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第13話 強さが地位を決める

鍛錬だけが、俺たちの勉強じゃない。


父上からもらった丹薬を大事に箱へしまい込んだあと、俺とメイインはそれぞれの授業へ向かった。


俺の授業は――礼儀作法、地理、算術、読み書き。


ウー一族の跡取りとして、いつか父上の後を継ぐための基礎教育だ。


……もちろん、「誰にも地位を奪われなければ」という前提付きだけど。


本来なら、俺もすでに政務や財務の勉強を始めているはずだった。


ウー一族はザン市とその周辺の土地を治めている。


いくつもの農地や牧場、薬草の栽培地を管理し、収穫物を商王国の都へ出荷するのが一族の主な役目だ。


だが、俺はまだ“子供”で――しかも“弱い”。


だから今は、最低限の授業しか受けさせてもらえない。


とくに礼儀作法の授業は、地獄そのものだ。


人の“力”や“地位”、“年齢”によって、立ち居振る舞いがすべて変わる。


座り方、歩き方、話し方――さらには食事の仕方まで、厳密な決まりがある。


たとえば、父上と食卓を囲む時。


父上は年長で、族長としての地位も上だ。


その場合、俺は父上が箸を取るまで一口も食べられない。


そして、話しかけてもいけない。


父上から話題を振られた時だけ、返事をする。


これが「礼」だ。


……そして、それがどれだけ息苦しいかも、痛いほど分かる。


もし相手が父上よりもさらに地位の高い――


たとえば、商王国十四州を支配する“十四貴族”の人間だったら。


想像しただけで、胃が痛くなる。


「皆もすでに理解していると思うけれど――人の“地位”というものは、財力だけで決まるものではありません」


講義の壇上で、透き通るような白い肌の女が口を開いた。


「それは“力”によって決まります。個人の力、そして一族としての力。その両方が、地位を形作るのです」


彼女の名は――ウー・タオフア。


父上の第二夫人だ。


俺は正直、彼女のことをほとんど知らない。


一族の誰もがそうだ。


どこから来たのか、どうして父上と結婚したのか、詳しく知る者はいない。


けれど、彼女の強さと知識だけは誰もが認めていた。


噂では、一族の長老たちに匹敵する力を持つという。


つまり――魂魄境の第八、もしくは第九小境界。


父上が修羅境の第一小境界でザン市最強の男と呼ばれていることを考えれば、それは驚異的な実力だ。


「一族の力が国の地位を決めるのは当然のことです」


タオフア夫人は教室の中をゆっくり歩きながら、淡々と続けた。


「強い一族ほど、国の中で発言力を持つ。

皇帝陛下は、強大な一族や家門の力を頼りに、王国の安定を維持しておられるのです。

もし他国が侵略してきたなら――その最前線で戦うのは、我ら“氏族”の務めなのです」


「じゃあ、宗門はどうなるんですか?」


ウー・ヨンが手を挙げて尋ねた。


この授業に出ているのは、俺とウー・ヨンの二人だけだ。


どちらも父上――武悠士の子であり、いずれ一族の族長となる可能性を持つ者だからだ。


もちろん、今のところ俺の方が“本妻の子”という点で有利だ。


だが、最終的に族長となるのは――“強い方”。


それがこの世界の絶対のルールだった。


この世界では――力こそがすべてだ。


ウー・タオフアが教えているのは、まさにその一点に尽きる。


「宗門は、氏族よりもはるかに強大です」


タオフア夫人はそう言いながら、わずかに鼻をひくつかせた。


まるで何か嫌な匂いでも嗅いだような表情だった。


「なぜなら、宗門は一つの家や血筋だけで構成されているわけではありません。

複数の家門、氏族、そして有力な個人が力を合わせ、さらなる強さを求めて作り上げた共同体なのです」


彼女の声には冷たい響きがあった。


「ですが――それだけに、宗門は一枚岩ではありません。

多くの思惑や派閥が絡み合い、私たち“家族”のような結束力には欠ける」


足音を響かせながら、タオフア夫人は教室をゆっくり歩き回る。


「とはいえ、この世には“国よりも強大な宗門”も存在します。

そうした宗門に一族の者が加入すれば、それだけで莫大な名誉と利益を得られる。

ゆえに、多くの家門が子弟を宗門へ送り出そうとするのです」


――この人、宗門のことが嫌いなんだな。


そう感じた。


理由までは分からない。


けれど、その声色には明確な“軽蔑”があった。


……もっとも、怖くて本人に聞く勇気なんて俺にはなかったけど。


「じゃあ、僕たちも宗門を目指したほうがいいんですか?」


ウー・ヨンが質問する。


タオフア夫人は即座に首を振った。


「理論上はそうでしょう。

だが――現実的には難しい」


その冷淡な声には、一片の迷いもない。


「宗門がこんな田舎に目を向けることなどありません。

ザン市は小さすぎるのです。

せいぜい目指せるのは、商王国帝立学院――王家が運営する、王都直属の学舎でしょう。


彼らは年に一度、地方で入学希望者の試験を行います。

お前たちの父――武悠士も、かつてその学院に在籍していた」


その言葉に、教室の空気が少しだけ重くなった気がした。


父上の背中の遠さを、改めて思い知らされるようだった。


商王国帝立学院――


それは、王家直属の教育機関であり、宗門に近い存在だった。


主な目的は、外国の侵略に対抗できる強力な修練者を育てること。


王家の支配下にあり、学院の中にはいくつもの有力な家門が籍を置いている。


ただし、そのほとんどは王都に住む貴族階級の者たちで、俺たちのような地方の氏族とは無縁の世界だ。


ウー・タオフアは言っていた――


族長の座が決まった後、俺かウー・ヨンのどちらかが、この学院へ入学する可能性がある、と。


けれど、条件は厳しい。


入学できるのは飢餓境に到達した者のみ。


つまり、少なくとも十八歳になるまでは話にならない。


授業が終わると、俺とウー・ヨンは無言のまま別れた。


互いに目も合わせず、ただすれ違うだけ。


あの兄の背中を見ていると、胸の奥にざらりとした焦りがこみ上げる。

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