幽霊
生まれつき、俺は幽霊が見えた。
幽霊っていうのは分かりやすくて、煙みたいに体が揺らいでいる。
しかもそいつらは人に紛れて普通に街中を歩いてる。
けれど、幽霊と話すことはできない。
幽霊同士が話しているように見えても、内容は聞こえない。
そんな時、明らかにこちらに手を振っている幽霊がいた。
思わず手を振り返すと、みたことがないくらいいい笑顔でこっちに寄ってきた。
相変わらず何言ってるかはわからないが、身振り手振りでコミュニケーションを取るその時間がすごく楽しかった。
気がつくと俺はクラスの友達より、そいつを優先していたかもしれない。
そんなある日、目がさめるとそいつの言葉がわかるようになった。嬉しくなって、一日中ずっと話していた。
その時、不思議といつもはうるさいくらいだった外の話し声が一切聞こえなかった。
そろそろ学校にでも行こうかと思って立ち上がると、そいつに止められた。でも休むのも1日くらいにしないとまずいしと思い、鏡を見ると、
そこに俺は写っていなかった。
それの影響で思い出す。自分が帰り道に車に轢かれていたことを。
不安そうにそいつが寄ってきたが、突き飛ばしてしまった。
そして、
「幽霊になると、揺らぎやすくなるんだよ。」
そう、言われた。