12 ハロウィン2
麻子と真司の物語、昨年のハロウィンのエピソードのもしも、バージョンです。
もしも、ハロウィンに海に行けていなかったら……の話です。
「今度の日曜日にツマに釣りに行こう」
昼休みの図書室で真司が麻子を誘った。
(今度の日曜日はハロウィンなのに釣り? 真司はハロウィン知らないのかな?)
麻子は怪訝に思った。
(そうだ、それならサプライズね)
「じゃあ、真司のお弁当も作っていくね」
ー☆ー
ハロウィン当日。
桜ヶ丘町一丁目のバス停で。
「麻子、遅いな。10時に待ち合わせしたのに」
真司は腕時計を見る。しばらくすると、麻子と乗るはずだった、シーサイドタウン行きのバスが通り過ぎてしまった。
真司は、麻子の家に行った。このバス停から、麻子の家は近い。
ピポーン!
真司は、麻子の家のインターホンを鳴らした。
「あら、仁川君!」
麻子の母親が出てきた。
「麻子さん、いますか?」
真司がすかさず訊く。
「それが、麻子、今朝、熱が出て、今、自分の部屋で眠っているわ。今日は、麻子とツマに行くはずだったのよね。あの子もお弁当作り張り切っていたのに……。ごめんなさいね」
真司はびっくりしたが、そういうことならと思い、少し残念だったけど思い直した。
「あの、麻子さんが起きた頃にまた来ても良いですか? お見舞いに」
「良いけど…あの子も喜ぶわ」
麻子の母親は妙案だという具合に言った。
「それじゃあ、俺、出直してきます」
真司は釣り道具を片手に、麻子の家を出た。
ー☆ー
「ほら、お弁当、開けてみて」
「どれ、どれ……」
ツマの海で真司が麻子のお弁当のタッパーを開けようとすると、ジャックオーランタンのカボチャサラダのはずが、黒い渦を巻いて、真司に飛びかかろうとした。
「わたし、こんなの作ってないー!……」
麻子が叫んで目を覚ますと、そこに真司がいた。
「麻子、大丈夫か? かなりうなされてたけど」
麻子は自分の部屋のベッドに寝ていて、真司がいることに驚いたが、さっきのは、夢だったと認識して、自分の頬を両手で叩いた。
「夢か。びっくりしたー。夢もびっくりしたけど、真司がいるんだもん」
「そんなことより、熱は大丈夫なのか?」
「うん、熱冷まし飲んで眠っていたら、熱が下がったみたい。でも、電話もかけないでごめんね。薬で眠っていたから」
「そんなこといいよ。麻子が無事なら」
「ごめん、釣りもダメになったね。ハロウィンのお弁当作って行こうと思ったのに」
「いいよ。釣りならまたいつでも行けるよ」
真司はやさしく微笑んだ。
「今日は、ハロウィンだよな」
「真司、知ってたんだ」
「まあな。急きょ変更になったので、こんなものしか用意できなかったけど、ハッピーハロウィン!」
といって、真司は紙袋から、オレンジを三つと、魔法瓶を取り出した。真司は魔法瓶から、ふたのコップに注いで麻子に渡した。
「わあー、ホットチョコレートとオレンジ!」
「そうだよ。色的に、ハロウィン」
と、真司はニコッと笑った。
「ありがとう、真司。ツマには行けなかったけど、素敵なハロウィンになったわ」
麻子は、真司の温かさに触れて、体調もよくなるんじゃないかと思った。
二人は、突然のアクシデントにもめげずに楽しくハロウィンを過ごした。




