7-4・昼下がりの海岸
林の中に消えるキリルを海辺で遠目に見届けたネロは考え込む。
(さて、ミルティアデス様への報告が先か、キリル君のフォローが先か。どっちだろう? 自分で何かを決める事って難しいなぁ)
ため息をついて彼はテオの死骸の元へと移動する。キリルの真似をして耳に端切れを詰めている。さしあたって彼の死因を確認する事は大事に思えたのだが、先客がいた。
それは黒い布を頭から被った男で、死骸の足を引き吊りながらよく晴れた日差しの中を歩く。ズリズリと海岸線に血の跡が残されていく。
相手が男であると分かったのはテオのような大人の男を片手で持って引きずって歩く腕力からだったが、果たして当たっていた。
男はふいに立ち止まった。
ネロは身を伏せることで、人影を消したが、男がじっとこちらを見ている。
「……」
(んー、バレちゃってるか)
立ち上がったネロにも動じず、男は死体を手にしたままネロの方に歩き始める。
「あのぉ、申し訳ないんだケド、僕に近寄らないで貰えます? 僕、人付き合い苦手でー」
明るく言うネロは次の瞬間、視界がブレて飛びすさる。
地面がどこにあるのか分からない浮遊感。咄嗟に感覚を頼りに、立つ。
頭がクラクラする。
「な……に?」
背後から影を感じて、ネロは振り返る。そこには死体を振りかぶった男がいる。
咄嗟にネロは身を捩って、いつもよりずっと広く間合いを取って地面に手をつく。
死体が地面に激突し、鈍い音を立てた。
(うわぁ、並の腕力じゃない……)
ネロは頭を抱え、ため息をついた。
「笑ってる場合じゃないかも……」
地面は相変わらずぐにゃぐにゃの感覚で、平衡感覚も狂わされている。
ふと鼻から滴り落ちてくる水が唇に触れ、舌でペロリと舐める。臭いからすでに分かってはいたが、血の味が口の中に広がり、彼は笑った。
男がまた死体を振りかぶる。感覚の死んでいるネロは視覚を頼りに大地を走り、完全なる敵前逃亡を図る。
彼には距離が分かっていた。血の位置が安全圏をネロに教えてくれている。ネロはたびたび転がるも、そのまま前転し、なんとかテオの血の筋を頼りに、始まった場所へと移動する。
血の出発点へとついたネロは徐々に地面の揺れや体の感覚が戻ってくるのを感じ、ニッコリ笑った。
「やっぱりネ。ごめん、僕はこれでサヨナラさせて貰うヨ」
そのままネロはテルマ内部へと去っていった。残された男はまた死体を引き吊り、元の道にもどり、林へと向かう。
長閑な昼の三時、海岸線の横に一本の赤い線が引かれていた。
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【次話公開 → 本日 PM 12:30 予告】
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