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第8話:力量

「あの声は……ラウドボイ君たちだよな?」

「ええ、間違いないでしょう。彼ら以外には考えられません」


 洞窟の奥に急ぐ。

 叫び声とともに咆哮も聞こえるから、激しい戦闘になっているのだろう。

 彼らが怪我をしていなければいいが……。

 曲がった道を抜けると、巨大な空間に出てきた。

 天井は高く、広場のような場所だ。

 そして、その中央では……。


「ちょ、ちょっと待て! 体制を整える時間をくれ! だから、待ってくれって!」

『ゴルァアアァ!』


 全身から鍾乳石が生えているようなドラゴンが暴れ、合計三人の男性が跳ねるように逃げ回っていた。

 ケイブドラゴンとラウドボイ君たちだ。

 たぶん、無謀にも突撃したんだろう。

 隊列も何もあったもんじゃない。

 思った通りというかなんというか、予想が当たってしまったな。


「このまま見殺しにしましょうか。我々が着いたときにはすでに死んでいた……とサラさんたちには伝えることにします」

「いやいや! さも当然のように言わないで!」

「皆さん喜ぶと思いますが」


 リリアントは何の感情もなく告げるのだが、見殺しするのはさすがにまずい。

 彼らだって生きているのだ。


「おーい! ラウドボイ君! こっちに来い! 助けに来たぞー!」

「逃げるならこちらへどうぞー」


 必死に呼びかけ(リリアントはやる気なさそう)ていると、ラウドボイ君たちは俺たちに気がついた。

 走ってくるかと思いきや、例のシャウトボイスを叫んだ。


「うるせえよ、おっさん! そこで俺たちの活躍を見てやがれ! 指をくわえてなぁ! ……うわあああ!」

『ガルゥ! グルァ!』


 ケイブドラゴンが茶色い火球を放ちまくり、ラウドボイ君たちの言葉は途中で途切れてしまった。

 ヤツのブレスは、当たると鍾乳石が生える。

 関節などを狙い、動きを止めたところでゆっくりと食すのだ。

 ラウドボイ君たちはどうにか躱せているみたいだが、地面はもう鋭い鍾乳石だらけだ。

 すぐにでも逃げ場がなくなってしまうだろう。


「ヤバい、ヤバい、ヤバい! おい、俺はハンバーストーン伯爵家の息子だぞ! 今すぐ攻撃を止めろ! お前なんかが襲っていい相手じゃないんだ……ぐああああ!」

『ガラァ!』


 ラウドボイ君はケイブドラゴンを叱りつけている。

 モンスターに言葉が通じるわけがないだろうに。

 瞬く間に、ラウドボイ君たちは片隅に追いやられてしまった。

 迫り来るはケイブドラゴンの大きな口。

 三人とも抱き合ったまま、ブルブルと震えている。


「「うわあああ! もうダメだ!」」

「<ハイエスト・ネオバリア>!」


 ケイブドラゴンが噛みつく直前、防御魔法を発動した。

 白い光の結界が、ラウドボイ君たちを丸く取り囲む。

 ガギンッ! という硬い音の後、ケイブドラゴンは弾かれた。

 Sランクの強力な結界だ。

 そう簡単には破れない。

 ホッとはしたが、ラウドボイ君は相変わらずシャウトボイスを張り上げる。


「なに邪魔してんだよ、おっさん! 手助けなんかするな! こんなやつ、俺一人で倒してや……お、おい、お前らやめろ!」

「「お願いします! 俺たちを助けてください! もう限界なんですよ!」」


 手下の二人はラウドボイ君を抑えつける。

 内輪揉めと言わなくもないが、彼らはバリアの中にいれば大丈夫だろう。

 さっさとケイブドラゴンを倒しちまおう。

 件の敵も、バリアを唱えたのは俺だと気づいたらしい。

 めちゃくちゃ怖い目で睨んでくるもん。

 暴れられて洞窟が崩れでもしたら大変だ。

 一撃で沈めよう。


「<エンシェンティア・レーザー>!」

『グッ……!』


 ドンッ! という重い衝撃の後、青白い光線がケイブドラゴンの胸を貫いた。

古代魔法による有無を言わせないほど強力な攻撃だ。

これもきっと、何かの武器……の一部なのだろう。

まだ転送することしかできないので、この辺りはもっと研究が必要だな。

 黒い砲弾はその岩石のように頑強な鱗さえ砕き、一発でケイブドラゴンの息の根を止めた。

 暴れ回っていたドラゴンは地面に崩れ落ち、どくどくと血を流すのみだ。

 ラウドボイ君たちは、ただただ呆然とその光景を見ている。

 リリアントだけは微笑みながら、俺の腕を掴んでくれた。


「さすがです、ロジェ師匠。あのケイブドラゴンを一撃で倒してしまうなんて。Sランクの冒険者でもそんな芸当はできないでしょう」

「まぁ、たまたま上手く発動してくれただけだよ」

「またご謙遜を。後で私にも古代魔法を教えてください」

「もちろんだ。さて、念のためケイブドラゴンの死体を確認するか」


 ピクリとも動かないし、瞳孔も開きっぱなし。

 完全に息絶えていた。

 胸の傷を見ると、周囲が焼きただれていた。

 リリアントが初めて表情を硬くする。


「宮廷魔導師として各地の戦場に渡ることがありましたが、こんな傷は私も見たことがありません」

「きっと、かなり強力な火属性の魔法なんだろうな」

「ケイブドラゴンの体表は金属とほぼ同等かそれ以上の頑強さを誇ります。それがこんなに溶けているので、相当な高火力だったかと……」

「……ふむ。傷の周囲だけもらえないか頼んでみるか。防腐処理を施せば研究材料に使えそうだ。さて、彼らは大丈夫かな」


 二人で結界の方に近寄る。

 ラウドボイ君と手下たちは、抱き合ったまま震えていた。

 防御魔法を解除し、ケイブドラゴンの討伐を伝える。


「ほら、もう大丈夫だ。怪我はないか?」


 手を差し伸べると、ラウドボイ君にビシッ! と弾かれてしまった。

 ……おじさんの心傷つくよ?

 さらにラウドボイ君は叫びまくる。


「う、うるせえな! 俺の手柄を奪ってんじゃねえよ! お前さえ来なければ上手くいってたんだ! それなのに余計な邪魔を……うごっ!」

「「本当にありがとうございました!」」


 手下の二人が頭を下げる。

 ラウドボイ君の頭も地面に抑えつけていた。


「俺たち、本当はこんなことやりたくなかったんです! でも、親がハンバーストーン家で働いているからどうしても逆らえなくて……命を救っていただき、本当にありがとうございました!」

「あなたのおかげで目が覚めました! こんな奴の言いなりになっていちゃいけなかったんです! これからは冒険者として一から頑張ります!」

「お前ら、何を勝手なことを……ぐああああ! だ、だから、抑えつけるな!」

「「こうでもしないとお前は動かないだろうが!」」


 暴れるラウドボイ君は(元)手下たちに引っ張られていく。

 俺はリリアントと顔を見合わせる。

 何はともあれ、街が危機に陥ることにならなくて良かったな。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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