【Yの告白】釈放と再逮捕
Yは共産主義者であることを辞めた。
いや、正確には現在日本における共産主義からは離れた。
Xの神性を認める以上、たとえXの「観音様」が関わったものだとしても、神を否定する組織にはいられない。
面会に来た仲間に脱退の意思を告げると、相手は激昂し、おおいに嘆いたが、Yに対しては何もできなかった。もとよりYは檻の中なのだ。
Yが「転向」したことは、またたくまに刑務所内に広まった。看守たちは意固地なアカを人の道に戻したとして賞賛され、Yへの風あたりも多少は和らいだ。
その日、食堂で、雑穀の雑炊を食べながらXがいった。
「使命? わしに仕えることがYさんの生まれてきた理由だってのかい?」
「そうです。わたしの能力はあなたのためにあります」
はっはっは!とXが朗らかに笑う。
「Yさん、あんたつい先週までわしの話をなんも信じとらんかったじゃないか。いったいどういう風の吹き回しなんだ?」
「いったでしょう? この目で見れば信じると。わたしはあなたに神の奇跡を見たんです」
「奇跡? いつ?」
「それはお答えできません」
「けちくさいなあ。ま、いいか。あんたのような学士さまの知恵を借りられるってのなら万々歳だ。あんたにはぜひ手伝ってもらいたいことがあるんだ」
「なんなりと」
Xはアルマイトの器をつかむと、がっと雑炊をかっこんだ。口の周りについた汁を太い腕で拭う。
「経典を作ってほしい」




