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今日は9月1日

作者: 緋文章

 俺はタカフミ、健全な中学2年男子だ。


「ふぁーあ、だっるい」


 眠い目を擦りながら朝食の準備を済ませ、ラジオアプリを起動する。

 ラジオニュースを聞きながら朝食を食べるのが、いつからか日課になっていた。


『今日は9月1日、木曜日。学生の皆さんにとっては新学期のスタートですね―――』


 そう、今日は9月1日、新学期開始の日だ。

 夏休みの宿題は昨日、幼馴染のアケミに写させてもらって、なんとか片づけることができた。


 アケミは毎年なんだかんだ言って最後には宿題を写させてくれる。

 あいつ、きっと俺のことが好きに違いない。褒美として、今日は俺が一緒に登校してやろう。




 アケミの家についた俺は『ピーンポーン!』とチャイムを鳴らす。

 出てきたのはパジャマ姿のアケミだった。


「はーい……って、なんだタっくんか。どうしたの、こんな朝早くに……あっ! わかった、宿題やってないから写させろって言うんでしょ!」

「何言ってんだアケミ、宿題は昨日写させてもらっただろ。それより、なんでまだパジャマなんだよ。早くしないと学校遅刻するぞ」


 怪訝そうな顔をするアケミ。


「いや、学校は明日からだから。タっくん、寝ぼけてるの?」

「え?」


 スマホで日付を確認すると、8月31日になっていた。

 なんだ、1日間違えてたのか。昨日、急いで宿題やる必要なかったじゃん。

 でも、ラジオでは9月1日って言ってたような……聞き間違いか?


「それで、宿題は終わってるの?」

「だから、それは昨日お前に写させてもらっただろ」

「いや、写させてあげてないし、写させてあげる気もないから」


 ハァーッ、と深くオレはため息をついた。

 なぜ昨日の今日の出来事をこんなにきれいさっぱり忘れられるのか。


「ま、どうでもいいよ。なんか1日、日付を勘違いしてたっぽい。別に他に用事もないし、じゃあな」

「なんなのよもう」


 急に1日休みになったところで特にすることもなし、この日は家でゴロゴロして過ごした。




 翌朝、朝食の準備を済ませてラジオアプリを起動する。


『今日は9月1日、木曜日。学生の皆さんにとっては新学期のスタートですね―――』


 なんか昨日も同じ内容を聞いたような?


「うーん、気のせいか」


 昨日は変な感じになっちゃったし、今日もアケミを誘って学校に行こう。




 朝食を済ませた俺はアケミの家に行った。

 『ピーンポーン!』とチャイムを鳴らすと、アケミはまたパジャマ姿で出てきた。


「はーい……って、なんだタっくんか。どうしたの、こんな朝早くに……あっ! わかった、宿題やってないから写させろって言うんでしょ!」

「何言ってんだアケミ、宿題は一昨日写させてもらっただろ。それより、なんでまだパジャマなんだよ。早くしないと学校遅刻するぞ」


 怪訝そうな顔をするアケミ。


「いや、学校は明日からだから。タっくん、寝ぼけてるの?」

「え?」


 スマホで日付を確認すると、8月31日になっていた。

 なんだ、また1日間違えてたのか。


「……って、そんなわけあるか!?」

「ちょっ……急にどうしたの、タっくん?」

「アケミ、お前覚えてないか? 昨日も同じようなやり取りしただろ?」

「昨日は会ってないけど……?」

「そんな、まさか……!」


 俺は急いで鞄からノートを取り出した。


「やっぱりだ、アケミに写させてもらった箇所が全部消えてる。まさか、俺は8月31日を何度も繰り返してるっていうのか?」




 ―――あれから何回、8月31日が繰り返されたのだろう。

 俺はこのループから抜け出せずにいた。


『今日は9月1日、木曜日。学生の皆さんにとっては新学期のスタートですね―――』


 ラジオだけが今日も9月1日を迎えている。


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