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書の稽古

俺は正座し、呉桃花と父上――**父親フーチン**の厳しい視線を受けながら、黙々と書の稽古に励んでいた。

竹筆を硯に浸し、余分な墨を落としてから、慎重に、そして正確に筆を運ばせる。滲みや線の歪みが出ないよう、細心の注意を払う。頭では分かっていても、一直線を保つのは思った以上に難しい。

「一族の当主たる者、書が乱れていてはならん」

父上は腕を組み、俺の背後に立ったまま言う。

「商人、他の一族、そして皇族へと書状を送る機会は多い。筆致が拙ければ、それはお前自身だけでなく、呉一族の評価をも落とすことになる。だが――書は単なる意思疎通の道具ではない」

父上の声は低く、しかし重みがあった。

「書には芸術性があり、さらに言えば、修行の一環でもある。強き修行者であれば、筆に己の意志や概念を込めることができる。それによって功法や技は後世へと伝えられるのだ。筆致が正確であればあるほど、意志を巻物に刻みやすくなる。分かるか、剣?」

「分かります、父上」

そう答え、俺は筆を止めることなく、引き続き一画一画に集中した。

技の巻物や修行法は、気を用いて知識や理解を紙に刻み込むことで作られる。

たとえば、敵を押し潰すような気掌を生み出す技を残したいなら、筆に気を通し、墨と共にその理を描き出さねばならない。十分な才能を持つ者であれば、その書を読むだけで技を学ぶことができる。

もっとも、技や修行法の創出には多くの条件がある。

何より――気を扱えることが前提だ。

俺の知る限り、膨大な気を必要とするため、少なくとも阿修羅境に至った者でなければ、技の巻物を作ることすらできないらしい。

とはいえ、どれほど高尚な理屈があろうと、字が汚ければすべて台無しだ。

俺はさらに三十分ほど筆を動かし続け、その後は父上から一族当主としての責務についての講義を受けた。

一族を率いるというのは、想像以上にやることが多い。

交易方針の決定。

どの一族や商会と手を組み、どこを避けるか。

力を入れるべき事業の選定。

魔獣討伐や警戒のための巡回経路とその時間割――。

考えるべきことは山ほどあり、正直なところ、これだけの仕事をこなしながら修行の時間を確保している父上が信じられなかった。

「今日はここまでにしておこう。もう下がってよい」

ようやく父上がそう言った。

内心では歓声を上げたが、もちろんそんな素振りは見せない。

俺は静かに立ち上がり、父上に一礼し、それから呉桃花にも頭を下げて部屋を後にした。

自分の住まいへ戻ると、見慣れた二人の姿が縁側にあった。

冷やした茶が入った杯が三つと、黒胡麻のおにぎりが並んでいる。

「すっかりくつろいでるみたいだな」

「剣、剣! おかえり! 今日はボボにやっと解放してもらえたの?」

呉美影が弾むような声で言う。

「おにぎりと冷やし烏龍茶があるわよ。飲む?」

今度は侯静淑が続けた。

「ぜひ」

そう答えて、俺は二人の間に腰を下ろした。

そのあとは、何をするでもなく、ただ二人と一緒に過ごした。

――やっぱり、この時間が一番落ち着く。


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