔をのぞかせる。

「ただ……ベッドから落ちただけです。」

布団の中、美瑩は建仁のすぐ横に身を潜めていた。

最初は暗くてよく見えなかったが――

しばらくすると目が慣れ、視界いっぱいに 建仁のお尻(下着越し)と鍛えられた脚 が飛び込んでくる。

(…………っ!?)

あまりにも近い。

そして、思わず見惚れるほど、綺麗に鍛え上げられた筋肉。

力強く、しなやかで、動くたびに各部位がきゅっと引き締まる。

美瑩の呼吸が、少し荒くなる。

(……触っても、いいよね?)

そっと手を伸ばし――

指先で、太もものラインをなぞった。

「そうか……?」

外から護衛の低い声。

「んむっ?!」

建仁が変な声を出す。

建仁ジエン・公子?」と護衛。

「だ、大丈夫です。ただ……急に寒気がして……」

建仁は必死に取り繕うが、美瑩はそんなこと気にしていられなかった。

なにせ、建仁の太ももがすぐそこにあるのだ。

その固さ、温かさ、形の良さに手が勝手に動く。

――いけない。

――いけない気がする。

(でも触りたい……いや、触ってる……)

建仁が変な声を出しているのも、当然だった。

おそらくそのせいで護衛はなかなか納得せず、雨戸を閉めずに何度も話しかけてくる。

美瑩は会話を聞こうとするが、目の前の“太もも”の誘惑が強すぎて、

思考がまともに働かないのだった。

(や、やめたほうがいいのはわかってるけど……でも……建仁の太ももが、こんなところにあるんだよ?

 ここで触らないなんて、逆に失礼じゃない? ね? 絶対そうだよね?)

「……ふむ。そうか。」

外の護衛がそう言うと、美瑩は息を呑んだ。

雨戸が閉まる音を今か今かと待ちながら――

手は、まだ建仁の太ももに置いたまま。

冷たい指先に、彼の温もりがじんわり伝わる。

メイ……もう出てきていいよ。」

「んー。でも……ここ、居心地いいんだもん。」

「うっ……そ、それは困る……。」

「うそだよ。」

布団からそっと顔を出して微笑む。

しかしその笑顔はすぐに消え、胸の奥からじわじわと恐怖がこみ上げてくる。

(……また、あの夢のせいだ。)

さっき見た悪夢が、まだ脳裏にこびりついて離れない。

建仁の顔を見れば見るほど、不安が膨らむ。

「メイ……?」

戸惑う建仁の声。

美瑩は何も言わずに彼に抱きつき、顔をお腹に埋めた。

「……建仁。私のこと、好き?」

困惑しながらも、建仁はすぐ答えた。

「好きだよ。言わなくてもわかってるだろ?」

「ずっと……ずっと好きでいてくれる?」

「もちろん。」

「……私のこと、嫌いにならない?」

「なるわけないよ。」

その問いの意味がわからないはずなのに――

建仁は、ひとつひとつ丁寧に、落ち着いた声で答える。

建仁が美瑩の髪に指を通すと、美瑩はきゅっと足の指を丸めた。

その仕草は子猫のようで、されるたびに胸の奥があたたかくなる。

「……私も、建仁のこと……嫌いになんて、絶対ならない……

 だって……大好き。大好きなんだもん……」

声はくぐもっていたが、本音が全部溢れていた。

やがて呼吸がゆっくりになり――

美瑩はそのまま建仁の腕の中で眠りに落ちた。

その夜の夢は、とても優しいものだった。

星々を旅する若い男女の、幸せな夢だった。

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