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陰獣X  作者: 白色矮星
第二部 暗殺者
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【教団拡大】神霊

新聞社による学舎批判は三ヶ月余りも続いた。


どの新聞社も、Xが女子大生をはじめとした女性たちに手をつけ、果ては人妻に己の子供を産ませていると正確に報道した。


情報源はXから捨てられたも同然の妻たちだった。

嫉妬に狂い、新聞社にたれ込んだのだ。


Xは激怒し、彼女らを学舎から追放した。

全員、年増になり、格別の技能も持たない女たちばかりだ。

生活に行き詰まるのは想像に難くない。

Yは密かに彼女たちに生活資金を差し入れたが、たちどころにXにバレてしまった。Xは単なる淫蕩坊主ではない。悟りの力があり、他者の心理状態を見抜くことに長けている。


資金援助は打ち切られ、妻たちは困窮した。

何人かは雑誌社にXの非道を訴え、何回か特集が組まれたが、そこまでだった。


Yが行っていた幾多の政治献金が功を奏し、警察は動かなかった。


学舎についての報道は埋もれ、やがて世間から消えた。

脱会者はほとんどいなかった。

YはあらためてXの威光に心腹した。

Xは本物の救世主なのだ。

マスコミが何をいおうと、真理に触れた信者たちが逃げることなどありえない。


その後も信者は順調に増え続け、危機も次々に訪れた。


昭和○○年、三十歳のとある女性信者が、自身もまたブッダであると主張し、神がかりとしか思えない預言や心霊治療を行ない始めた。女は悩める信者の心奥を事もなげに言い当て、トラウマを解消し、身体的な不具をも治癒して見せた。


Yは、悟りを開いた人間が得られる超人的な観察能力と、プラシーボ効果の一種ではないかと感じたが、ともかくも一般信者は女をXに並ぶ本物と認めた。このまま放っておけば、いつぞやのように組織が割れる。悩めるYに対し、Xはさらりと問題を解決してみせた。女を正妻として迎えたのである。悟りの深度はXにおよばないが、ブッダとして認められる存在だ。カリスマ二人が手を取り合ったことで、学舎はさらに巨大化した。


昭和○○年、とある出版社が学舎に対する糾弾キャンペーンを張った。被害者団体と手を組み、過激な記事を証言や写真とともに次々に雑誌に掲載する。前回のマスコミによる攻撃と異なり、この時は脱退者が続出した。組織が大きくなりすぎた結果、Xの威光に直接触れたことのない信者が大勢を占めるようになっていたからだ。この年の11月、出版社が爆弾テロの被害に遭った。警察の必至の捜査にも関わらず、犯人は検挙できなかった。以降、出版社の記事はあらゆる方向に対してどこか甘いものとなり、学舎への追求も尻すぼみとなった。


昭和○○年、警察内の一部捜査員が、上層部の意向を無視してXの逮捕に向けて動き始めた。Xの元妻たちや元信者の証言を丹念に集め、ついに裁判所に令状を申請する寸前にまで辿り着いた。Yは政治家を動かし、指揮をとっていた諸県を他県の幹部待遇に昇格させた。その上で、諸県が学舎と通じているという噂を流させた。捜査班は空中分解した。


昭和○○年には信者数が百万人を超えた。金は無限とも思えるほどに集まり、Xの影響力はときの大臣をも動かすほどとなった。じっさい、国会議員のうち十数人が、選挙協力への期待から密かに学舎の信徒となっていた。


Xの女癖の悪さも止まることを知らなかった。信者のなかから美貌の処女を数十人献上させ、妊娠させては男性信者に下賜するようなことを繰り返した。Xの子供は公なったものだけで二十人を超えたが、じっさいは数百人以上に上った。


もちろん、Xの遺伝子、悟りやすい形質が広まることは何よりの救いであるが、学舎の力が増すに連れXは暴走しがちになった。信徒ですらない女性芸能人などに目をつけたときはたいへんなトラブルとなったし、現役の暴力団体の幹部の妻に手を出して、あやうくカチコミを食らう寸前まで行ったこともある。


その都度、YはXをいさめた。学舎のなかでそれができるのはYだけだったからだ。ほかの人間はX自身が神同様の存在だと思っているが、Yはあくまでも Xはそうした存在の依代ではないかと考えていたからである。むろん、依代としてのX自身も偉大であるが、人間的な部分が欲のままに悪さをすることもある。そこは誰かが押さえてやらねばならないのだ。


Yの組織運営の巧みさもあり、何もかもが盤石になったと思えた昭和○○年、Yは「聖典編纂室最高顧問」を役を命じられた。


名前こそ仰々しいが、その実態は完全なる閑職だった。




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