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 引き裂かれゆく意識の中で、失われていったものの面影が・・・・・なぜだか鮮明にぽん太の脳裏に浮かび上がった。過ぎ去った夏の日々に忘れ去られた線香花火を、冬の凍える空気の中で燃やすように、儚く消えゆくものの火花がぽん太の心に散る。火花の残像が、オレンジライトに照らされたトンネル内の空間を微かに切り裂いたように見えた。切り傷のような空間の隙間に、ぽん太は中学校のグランドを見る。ぽん太は、そこで、生まれて初めて手にした宝物を失った自分の姿を見た。


 「もう一丁、お願いします」

 グランドに響く叫び声。監督は、その声を聞いて、もう一本、強いノックを打った。でも、それはぽん太の掛け声じゃない。自分より下手だった奴等がノックを受けている声だった。グランドに力強く叩きつけられた白球が、素早く三遊間を抜けていく。

 ぽん太は、内野の守備練習の後ろに陣取り、ぼーっと突っ立ちながら、たまに鼻くそをほじりながら、内野を抜けてくるボールの球拾いを外野でやっていた。外野のレギュラー・一軍連中は、バッティング練習に熱を入れている。ぽん太は、グローブで顔を隠しながらあくびをした。ぽん太と一緒に球拾いするのは、野球初心者の部員数名。

 「下手糞・・・・・」

 ぽん太は、三遊間を抜けてきたボールをグラブですくい上げ、下投げで内野に返す。体にボールを当てて、前に落とすこともできない下手糞な三塁手を外野から見て、思わずそう呟いてしまった。

 「もう一丁、お願いします」

 一体・・・いつまでもう一丁、お願いしてんだよ。とっとと取れ、下手糞・・・・・とぽん太は声に出さない声で呟く。小学生のころ、自分を馬鹿にした名門チームの下手糞達が、自分のいるべきサードで吠えている。レギュラーの控えの控えとして練習するそいつの後姿をぽん太は外野から見ることしかできない。レギュラー以外の全ての控えは、自分より下手だとぽん太は思っていた。レギュラー以外は、相手じゃない。どんなノックでも、どんな内野ゴロでも裁く自信がぽん太にはあった。でも、・・・・・ボールを投げることができなくなった肘じゃどうしようもない。ボールが投げられないような内野手は、どれだけゴロを裁けても、チームには必要がない。ぽん太は、全てから除外された。練習用のユニフォームは、真っ白。横っ飛びで三塁線ギリギリの強襲打を裁くこともない。ぽん太は、転がるボールを拾っては、下投げで練習が行われている場所に返していくだけの野球少年・・・・英語で言うならボールボーイなのか・・・・。

そんなぽん太の姿を、たんぽぽはいつもグランドの片隅から見ていた。ぽん太は、たんぽぽの視線に気づくことはなく、ただ自分を哀れんだ。哀れんでいれば、やることもない長――――い練習中、ぼーっと考えることがある点で、時間が早く過ぎる。だから、ぽん太は暇つぶしに自分を哀れに哀れんだ。


 哀れみ・・・・・・。

 野球を始めた頃からチームの中心だったぽん太は、グランドの上で疎外感を感じたことなんて唯の一度だってなかった。誰もが、グランドの上でぽん太を見ていた。そして、誰もが、ここぞという時にぽん太に祈った・・・・・なんとかしてくれ!と。

 ぽん太は、求められたリーダーシップを全て発揮し、チームメイトを鼓舞しながら幼い野球人生を送ってきた。でも、肘を壊してから・・・・・誰もぽん太を見ず、誰もぽん太を頼りにしなくなる。感じたことのない疎外感が少しずつ敗北感へと変色していく。自分より下手な奴等が野球をする現実を、十三歳のぽん太は扱いきれなかった。十三歳のぽん太にはグランドの隅から見る、自分より下手な奴等が練習をしている景色が真実だとは信じ切れなかった。転がってきたボールを拾って、ぽん太は軽く上から投げてみた。右肘の神経がみじん切りにされるような痛みが右腕全体に一瞬にして広がり、細切れになった痛みが体中にじわーーーーっと広がっていく。

 大好きな野球ができない自分・・・・・できないことで初めて孤独と向き合う自分。感じたことのない疎外感と心に深く刻み込まれる敗北感。美しき宝物が粉々に破壊されていく音と痛みに叫ぶ右肘の悲鳴・・・・。グランドの土の上で、十三歳の少年の幼い心が腐っていく。好きだった分だけ、憎しみも強くなる。冷めていく心の情熱・・・・・、それを失った先に何があるのかなんて、思春期前の男の子にわかる訳もない。腐ってゆく生卵が、自己嫌悪にゆであげられながら、時間の経過とともに黄身も白身もどろどろに溶けゆくゆで卵になっていく。アンモニア臭が腐って溶けるゆで卵から強烈に臭う。

 哀れみ・・・・。

 そんなことを、ぽん太は感じながら、ぼーーっと球拾いを続けた。



 「くだらない・・・・」

 ぽん太は、未来と過去の間で引き裂かれていく意識の過去の部分を引き裂き、切った。昔を思い出してしまう自分が嫌になる。乱された心の波長を沈め、ぽん太は冷静にトンネルの先を見つめた。

 「野球を失ったくらいで、俺は全てを失ったのか・・・・違うだろう・・・・」

 ぽん太は苛立ちながら、トンネルの壁を靴底で蹴った。硬い壁の衝撃が骨の髄に跳ね返ってくる。

 「ちきしょう・・・・」

 ぽん太は、切り裂いた筈の過去を思い出さずにはいられない。記憶の中で、たんぽぽがぽん太の右手を握りながら、震えている。幼く細いたんぽぽの腕が泣いている。たんぽぽの掌には純粋で透明な涙のような汗が滲む。あの頃のたんぽぽの震えが、今、ぽん太の心の中で蘇る。



 春に咲き誇ることを夢見るたんぽぽの草が、冬の寒さの中、震えながら、枯れゆく雑草を抱きしめる。枯れ草は、乾燥しきった土から水分を得られず、脱水症状を起こしたまま昏睡状態寸前。冷たい北風が、インフルエンザウィルスとともに吹き荒れる。たんぽぽは、夢を持っていた。目指すものがある・・・・だから、生きていける。雑草には夢がなかった・・・・だって、花を咲かすことができないんだから・・・・。でも、自分が咲けないことに気づいたのは、夏が終わってからだった・・・・。幼かったから、どんな草も花を咲かせることができるんだと信じていた。雑草は、絶望の秋を越え・・・・瀕死の冬を迎えていた。そんな雑草を、たんぽぽの草は抱きしめる。そして、たんぽぽは、震えている。

 「死なないで・・・・。あなたはここで枯れる草じゃないの。春になって艶やかな緑をその身に纏い、誇らしく大地に根付く草なの・・・・・。あなたは、どんなどんなキレイな花を咲かせる植物達よりも堂々として自信に満ち溢れた力強い美しさを持った草なんだから・・・・・」

たんぽぽは、昏睡状態寸前の枯れゆく草に必死に語りかける。枯れゆく草は、冬の寒さと厳しさに飲み込まれ、春を夢見る希望を体温と共に失っていく。鮮やかに輝いた夏の色素は剥げ落ち、茶色く濁った衰弱の色合いを、枯れ草は、その体にじんましんのように浮き上がらせていた。

「ねえ、お願い・・・・諦めないで。あなたのことが好きなの・・・」

 たんぽぽは、夏の青空の下、大地に力強く根を張り、艶やかに輝きながら、青々としたみずみずしい夢を見続ける姿が好きだった。空に向かって背筋を伸ばし、真っ直ぐと前を見据える雑草の美しさと男らしさ・・・・そんな雑草が夢を語る横顔の凛々しさを、たんぽぽはその胸を絞めつけられながら、切なく甘い苦汁をその体中で感じながら見つめていた。

 永遠に続く夏を信じていた幼い雑草・・・・夏の終わりに知った自分は、花じゃなくて、唯の草だったという常識・・・・幼い心は、脆かった。夏が終われば、冬が来るのが現実。夢が時の流れの中で消えていく様をみて、雑草は失われゆくものを信じた自分の幼き心を恨んだ。たんぽぽは、色彩を失っていく雑草に必死で励ます。

 「もう一度、春が来るから。そして、必ず夏が来る。季節は、巡るの。だから枯れないで。あなたはもう一度・・・・いや、何度でも・・・大地に根を張る自分を誇れるんだから。たとえ美しい花が咲かないとしても、雑草の持つ力強い美しさにかなう花なんかないんだから。あなたは、ただこの大地に根づくだけで、真っ直ぐ前を見据えるだけで美しい。だから、負けないで。冬を乗越えて・・・・もう一度、夏空の下で輝いて・・・・」

 たんぽぽは、巡りゆく季節を待つ意味を何度も何度も枯れ草に語り続けた。しかし、枯れ草は、再び来る春を信じる忍耐力を持たなかった。たった一度の冬すら乗り切ることができない自分の脆さを嘆く。負けていく・・・・。何もかもに負けていく。そして、枯れてゆく。


 たんぽぽは、自らの弱さを知った雑草の根が凍りながら腐りはじめていることを知った。震えながら、たんぽぽは昏睡状態寸前の枯れ草の手を握り締める。たんぽぽは、愛した雑草を失うことを恐れた。彼を一人で死なせるくらいなら・・・・自分も一緒に死にたいと思った。たんぽぽは、枯れ草ともうすぐ降り始めるであろう冬の雪に埋もれ、凍え死ぬことを心に決めた。

 「あなたと見た夏の夢が一番綺麗だったから・・・・」

 そう小さく呟き、たんぽぽは次の春を迎えないことを冬空の下で、自分自身に誓い、全てを諦めた。しかし、枯れゆく草は、昏睡寸前の朦朧とした状態でたんぽぽを拒む。枯れゆく自分を愛し続け、自らの生命を諦めようとするたんぽぽの存在が、雑草には重たかった。このまま、一人で、誰を道連れにすることもなく、枯れて消えてしまいたかった。意味もなく消えてしまいたい。でも、そこに意味を見出そうとするたんぽぽの気持ちが雑草には苦しかった。無意味に、ただ一人で、誰にも迷惑を掛けず、初めからこの世に存在しなかったかのように、消えてしまいたいのに・・・・、たんぽぽの夢見る春が雑草の心に絡みつく。彼女は、自分とともに枯れようとする。それが邪魔だった。誰かを道連れにすることがわかっているのなら・・・・枯れたくても枯れられない。消えたくても、消えられない。死にたくても死ねない。新たな春に美しく咲き誇ることのできる花をこの冬の中で枯らせてしまうのは、たった一人で感じればいい筈の敗北感に他人を巻き込んだ罪悪感がついてくる。他人・・・・?他人だ。自分以外の誰かを巻き込むのはあまりに重たすぎる。そんな風に誰かに支えられて生き続けるのなんて苦しいだけ。想われること自体が罪。一人で生きていけなくなった時が死ぬ時・・・・・。誰かの無駄で勝手な希望や夢や期待を背負って生きていくのは、何もかもが苦しくなるだけ。苦しむために生きている訳じゃない。

 たんぽぽは、次の春も生きなきゃいけない。この冬に枯れる花じゃない。でも、彼女は、次の春を雑草とともに迎えることを望んでいる。それで、雑草は昏睡状態も寸前まで・・・・消えきれない。自分を枯れさせてくれない花は・・・・・邪魔なだけ。


 雑草は、昏睡寸前の状態から微かに目を覚まし、凍えながら震えながら自分の手を握るたんぽぽの目を見て言った。

 「この手を離してくれないか。春を夢見る夢を見るから・・・・・。それが、君が望んでいたことだよね?春を夢見る。でも、君の側にいるとなんだか甘えてしまって・・・・強くなれないから。もう少しタフに生きれるように一人で生きて生きたいんだ・・・・、きっと今より少しタフになれれば春まで頑張れる。お願い・・・・この手を離して」

 雑草は、衰弱のじんましんをその体いっぱいに浮かび上がらせながら、切れ切れの声で言った。たんぽぽは、雑草の語る言葉を信じなかった。夢を語る目が死んでいる。でも、その死んだ目で語る夢ですら信じたかった・・・・。夢を見ていた頃の彼がもう一度蘇って、夏の空の下で鮮やかな色をその体に纏い、そよ風に揺れながらこの大地に根づくのなら・・・・・・この手を離さなければならないと、たんぽぽは思った。

 「もう一度・・・夢を見るのね?」

 たんぽぽは、雑草の手を離し、涙を拭きながらそう言った。

 「ああ、約束するよ」と雑草は疲れた顔で、そうでっちあげた。

 たんぽぽは、微かに笑った。彼の重荷になっていた自分に気づいた。たんぽぽは、涙を拭ききり、そして「さようなら・・・・元気でね」と雑草に別れを告げた。

 雑草は、笑うことすらできずに、「さようなら」とだけ言った。


 冬の雪が降り始めた・・・・。それはとても冷たい雪だった。


 雑草は、消えゆく自由を手に入れた。解放感が衰弱する体に駆け巡った。冷たい雪に埋もれ、凍死するようにして枯れきる。これが、望んでいたもの。雑草は、自分の命を諦め、この世界に存在する全てを諦め・・・・死を待った。でも、枯れ切れない。冷たい大地に張った根の先に土の温かみが残る。この温もりを思い出というのだろうか・・・・・?その温かみが枯れ草の命を繋ぎとめる。どれだけ死を望んでも、思い出がその望みを叶えさせてはくれない。


 雑草は、消えきれない自分に苛立つ。思い出があまりに美しい。こんな筈じゃなかったのに・・・・・。

 思い出が、自分を生かし、思い出以外には何もない自分を雑草は知った。

 失ったものの大きさに気づく。

 消えたいのに、消えきれない・・・・そして、どこにも辿り着けない。

 涙だけが流れ続ける・・・・・弱くて、浅はかで愚かな自分への腹立たしさとともに・・・・・。


 雪は降り続け、積もり、そして雑草は埋もれた。



 ぽん太は、トンネルを前に向かって歩いていく。歩く程に思い出す。足音が、孤独で果ての見えないトンネルによく響く。終わりのないトンネルの景色は、どれだけ歩いても変わらない。前に進んでいるのか、後に戻っているのかも時々わからなくなる。気持ちは萎え続けていく。次第に、自分の足音すら聞こえなくなってきて、鼓膜に針を刺すような沈黙が気圧を高めるようにしてぽん太の周りにまとわりついた。

 出口の見えないトンネルは、先にある暗闇の穴の大きさを変えない。ぽん太は、歩き続け、そして少しずつ自分の存在が削ぎ落とされていくのを感じた。言葉の洪水が心の中から引いていく。トンネルに足を踏み入れ、入口も出口も見失った時、ぽん太は、混乱し、思考は激しく波を打ち、言葉の洪水が心の中に流れ込み、何もかもをその言葉の中に飲み込もうとしたが・・・・・今、その言葉の洪水は、静かに引いていく・・・・歩く程に。体に付着していた脂肪も徐々に削ぎ落とされ、ぽん太の存在は痩せこけていく・・・・・歩く程に。空っぽになっていく心の中に深い沈黙が広がっていく・・・・歩く程に。そして、心の中の沈黙が、トンネル内に反響していった。

 トンネルは、その長い管の内側の壁模様を毛細血管のように浮き立たせる。トンネルが生き物のようにも思える。ひたひたひた・・・・と、実は、その管を細めてきて、その喉に微生物を丸飲みしようとしているのかもしれない。トンネルの壁から染み出す冷気は、唾液のような胃液のようなそんなぬめりを思わせる。

 ぽん太の鼓膜には、沈黙の針が突き刺さっている。混沌とした気圧が耳周りで理性を失いながら、ぽん太は耳抜きができないまま、穴の開いた鼓膜を握りつぶされるような感覚に襲われる。黄色いグレープフルーツを真っ二つに切り、絞り機にかけ、ジュースを絞り出すように・・・・・鼓膜は絞られ、血や膿のジュースがぽん太の耳の穴から零れ落ち、頬を伝っていくような鈍い感覚が顔中に広がった。

 それでも、ぽん太は、真空状態の沈黙の中を歩いていった。

 このトンネルを抜けた先に月はあるのだろうか・・・・・、と自問し、まだ月に行こうなんて幻覚にすがっているのか・・・・・と自問を仕返す。そのくり返しが、ぽん太を歩かせる。その二つの自分への問いかけ以外、このトンネルの中では全て削ぎ落とされていった。


 ぽん太は、無駄なものをトンネルに食わせながら、歩き続けた。体脂肪率は、減り続ける。しかし、歩き続けたところで、そこには果てがない・・・・。最後には、最も無駄であろう自分の命が食われるんだと思った。

 何時間?何日?どれくらいの時間を歩き続けたのかはわからない。このトンネルの中には、時間という観念が完全に欠落している。朝もなければ、夜もない。オレンジ色のライトで照らされた空間が延々とそこにあるだけ。景色は変わらず、季節もない。

 ぽん太は、二十四時間という観念の欠落した場所で・・・・・感覚的に三日三晩ほど歩き続けた。しかし、それが本当に三日三晩か知る術もなければ・・・・二十四時間という時間の単位に、自ら歩いた距離を当てはめたところで、何の意味もないことに気づく。

 昼も夜もない世界でいつ眠ればいいのかもわからずに、ぽん太は眠ることができずに、ただただ歩き続けた。歩き続ければ、足の裏が裂けそうになり、アキレス腱がつってくる。肉体的な限界が、じわりじわりと押し寄せてくる。トンネルに命を飲み込まれる恐怖に一瞬、身震いがした。


 左足の裏の筋肉繊維が三本、一気にはじけ飛ぶようにして切れる音がした。ぽん太は、その痛みに耐え切れずに、立ち止まった。左足にこれ以上体重を掛けるとぽん太という存在そのものが粉々に壊れてしまいそうな痛みがそこにはあった。ぽん太は、アスファルトの上に崩れ落ちる。疲れ果てた体から大粒の汗が染み出てきて、その汗の雫がコンクリート道路の上に流れ、小さな川を作った。

 「食われる・・・・」

 ぽん太は、道路の上に大の字で寝転がりながら、トンネルの天井を見つめ、そう呟いた。ぽん太は、巨大な蛇に丸飲みされたタヌキの心境だった。ぽん太の瞳に流れ込んでくる自分の汗が、まるで蛇の胃液のように見える。

 疲労という鎖で体中を縛り上げられ、一ミリ動けば肉という肉に含まれるあらゆる全ての筋肉繊維が張り裂けてしまいそうな状況で・・・・ぽん太は、成す術なく、気絶するように、食われるように、眠りに落ちた。


 深い眠りに落ちていく・・・・その深い眠りの中で見る夢・・・・そこにもトンネルの景色が広がっていた。ぽん太は、寝言で絶叫する。抜けられない・・・このトンネルから逃げられない・・・たとえ夢の中であったとしても・・・・このトンネルに捕らわれたまま。切れそうな程の高音が、現実のトンネル内に響き渡った。

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