【Xの生い立ち】目覚め
Xが目覚めたのは、○○県にある軍人専用病院の北向きの薄暗い病室だった。
細い窓の向こうには鬱蒼とした杉林が広がっている。
かすかに山鳥の鳴き声が聞こえた。
Xはベッドに寝転んだまま、額に手を当てた。
眉間の少し上がわずかに凹んでいる。
彼は宙に漂うわずかな薬品臭から、この場が病院であることが察せられた。
電源スイッチ脇の「電気節約」の墨文字や、白塗りの壁の仕上げ方、大陸とは異なる心地よい空気の湿度などから見て、本土に戻されたらしい。
「おじゃまいたしまっす」
扉が開いて、若い看護婦が入ってきた。
見習いだろうか、黄土色の袴でほっそりした胴を締めている。
化粧っけはないが、そばかすの散った顔には素朴な美しさがある。
看護婦は掛け布団をはぐと、しびんを片手にXの下半身に手を伸ばした。Xはいまさらながら、上は寝巻きを着せられていたものの、下は裸であったことに気づいた。
「相変わらずでっかいわ〜」看護婦はつぶやきながら古いしびんからXのモノを抜くと、新しいしびんに差し込もうとした。だが、Xのモノが大きすぎるせいか、なかなかうまくいかない。そうこうするうちに、モノがふくらみ、完全にびんの経口と合わなくなった。
看護婦はしばらく黙ったのち、しびんを床に置いて、部屋の鍵を閉めた。
「へへ」といいながら、袴と下着を脱ぐとXの身体にまたがった。Xのモノを隠部に擦りつける。やがてモノが濡れる感覚があった。看護婦は目を閉じ、あどけない頬を真っ赤にしている。それから、彼女はゆっくりと身を沈めた。巨大なモノを収め切ると、満足げに唸る。
看護婦はゆるやかに腰を上下させる。
服の袖を噛んで声を殺している。
やがて、身体をぶるりと震わせると、Xに身体を預けるようにして倒れ込んだ。
Xは不満だった。
彼は達していない。
両手で看護婦の小さな腰を掴むと、下から猛烈な勢いで抽送を開始した。
看護婦は「え?え?え?」と慌てる。
彼女はXから身体を離そうとしたが、Xは彼女の胴体をがっちりと押さえつけている。
看護婦が「ひっ」といいながら、また達する。だが、Xは止まらない。看護婦は疑問の声と嬌声を交互にあげながら、身体を痙攣させ続けている。
Xは鉄工所の大型作業機械のように腰を打ちつける。
ぴしゃびしゃという音が結合部から聞こえてくる。
これが性行為いうものか。Xはいまさらながらに、自分が初めて女としていることに思い当たった。
肉体的な快も、精神的な快も強く感じる。
それでいて、Xの頭の片隅は、少し冷めた感じで「この看護婦はわしが目覚める前から、わしを使っていた。となると、わしは既に童貞を失っていたことになる」などと考えていた。
Xは限界に達すると、看護婦の尻を掴み、彼女のなかに盛大に精を放った。看護婦は気をやりすぎてすでに意識を半ば失っていたが、その身体は貪欲に収縮を繰り返した。
Xは看護婦の身体を抱えると、彼女を己の巨体の下に組み敷き、さらに二度性行した。途中で、彼女が意識を取り戻した。「なに?なんなの?どうなってるの?」といいながら、また前後不覚に陥った。
まだ精は残っている感覚があったが、精神的には落ち着いた。
Xは看護婦から己のものを抜くと、病室の床に立った。
手足を伸ばし、回し、その場で飛んでみる。
どの程度寝込んでいたのかは分からないが、身体は以前同様に動いている。とくだんの衰えはない。
だが、これはなんなのか。
自分の体調を確認しようとするこの行為。
わしはこのようなことを考えつく人間だったのか?
これまでのわしは、牛のように何も考えずにぼうっと寝ていたはずだ。
Xは自分の頭をなでた。
いつになくスッキリした感じがあった。
堰き止められ、澱んでいた川が急に流れ始めたような気分だ。
「体調」「行為」さきほど、この二つの単語を思い浮かべたが、以前の彼はこうした言葉を耳にしたことはあっても、自分で使いこなすことはできなかった。意味がわかっていなかったからだ。いまは完璧に理解している。
いや、単語だけではない。すべてが理解できる。
あらゆるものとつながっている〝感じ〟がある。
いまいる部屋の床、壁、窓の外の木々、空、太陽、何もかもが自分であり、自分は何もかもである。
愚鈍であったころも、こういう感じはまれに降りてきていた。
だからこそ、自分は泥まみれの田んぼ仕事も何ら苦ではなかったのだ。
瞬間瞬間に生の喜びを感じ、それだけで人生に満ち足りていた。
だが、いまのそれはあのころの〝感じ〟よりずっと強い。
Xはベッドの上の看護婦を見た。
小さな尻がふるふると痙攣している。
Xは彼女との間に強いつながりを感じた。
この感覚は性行為と無関係ではないだろう。
精はまだ残っている。
彼はうつぶせの看護婦にまたがると、再度、彼女に押し入った。




