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第5話:冒険者ギルドにて

「いやぁ、初めて来たときとはだいぶ様変わりしているなぁ」

「歳月の重さというものを感じますね」


 街は人々が行き交い、露店もたくさん出ており、活発な印象を受ける。

 以前訪れたときは、もっとこじんまりしていた。

 交易の発達とともに、街も大きくなったんだろう。


「ちょっと観光していくか?」

「観光もいいのですが、先に冒険者ギルドに行くのはどうでしょう。あの時もまずはギルドに行きましたし」

「たしかに。じゃあ、さっそくギルドに行こう」

「はい」


 俺たちは街の中心部を目指す。

 移転していなければ、冒険者ギルドは中央にあるはずだ。

 まだあの場所にあるかな……という小さな緊張を感じつつ歩を進めると、三階建ての建物が現れた。

 パリムスの冒険者ギルドだ。

 外観は少しくたびれているが、昔の知り合いに会ったような懐かしさを感じるな。

 入り口を開け中に入る。

 室内も全然変わっていない。

 というより、少しボロになっていた。

 椅子や机なんかは、俺みたいにくだびれている。

 まぁ、それもまた懐かしい。


「昔の知り合いたちはまだいるかな?」

「どうでしょう……ですが、もしいらっしゃったら私もお会いしたいです」

「よし、カウンターに行ってみるか」


 幼いリリアントを連れながら旅しているとき、各地で色んな人に出会ってはお世話になった。

 この旅で彼らとも再会できたら嬉しいな。

 緊張しながらカウンターに歩く。

 受付嬢たちはみな応対に忙しいみたいなので、奥の部屋に向かって声をかけた。

 カウンターの奥には、受付嬢の控室とギルドマスターの部屋があるのだ。


「すみませーん、受付お願いできますか?」

「はーい、ちょっと待っててくださいね」


 ソプラノな声が聞こえたあと、ギルドマスターの部屋が開かれた。

 現れたのは茶髪を肩くらいまで伸ばし、同じく茶色の目をした女性だ。

 俺と同い年くらいかな。

 きっと、仕事で入っていたんだろう。


「クエストの受注をお願いしたいのですが、いいですか?」

「はい、わかりました。ランクや依頼内容はどういったものがご希望で……」


 途中まで言って、女性は言葉を切った。

 俺とリリアントの顔を交互に見る。

 な、なんだ?

 やはり、おっさんと若い美女の二人組は怪しいということか。

 せめて俺があと十年若ければ……!

 心の中で葛藤していたら、女性は驚きのセリフを言った。


「もしかして……ロジェさんとリリアントさんですか?」

「「……えっ?」」


 どうして、俺たちの名前を知っているんだろう。

 まだ名乗ってもいないのに。

 疑問に感じていたら、女性はさらに言葉を続ける。


「覚えてませんか? サラです。何年前のことでしょうか、受付嬢としてお二人にお会いしました」

「「あぁ!」」


 名前を聞いて、俺たちは同時に思い出した。

 そうだ、この女性はサラさん。

 ギルドで一番お世話になった受付嬢だ。


「サラさん、お久しぶり! ごめん、全然気づかなかったよ!」

「ご無沙汰しております。お元気そうで何よりです」

「いやぁ、懐かしいですね! 私もまた再会できるとは思いませんでした! 今日はなんて良い日でしょうか!」


 俺たちはサラさんと握手を交わす。

 まさか本当に昔の知り合いに会えるとは。

 サラさんは受付嬢として、俺とリリアントに色々と世話を焼いてくれたのだ。

 冒険者たち憧れの人だったこともあり、年を取っても美人の面影が残っていた。

 再会を喜んだ後、サラさんに聞いてみた。


「当時のギルドマスターは……さすがに、もういないよね?」

「はい、もう高齢なので引退して久しいです。そして後任として、実は……私がギルドマスターになりました」

「「ええ!?」」


 またもや揃って驚きの声を出す。

 サラさんがギルドマスター。

 ……すごいな。

 ギルドマスターは元冒険者の人物がなることが多いが、受付嬢が就任することもあった。

 彼女らは実際にクエストへ行くことはないが、ギルドの運営に関しては冒険者よりも詳しい。


「サラさんならこれ以上ないほど適任だよ。他の冒険者たちも喜んでいるでしょう」

「私もロジェ師匠と同じ意見です。サラさんはいつも誰より働いていましたから」

「ありがとうございます。お二人にそう言ってもらえると自信が持てます。まぁ……ちょっとした問題はあるにはあるのですが……」


 不意に、サラさんの表情が曇った。

 心配になり、俺たちは尋ねる。


「何かまずいことがあるの? 俺たちで良かったら力になるよ」

「そうです。遠慮なく仰ってください」

「いえ、大丈夫です。別に大したことありませんから。そんなことより、さあクエストを選んでください! お二人のご活躍をまた見たいです!」


 サラさんは俺たちの申し出をかき消すように、明るい声で言った。

 心配は心配だったが、それ以上踏み込めるような雰囲気でもなかった。

 俺とリリアントは顔を見合わせると、クエストボードを見る。

 クエストを達成した後、また尋ねてみようと思った。

 ざっとボードを眺める。

 薬草の採取からモンスターの討伐まで、実に様々な依頼があった。

 これもまた当時と同じ。


「時は経っても、クエストの内容は変わらないもんだな」

「なんだか安心するような……不思議な感覚です」

「何かご興味のあるクエストはありましたか?」

「これがいいです」


 リリアントが指したのは、Eランククエスト。

 内容は“ゾダの洞窟”の入り口に住みだした、ゴブリンの討伐。

 これ以上ないほど初心者向けの簡単な依頼だ。

 “ゾダの洞窟”とは初めて聞くから、きっと新しく見つかった洞窟なんだろう。


「ゴブリンですか? リリアントさんとロジェさんなら、Sランククエストでも余裕だと思いますが……」

「これがいいんです。ロジェ師匠と初めて挑戦したクエストですから……」


 リリアントは小さな微笑みを受かベながら言う。

 サラさんもまた、穏やかな表情で眺めていた。

 すると、また別の依頼表を持ってきた。


「実は、ロジェさんとリリアントさんに頼みがありまして……」

「頼み? どうしたの?」

「“ゾダの洞窟”は最近見つかった洞窟なのですが、鉱石資源が豊富なこともあり、パリムスの大事な資金源になっています。ですが、少々厄介なモンスターが棲みついてしまったのです。……ケイブドラゴンが」

「ああ……なるほど……」


 ケイブドラゴンはその名の通り、洞窟に棲みつくモンスターだ。

 大変気性が荒い上に、貴重な鉱石を無尽蔵に食べてしまう。

 体が成長すると洞窟から出て街に降り、今度は人間を襲い始める。

 鉱石が食べられてしまうのもそうだし、何より住民の安全にとっても危険だ。

 見つけ次第、迅速な討伐が求められていた。


「“ゾダの洞窟”にいるゴブリンたちもケイブドラゴンの手下みたいな行動をしており、住民を襲っては金貨や宝石を奪うのです。しかし、ケイブドラゴンはAランクモンスターの中でも強いので、討伐に難儀しているんです」


 モンスターは互いに共生のような関係を結ぶことがある。

 今回の事例もきっとそうだろう。

 ケイブドラゴンに守ってもらう代わりに、金貨などを献上しているのだ。

 そういうことなら……と、俺たちは顔を見合わせる。


「ついでに討伐してきますよ。ケイブドラゴンならすぐ倒せるだろうし」

「ロジェ師匠なら片手間に倒してしまうでしょう。もっと早く言ってくだされば良かったのに……」


 俺たちがさらりと告げると、サラさんはポカンと固まった。

 ど、どうしたんだ?

 と思っていると、フッと静かに微笑みを浮かべた。


「ケイブドラゴンをついでに倒すなんて、そんなことを言えるのはロジェさんやリリアントさんくらいですよ」

「そうかなぁ」

「他の冒険者が聞いたら驚くなんてもんじゃないです」


 まぁ、たしかに難敵ではあるけどな。

 リリアントがいれば一瞬で終わるだろう。


「じゃあ、サラさん。受注の印を押してもらえるかな?」

「ええ、もちろんですとも」


 依頼表を差し出し、ポンと印を押してもらった。

 この光景もあの日と同じ。

 ノスタルジックだな。


「さっそくだけど討伐に行くか」

「ええ、そうしましょう。それでは行ってきます」

「お気を付けて」


 懐かしさを噛みしめながら後ろを振り向き、出口へ向かおうとしたときだ。


「おいおいおぉい! どうして、おっさんがこのギルドにいるんだぁ!? 俺様は許可なんて出してねぇぞ、おぉい!?」


 突然、若い男の怒鳴り声が聞こえてきた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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