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5-5・伝説の世界


 部屋に入り、しばらくするとミルティアデスがやってきた。

 彼は席に座り、足を組むと捕虜同然のゼノをじっくりと見つめた。


「そっくりだな」

「僕らは双子だからね。ニアが苦しむと僕にも分かるんだ、……昔からね」

「お兄ちゃん……」


 暗い目をした兄にニアは不安がよぎる。兄がこういう顔をする時は大概(たいがい)よくない傾向なのだ。だがすぐに彼は顔をあげ、笑った。


「とりあえず自己紹介させて貰うよ。僕は次期タラッサ国王のゼノ。これは陸から海への宣戦布告? だとしたら水底(みなそこ)に沈めるよ?」


 口調は(ほが)らかながら、内容は物騒(ぶっそう)だ。


「いいや、俺は情報が欲しくて、持っていそうな奴を捜しただけだ」

「情報? 海底王国の僕に陸の事なんて分かるわけないじゃないか」


 目を丸くして言うゼノにミルティアデスは肩を竦める。


「単刀直入に行こう。俺はニアのことは面白いから気に入ってる。もっとも手足がなくなったって、生きていれば充分とも言える」

「……っ」


 息を呑んだニアに、ミルティアデスは微笑み掛ける。


「情報が欲しいだけのこと。ここからは本気だ。必要なことを答えて貰う。あの巨人について、だ。アレは何だ?」


 ゼノはニアを見つめ、口元に笑みを浮かべる。


「あれは古き神だよ。海神や陸神、太陽神よりもずっと昔に産まれた神の一部さ」


 ピンと来ない顔のミルティアデスたちを見たゼノはため息を付く。


「妹を傷物(きずもの)にされたくないから、さっさと済ますよ?」

「お兄ちゃん……」


 兄の兄たるを見て、頬が(ゆる)む。分かりにくいながら、兄の情は確かに存在しているのだと気づく。


「まず英雄バシレイオスは一番最後にできた神だろ? 分かりやすく言うと、第三世代の神にあたるんだ。陸神や太陽神は第二世代の神で本来、現行(げんこう)の神なんだ。今でも同じ第二世代の知恵の神や運命の神とかは信仰されてるし、数も多いよな?」


 ぐるりと視線をやり、ゼノは続ける。


「大きな神の戦は三つある。一つは、陸神と海神の領土争い。二つ目は陸神や太陽神たちが起こした第一世代の古き神の追放戦争。そして三つ目が、英雄バシレイオスが太陽神を打倒した神落戦争さ。ところで英雄バシレイオスの起こした神落戦争、どれぐらい知ってるの?」


 ミルティアデスは「おとぎ話の範疇(はんちゅう)だ」と答え、追加で説明する。


「太陽神が自分を(あお)ぎ祈らない人間にキレて、人間を掃討(そうとう)しようとした迷惑話ってくらいだが?」

「テルマの王は簡潔だね。ま、その時、バシレイオスが太陽神を倒すのに協力したのがアレだよ」

「ん? 協力? バシレイオスは一人で倒したんじゃないのか?」


 ゼノが大きく頷く。


「アレは太陽神たちがバラバラにして封印した古き神で、秩序と混沌の子である灰色の神(パイオン)の一部なんだ」

「初めて聞く」


 それはミルティアデスだけではなく、ニアの気持ちでもあった。


「だろうね。で、バシレイオスは敵対する現行の神をたくさん殺した。神の血と(なげ)きは、永久に消えない傷としてその地に残り『嘆きの地』となった。バシレイオスはその呪われた地から闇の奥底の奈落(ならく)に沈められていた古き神を呼び出して、一緒に戦って勝利を飾ったのさ」

「……し、知らなかった。バシレイオス様に協力者がいたなんて……」

「だろうね。神殿でもてっぺんだけじゃない? こんな話したら、信者減るからね」


 混乱するニアをゼノは兄らしく(なぐさ)める。


「つまり、君たちの見たアレは、バラバラにされた古き神の一部が主体形成した姿さ。大昔、バシレイオスの味方をした時の姿だよ」


 沈黙が落ちる。

 キリルとミルティアデスはどちらも神に対する造詣(ぞうけい)が浅く不信心だ。それ故、反応はとても薄かった。

 やがて、キリルが口を開いた。


「話を総合すると、奴はその嘆きの地を通ってどこにでも出現できるというわけか?」


 ゼノは笑った。


「話、聞いてた? 体はバラバラにされたんだ。両手、両足、胴体、三つの心臓、一つの目。つまり全部で九体。でもバシレイオスが作った嘆きの地は五つ。出ているのは両手両足と一つの目だけだよ」

「何だとっ!」

「そうそう、なぜバシレイオスが嘆きの地を九つ作らなかったか分かるかい?」

「何でなの?」


 疑問をそのまま口にしたニアに、兄は肩を竦めた。


「ニアはおバカさんだなぁ。完全復活してしまうからさ、この地上でね。バシレイオスだってバカじゃない。神々が寄ってたかって、たった一人の古き神を封印しかできなかったんだから、自分の手には負えないことくらい分かってたのさ」

「そんな……っっ」


 ニアは兄の言葉を信じたくなかった。信じればバシレイオスの巫女である自分さえも否定してしまいそうで、それが怖かった。


「だからね、バシレイオスは上手いこと利用して、またそこに縛り付けたのさ。ちゃーんと活動停止にしてるって話だったんだよ? でも最近あーやって暴れるから困るんだよね。はい、おしまい」


 ニッコリ笑うゼノ。

 ミルティアデスは頷く。


「では次の質問だ。あれを殺すにはどうすればいい?」


 ニアもゼノも口を開けて固まった。


読んでくださってありがとうございます。

【次話公開 → 本日 17:40 予定】

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