第一幕 研究への不安
とある村には日ノ巫女と月ノ巫女という二人の巫女がいた。
日ノ巫女は村の豊作を願い、月ノ巫女は村を襲う妖を退治し浄化を担う役目があった。
二人の巫女のおかげで村は平穏が保っていたそんなある日のことである。
月ノ巫女が妖を式に下した。
烏、狐、狼、蛇、鬼の五体。
人外ゆえに人々は恐れ、そして、魅了された。
五体ともこの世のモノとは思えぬほどの美貌を持っていたからだ。
月ノ巫女は五体とともに妖を屠っていたが日ノ巫女はそんな妖達の魅力に惹かれてしまった。
彼女は月ノ巫女に妖達を自身に下すように命じたのだが、それを拒んだ。
曰く、式に下った妖達はどれもが凶悪であり、この小さな村なら一瞬にして滅ぼせるほどの力を秘めしているという。下る際に妖達ととある条件を結んで従えているという。その条件が彼女では無理だと言った。
だが、日ノ巫女はどうしても妖達が欲しくて堪らなかった。
故に惨劇を招くこととなった。
月ノ巫女が殺された。
殺したのは日ノ巫女によって唆された村人たちだ。
月ノ巫女が実は妖達を使って村に災いを招いている。
巫女を殺せば、村は永久に平穏が訪れるであろうと言われて、それを信じた村人たちによって惨殺された。
巫女は最期まで村人たちには攻撃をしなかったという。
死体となった巫女の周りに群がったと思ったら、その体を食べ始めたのだ。
そう、これが巫女と妖との条件である。
強力な力を秘めしていた巫女は妖達にとってはご馳走であり、脅威となるモノだった。
巫女が死ぬまで式へと下り、死んだらその体を好きにしていいという条件。
烏は巫女の脳を。
狐は巫女の腸を。
狼は巫女の四肢を。
蛇は巫女の両目を。
鬼は巫女の心臓を。
骨さえも全て喰われた。そして、妖達はそれだけでは満足できなく、次は村人たちで遊び始めた。
あるモノは快楽に溺れさせて。
あるモノはあらゆる賭けで欺いて。
あるモノは嬲り嬲って。
あるモノは人と人同士で争わせて。
あるモノは引き裂いて。
村人が惨殺される様を日ノ巫女はそれをただ見ていることしかできなかった。
彼女には妖を祓う術を持っていないのだ。
殺し尽くす妖達だったがとある法師が村を訪れ、その惨状を見てしまった。そして、かの者によって妖達は玉に封じられることとなった。
生き残った村人たちに対して法師はこう言った。
『月ノ巫女を祀る祠を村の中央に、妖達を封じた玉を周囲に埋めてその上に塚を立てなさい。そして、この悲しくも恐ろしいこのことを語り続けなさい』
こうして、今現在も存在する『姫塚村』が誕生した。
「伝承によると塚や祠を壊すことは禁じられ、年に一度、祭事を行うこととなっています。今回はその祭事に関しても研究をしましょう」
とある大学の講義室。
ゼミ生たちが教授である男性からこの伝承である『巫女塚伝説』を研究することとなり、五人のゼミ生は教授から日時と内容が伝えられ、解散となった。
「ああ、そうだ。小野寺さん」
教授である男性がゼミ生の一人に声を掛ける。
黒髪のロングヘアに茶色の瞳、至って普通顔と言われる顔立ちをしている。
ロングスカートにニット姿。
彼女の名前が小野寺涙。
「何ですか?深山先生」
茶髪の肩まで伸びている髪をヘアゴムで一つにまとめて、眼鏡をかけた男性。
端正な顔立ちをしていることから女子生徒に人気だ。
『民俗学』の教授、深山千歳。
「すみませんが村に行くための準備がしたいので手伝っていただけませんか?」
「え、えっと、他の子たちに……………」
チラッと他のゼミ生を見るが誰もこちらを見ようとしない。
誰も手伝いたくないようだ。
断りづらい状況に彼女は内心溜息をついた後に分かりましたと頷いた。
「助かります。では、準備室に来てもらえますか?」
にこっと笑みを浮かべた深山に対して、この教授は絶対に猫を被っていると思った涙であった。
そして、ゼミの研究の為に村に向かう当日となった。




