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第15話:瘴気の原因

「「ロジェさん、リリアントさん、本当にありがとうございました!」」


 俺とリリアントは、村人たちに改めてお礼を言われていた。

 小一時間もすると、治療は全員完了した。

 みんな自由に動けて、身体のひびも消えている。

 もちろん経過観察は必要だろうが、完治といって差し支えはなかった。


「すみません……我々は力不足で……村を閉鎖して、皆さんを見殺しにするところでした……」


 ベルナールさん一同は、深く頭を下げて謝罪した。

 だが、誰も怒ったり非難したりはしない。

 むしろ、ベルナールさんたちを慰めていた。

 ワコノ村の人たちも、事の重大さは理解しているのだ。

 温かい気持ちで眺めていると、あの少年、そして一組の男女が駆け寄ってきた。


「二人とも、久しぶりだなぁ! せがれ救ってけでほんにどうもぉ!」

「ロジェさんたちに出会えだのは運命であったんだね! こった危機さ駆げづげでけるなんて、お二人はまさすく救世主だよ!」


 男女は俺の手を握っては、ブンブンッ! と振り回す。

 きっと夫婦だ。

 夫は茶色のくるっとした髪の毛をしており、ガタイがとてもいい。

 冒険者と言われてもおかしくないほどだ。

 妻は濃い青色の髪を短く切り、ワシみたいな力強い瞳をしていた。

 なんかどこかで会ったような……。

 このリアクションには覚えがあるぞ。

 癖の強い話し方を聞いていると、20年近く前の記憶が思い出された。


「もしかして……クラウスとアンナか?」

「んだ! 思い出すてけだが!?」

「忘れでまったのがど心配になったど!」


 彼らはクラウスとアンナ。

 リリアントと一緒にワコノ村へ訪れたとき、家に泊めてもらった夫婦だ。

 この二人だけやたらと方言が強いんだよな。

 さすがに少し皺などは増えたが、あの時とまったく変わらない、いや、それ以上の元気が伝わる。


「もちろん覚えているよ! いやぁ、懐かしいな!」

「またお会いできて嬉しいです。お二人とも元気そうで何よりですね」


 俺たちは互いに抱き合う。

 昔の知り合いに会えたらいいなと思っていたが、また再開できるとは。

 人の縁とは不思議なものだ。

 クラウスはひとしきり俺を抱きしめると(すっかり忘れていたが、彼は力が強い。背骨が折れるかと思った)、あの少年を俺の前に出した。


「こいづはわんどのせがれ、クルトだど。こうしゃべったっきゃめぐせぇが、自慢のせがれだ」

「いづが、ロジェさんとリリアントぢゃんにも見へだがったのよ」


少年はクラウスとアンナの子どもだったのか。

 たしかに、言われてみれば二人の面影が見える。

 クルト君はハニカミながら笑っていた。


「いい名前じゃないか。二人に似て利発そうな子どもだな」

「将来は立派な男性になるのがわかりますよ」

「ありがとうございます。お二人が父さんと母さんのお知り合いだったなんて、不思議な導きを感じますね」


 両親と違って、クルト君は標準的な話し方をする。

 大人になると変わるのだろうか。

 みんなで昔話に花を咲かせていたら、ベルナールさんと数人の医術師に肩を叩かれた。


「なぁ、ロジェ殿、リリアント殿。ちょっとよろしいか?」

「ああ、もちろんだ」

「瘴気の原因は……なんだと思う? これだけの規模の瘴気が、いきなり出現したとは考えにくい」


 ベルナールさんは険しい表情で呟く。

 瘴気を消滅させることはできたが、原因は未だにわからない。

 原因を除去しなければ、再度瘴気に襲われる可能性があった。


「その考えには俺も同感だな。またこんなことが繰り返されたら大変だ」

「村人の皆さんにも異常がなかったか聞き取りしてみましょう」


 俺たちが話し合っていると、クラウスとアンナが興奮した様子で教えてくれた。


「二週間くれ前、村がでったらだ魔物さ襲わぃだんだ。そいづは黒ぇもや纏ってあったはんで、そいづが瘴気まぎ散らすたんだど思う」

「逃げるのど追い払うのどで精一杯であったはんで良ぐ見えねがったんだばって、たぶん狼みんた魔物であったど思うだど」


 ベルナールさんたちは訛りの強さに困っていたので、内容を伝える。

 要約すると、二週間くらい前、黒いもやを纏った狼のような魔物に村が襲われたらしい。


「狼魔物はどこに行ったかわかるか?」

「いや、わがね。それ以来、見だごどはねぇんだ」

「“レードウの森”の方角さ逃げだのは見だわ」


 “レードウの森”と聞いて、木々の異様な様子が思い出された。

 黒ずみ、ひび割れ、朽ち果てた木だ。

 リリアントの顔を見ると、彼女は真剣な表情でうなずく。

 何も言われなくても考えていることが伝わってきた。


「狼魔物は“レードウの森”に潜んでいるかもしれない。すぐに討伐へ行こう」

「ええ、行きましょう。その魔物が瘴気を振りまいた可能性がありますね」

「クラウスとアンナは村から出ないよう、みんなに伝えてくれ」

「「わがった。任せでおけ」」


 俺とリリアントは踵を返し、村の入り口へと向かう。

 歩き出すと、すぐベルナールさんが俺を呼び止めた。


「ま、待てよっ。俺たちも連れて行ってくれ。瘴気の正体を突き止めたいんだ。力になるぞ」

「ベルナールさん、心強いお言葉ありがとうございます。ですが……ワコノ村に残ってくれませんか? 村人たちの経過観察もありますし」

「医術師の皆さんが怪我をされたら、それこそ大変です」


 彼らの申し出はありがたいが、一緒に行くわけにはいかない。

 敵の正体も不明な状況では、人数を絞った方がいいだろう。

 ベルナールさんはしばし悩んでいたが、悔しそうな表情をしつつも送り出してくれた。


「では……よろしく頼む」

「ああ、必ず瘴気の正体を突き止めてくるよ。」


 あの森の異変と、瘴気には何かしらの関係があるはずだ。

 俺とリリアントは、“レードウの森”へと駆けだした。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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