表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/38

第12話:村と異変

「リリアントは俺と別れた後、どんな日々を送っていたんだ?」

「はい、まずはカイザラ-ド帝国の冒険者ギルドで研鑽を積みSランク冒険者となりました。その後は帝国の魔導師団の試験を受け、運よく宮廷魔導師にまでなった……という形です」

「ふむ……すげえ」


 パリムスの街を出た後、俺たちは次の目的地――ワコノ村へと向かっていた。

 温かい湯が豊富な村で、疲れた身体を癒してもらった記憶がある。

 転送魔法を使えば一瞬で街から街へと移動できるが、そんな物を旅行とは言わない。

 昔と同じように、徒歩でのんびりと移動することにしていた。

 元々スローライフの予定だしな。

 歩きながら、リリアントの人生を聞いていた。

 やはり、彼女は大変優秀な日々を送ってきたらしい。

 各地を放浪していた俺とは偉い違いだ。


「カイザラード帝国では軍備拡張の背景もあり、複数属性(マルチプル)の魔力を混ぜる魔法論理を開発しました」

「へぇ~、複数の属性をね。一昔前とは考え方がだいぶ違うんだな」

「ええ、以前は魔力の消費量が激しいということで嫌厭されていましたが、より威力の強さを求める傾向に変わりつつあります。“複属魔法”と呼ばれています」


 最近の魔法事情についても、リリアントから話を聞いていた。

 俺が旅していたときと、だいぶ流行というか魔法に対する考え方が変わっているようだ。

 まぁ、そりゃそうか。

 いつまでも変わらない物なんてないからな。

 ついでに、新しい魔法論理を教えてもらってもいた。

 今までの知識と組み合わせて、頭の中で魔法陣を組み立てる。

 なんか……いけそうな気がするぞ。


「火と雷属性の魔力は……こんな具合でいいのかな? <ファイアー・サンダー・ボール>っと」


 虚空に向けて発動させる。

 バチバチと雷がまとわりついた拳大の火球が現れた。

 なるほど、こんな感じか。

 新しい発見をした気分で感心しながら眺めていると、リリアントが呆れた様子で呟いた。


「帝国の宮廷魔導師でも、そのレベルの魔法は習得に数か月は要するのですが……」

「そうなのか? すぐできちゃったな」

「彼らが聞いたら心が折れますよ。まったく、ロジェ師匠の才能には呆れてしまいます」

「もっと教えてくれ、リリアント」


 話していると、魔法に対する探究心というか好奇心がぶり返してきた。

 やっぱり、元々魔法が好きなんだろうな、俺は。

 何となくその場の雰囲気に押されて引退してしまったが、ちょっと早すぎたかもしれん。

 もっと早く賢者を再開すればよかった。

 “複属魔法”をしばらく堪能していると森が見えてきた。

 “レードウの森”だ。

 木の実や果物が豊富で、村人たちの大事な食糧源だった。


「ここを通過するとワコノ村だな。この辺りで一度休憩するか」

「ロジェ師匠、ついでに食事もしますか?」

「いいね」


 道端に生えている木の影に座る。

 いやぁ、結構歩いたな。

 運動不足をしみじみと実感する。


「今、お弁当を出しますね」

「えっ、ベ、弁当?」

「はい。ギルドの厨房を借りて作ったきたんです。<スペース・ストレイジ>」


 座るや否や、リリアントが時空間魔法で空中から色んな物を取り出す。

 さらりとSランクの魔法を使うのは、さすがの(元)宮廷魔導師だ。

 シーツやら食器やらが出され、瞬く間に即席の華やかな食堂が作られてしまった。

 俺一人だったら、めっちゃ地味な絵面になっていただろう。


「リリアントは相変わらず準備がいいなぁ」

「ええ、いつロジェ師匠と食事をすることになるかわかりませんから。日頃からあらゆる装備を整えています」

「な、なるほど……」


 リリアントはさらりと言うが、あまり深くは聞かないことにした。

 そのまま、彼女は時空間からパンを取り出す。


「こちらがギルドで焼いてきたパンです。どうぞ、ロジェ師匠」

「おぉ、おいしそうじゃないか。ありが……! とう、リリアント……」

「特製ロジェパンという名前をつけました」


 突き出されたのは、丸くて平べったいパン。

 至って普通のパンだ。

 普通も普通。

 たぶんチョコレートで俺の顔が描かれている以外は。

 もちろん、慕ってくれるのは嬉しいけど……。


「リ、リリアント……これは? ずいぶんと再現性が高いのだが」

「ここ最近の自信作です。ロジェ師匠の顔は脳裏に焼き付いていますので、目をつぶってでも描けますよ」

「へ、へぇ……」


 リリアントはこれ以上ないほど、自信満々にどどんっ! と胸を張っている。

 無論、師匠たるもの彼女の気持ちをないがしろにすることはできない。

 ロジェパンを持ち、思い切って齧ってみた。

 食べた瞬間、リリアントが凄まじい勢いで迫りくる。


「どうですか、ロジェ師匠! ロジェパンの味は! おいしいですか!?」

「め、めちゃくちゃうまいよ。こんなうまいパンは食べたことがない。リリアントは昔から料理がうまかったからなぁ」

「ありがとうございます! 頑張って作った甲斐がありました! では、私も一口……くぅぅ、ロジェ師匠の味がします!」


 リリアントは満足気にうなずく。

 それはパンの味だと思うが……。

 たしかにロジェパンはうまい。

 しかしだな、おいしいのだけど、共食いしている気分だ。

 当事者からすると。

 何はともあれ、なんかピクニックみたいで普通に楽しい。

 食事もそこそこに、俺たちは森へ入る。


「また知り合いに再会できたらいいのだが……クラウスとアンナは元気かな」

「ああ、懐かしいですねぇ」


 ワコノ村に宿屋はなく、村人の空き部屋に泊まる形式だった。

 当時お世話になったのがクラウス夫妻だ。

 田舎っぽい口調が特徴的な二人は、温かく快活に迎えてくれたな。


「俺たちのこと覚えているだろうか……いや、さすがにもう忘れてるかな」

「みなさん、覚えていると思いますよ。ロジェ師匠の存在感は抜群ですから」


 悪い意味じゃないよな……? と、己の立ち居振る舞いを思い出しながら森を進む。

 木々にすら懐かしさを感じるのだが、よく見ると様子がおかしい。

 葉っぱや幹は黒ずんだり、ひび割れていた。

 街道に沿った木々の異変は一部だけだったが、森の奥へ行くに連れて枯れ木が目立つ。

 ほとんどがひび割れ、朽ち果てていた。

 リリアントもおかしいと気づいたようだ。


「何かの病気でしょうか。このような森は私も初めて見ました」

「ワコノ村が心配になるな。村に急ごう」


 森を抜けると村が見えた。

 だが、俺たちは安堵する間もなく走る。

 これは……かなりまずい。


「急いで結界を展開しろ! これ以上被害を広げるな! 魔道具の配置は終わったのか!?」

「八割方完了しました! ですが、村人たちは本当に見捨てるのですか!?」

「やむを得ん! こんな呪いは私も見たことがない! 犠牲者の数を最小限に抑えることを最優先にしろ!」


 村全体は黒いもやで覆われ、周囲をたくさんの医術師が走り回っていた。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


少しでも面白いと思っていただけたら、ぜひ評価とブックマークをお願いします!

評価は下にある【☆☆☆☆☆】をタップorクリックするだけでできます。

★は最大で5つまで、10ポイントまで応援いただけます!

ブックマークもポチッと押せば超簡単にできます。


どうぞ応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ