第24話:次なる場所へ
「今回も世話になっちまったね、ロジェ。あんたがいてくれたから、オイラたちは農業ができているようなもんだよ」
「別に大したことはしてないよ。ただ魔法を使っただけ……それだけさ」
「謙遜するところもあんたの良いところだね」
翌朝、アドームを去る時間がやってきた。
俺とリリアントは、街の入り口でルイーズたちと別れの挨拶を交わす。
ギルドの面々もまた、寂しそうになりつつも見送ってくれていた。
「おっと、最後に火山灰と悪天候をどうにかしないとな。<エンシェンティア・アブソーブ>」
「私も手伝います。<ダスト・コレクト>」
リリアントと一緒に魔法を発動させる。
次々と火山灰が手元に集まってきた。
灰色の球体が大きくなるにつれて、空はどんどん青い面積が増える。
もちろん、街に積もった火山灰も漏れなく回収する。
数分も経たずに空中を漂っている火山灰は全て回収され、俺とリリアントの前に小さな灰色の山として集まった。
飛び散らないよう、水魔法で全体的に湿らせておく。
分厚い雲に覆われた空は晴れ、空気も爽やかだ。
喉にまとわりつくような感覚だって、キレイサッパリと消えてしまった。
「二ヶ月も曇っていたのに、一瞬で晴れてしまった! やっぱり、ロジェさんとリリアントさんはすごい魔法使いだ!」
「屋根や道に積もっていた火山灰も無くなっちゃった! 掃除しなくていいなんて嬉しい!」
「ありがとう、ロジェさん、リリアントさん! 奇跡を見せてもらった気分だよ!」
アドームの人々は驚嘆し、俺たちを褒め讃えてくれる。
ルイーズだけは驚かず、笑顔で佇んでいた。
「ロジェとリリアントなら、これくらい簡単にやっちまうよな。あの時と腕はまったく変わっていないね」
「いやいや、最近ようやく昔の勘が戻ってきたところさ」
「私はあの時より成長していると思いますが?」
「そうだった! リリアントはまだこんな小っちゃいお子ちゃまだったね!」
ルイーズはガハハと豪快に笑う。
リリアントもまた、不貞腐れつつ嬉しそうな笑顔だった。
空は晴れても街に大量の火山灰は残るのだが、リリアントと一緒に対策を考えてある。
「火山灰自体は肥料としては使えないが、集めて地面に敷けば、保水性の高い土壌が作れるぞ」
「要らないなら私たちが処分しますがどうされますか?」
「ありがとう。そうだねぇ……よし、せっかくだから有効活用させてもらうよ。農業については、まだまだ成長したいからね。……さて、お前らもこっち来な。ロジェとリリアントが行っちまうよ」
「「は、はい……(なんだが?)」」
ルイーズの一言で、グレゴワールたちが連れてこられた。
“霊視の十芒星”はと言うと、しばらくアドームで農作業を手伝うことになっているらしい。
腐った性根を叩き直す、とのことだ。
「こいつらの今後はオイラたちに任せてくれ。真っ当な人間に更生してみせるよ」
「だ、だから、もう痛いほどわかっているのだが?」
ルイーズがバンッ! バンッ! バンッ! と叩くたび、グレゴワールたちは地面に沈んでいく。
彼女たちの元で農作業に従事していれば、詐欺をしようなんて気持ちもなくなるだろう。
「じゃあ、俺たちはそろそろ行くよ。会えて嬉しかった」
「アドームの皆さん、お世話になりました。良くしてくれてありがとうございました」
「お世話になったのはこっちの方さ! またおいでー!」
ルイーズたちに手を振り、俺とリリアントは草原を進む。
彼らもまた、見えなくなるまで手を振ってくれていた。
丘を下ったところでリリアントに話す。
「人の縁とは……不思議なものだな。昔の知り合いに会っただけで心が温かくなるよ」
「ええ、人間が持つ温かい心を感じます。これからも昔の道順を辿りましょう」
「よし、じゃあ行き先は一つだな」
次なる目的地はすぐに決まった。
王国騎士団の城下町、ザベルグだ。
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