第7話:懐かしのゴブリン退治
「ここが“ゾダの洞窟”か。ギルドからこんな近くに洞窟があるとは思わなかった」
「私たちが来たとき、入り口はツタで覆われてましたよね」
「こういうところにも年月の経過って感じるなぁ……」
ギルドから歩いて五分もすると、俺たちは大きな洞窟に着いた。
転送魔法で来てもよかったが、念のため魔力はまだ節約しておきたい。
案外、このクエストはちょうどいいリハビリになるかもな。
慎重に洞窟へ踏み込む。
リリアントの言うように、当時はツタで覆われ穴なんて見えなかったな。
入り口付近は日が差し込んで明るいが、奥に行くほど暗くなる。
壁に松明やランプの痕跡は見られるものの、全て壊されてしまっていた。
ゴブリンたちに壊されてしまったんだろう。
「明かりは私が灯します。<フロー・ライト>」
リリアントが呪文を唱えると、光の球が二つ現れた。
俺たちの頭上に浮かび、五歩くらい先まで照らしてくれる。
光量は常に一定で、俺たちの移動速度に沿って移動した。
これは基本的なCランクの魔法だが、それだけでリリアントの成長ぶりを感じる。
手練れの魔法使いでも光が点滅することが多いし、せいぜい三歩ほど先までしか照らせないはずだ。
「腕を上げたな、リリアント。非常に無駄がない魔法だ」
「いえいえ、ロジェ師匠の教えのおかげですよ」
彼女ならきっと洞窟全体を昼間のように照らすこともできるが、ケイブドラゴンを刺激しないように、ということだろう。
さて、少し慎重に立ち回った方がいいかもしれないな。
「ラウドボイ君と卵の件があるけど、まずはゴブリンを先に討伐しようか」
「そうですね。後で難癖をつけられても面倒ですし」
注意しながら歩を進める。
ゴブリンは元々開いている小さな穴などを根城にすることが多い。
洞窟なんてもってこいだな。
『ゴブ!』
数十歩ほど歩くと、鳴き声とともに数匹のゴブリンが現れた。
探す手間が省けたな。
さっそく魔法で倒そうとしたとき、俺より先にリリアントが攻撃した。
「<ファイヤー・アロー>!」
『『ゴッブッ……!』』
リリアントの杖から炎の矢が放たれ、ゴブリンの身体を貫き、ヤツらは地面に崩れ落ちた。
これもまたDランクの初級魔法。
だが、ゴブリン相手にはこれでいい。
オーバーキルしたって意味がないからな。
『『ゴブル、ゴブ!』』
壁の穴から、さらに数匹のゴブリンが姿を現す。
ご丁寧に、ラウドボイ君たちは全スルーしてくれたらしい。
こいつらもリリアントが即<ファイアーアロー>で処理する。
「相変わらず手際がいいな、リリアントは。俺が出る幕もないよ」
「ロジェ師匠の手を煩わすわけにはいきませんから」
リリアントは魔法を連発しても、複数の魔法を同時に使用しても、息切れ一つ見せない。
昔教えた心得を守ってくれているのだろう。
俺は効率重視で魔法を使うし、彼女にもそう教えてきた。
魔法は魔力を消費し発動するもの。
どうしても長期戦に厳しいことが多い。
だから、なるべく魔力の節約が大事なのだ。
まぁ、彼女くらいになると低ランクの魔法ならほとんど魔力は使わないと思うが……。
明かりに照らされ、ゴブリンたちの出てきた穴がキラリと光った。
「もしかしたら、すでに巣が作られてるかもしれない。探ってみよう」
「ええ」
彼らの巣には、金貨や宝石などが集まっていた。
おそらく、洞窟で採掘する住民から奪ったのだと思う。
ケイブドラゴンへの献上品だな。
物品には赤い血がついている物もあったので、怪我を負った人もいるかもしれない。
こいつらの血は緑だ。
巣――といっても小さな穴だが――の中を見たところ、他にゴブリンは見つからなかった。
「また巣を作らないよう、土の壁で塞いでおこう。<アース・ウォール>……こんな感じかな」
「……かなり硬いですね。これならゴブリンたちも掘ることはできないでしょう」
巣穴を覆うように、地面の土を盛り上げた。
表面はだいぶ硬くしておいたから、ゴブリンがまた巣を作ることはないと思う。
火や水で塞いでもいいが、これも洞窟の一部だ。
なるべく自然を壊さないようにしないとな。
金貨や宝石類は回収したので、ひと段落したらギルドに返却するつもりだ。
「さて、あとはケイブドラゴンだが……」
一応、勝負の前提条件であるゴブリン討伐はクリア。
しかし、まだ本題が残っている。
ラウドボイ君とのケイブドラゴン討伐戦。
正直に言うとめんどくさ……いや、何も言わん。
とはいえ、どうにかして穏便に事を済ませたい。
サラさんたちのこともあるし。
逆恨みされた挙句、ギルドの出資金を減らされたら、それはそれで困る。
「ロジェ師匠、まずは探知魔法でケイブドラゴンの状態を探ってはいかがでしょうか。ついでに、輩たちの行動も」
「たしかに、迷ってないでそうすれば良かった。<オール・サーチ>……」
というか、俺は(元)賢者じゃないか。
魔法を使わないでどうする。
洞窟内全域を調べるため、探知魔法を発動させる。
杖から放たれた青白い光が壁や天井を伝う。
ラウドボイ君たちがまだケイブドラゴンの元にたどり着いていないといいのだが……。
と、思った、そのときだ。
「うわああああ! 助けてくれぇ! なんでこんなすぐ出てくるんだよ! おい、お前ら! 俺の身代わりになれ!」
「「そ、そんな無茶言わないでくださいよ……ぐああああ!」」
えええ……。
まさかの、ラウドボイ君たちの叫び声が聞こえてきた。
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